<ここまでの話>
「<第1話> から <第8話>までのリンク」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/63984e00a496cc4ceab13c1caab8e05c
「<第9話>捜索・・」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/b0d54d30299ac0b2dd3cbc2f50ff1da2
「<第10話>地獄耳?」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/fce28cf5b960fc78bf7e731c7ea0714b
「<第11話>連邦軍の内情・・」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/4ceb149cd5bc66d3b05140f580d79a39
「<第12話>艦隊戦!」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/5eb7d34311a4712d15ee730d4f493f8c
・・・
<補講>
「ガンダム外伝を楽しむための補講(1)ラグランジュポイント」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/5568bd9e6a727ee790bc1ebec0e0042c
「ガンダム外伝を楽しむための補講(2)MS運用艦グリフィン」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/6db85f7b1fcf391b3f6bfc42d339cbc1
「ガンダム外伝を楽しむための補講(3)MS小隊の構成と運用」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/f1a12da2cbb09456acce246711ca2997
・・・・・
「敵ビーム来ます、回避できません!!!」
そのとき、透き通った、高音の通る声が艦内に響いた!
「チョイ上げぇ~!」
声の主は艦長だ!
奇跡か・・ それとも我艦の艦長はニュータイプか?
今まで、聞いたことが無いような大きな音が艦内に響き渡り、その音と共に
寸是の所で艇下部をかすめるように、敵のビームが通り過ぎて行った・・
いや・・ 少しかすめたのかもしれない・・
そういえばサミー曹長が言っていたな・・対ビームコーティングを施していると・・
かすったぐらいでは、問題が無い! 直撃を避ければ良いのだ・・
というか、最後の最後にまで、あきらめず冷静に対処するグリフィンクルー達の
錬度とモチベーションの高さを再認識していた・・
「ふぅ・・・」 アドレナリンが沸騰している!
「ビームの発射先を索敵しろ!」
と叫びながら・・ 感じていた不安が爆発した・・
敵は前面のパプア級補給艦を囮にし、サーマルセンサーが効かない太陽の方向から
グリフィンに襲い掛かってきた・・ かなりの策士だし、手慣れでもある・・
自分だったらどうする? 考えろワサビィ!! 次の敵の手段は?
その間にも、艦は大きく回頭し、ビーム攻撃が発しられた方向に艦首を向ける。
その時、マスミン特務大尉がつぶやいた・・
「私だったらぁ・・ モビルスーツで丸腰の艦を落とす・・ か・・」
そうか・・ 対艦攻撃用のモビルスーツが・・ ザクが来る! ヤバイ! 丸腰だ!
「マスミン大尉! それ正解っ!」コントロールデッキが凍りついた!
ヒロ中尉達を呼び戻すしかないか・・
いや・・ 呼び戻したら、敵のMSが一緒について来る、グリフィンの周りが戦場に
なる事は避けるほうが良い・・
じゃぁ・・ 1機か2機だけ、呼び戻すか・・ いや・・ 敵のMSも少なくとも4機・・
多ければ6機出ている・・ 戦力比を下げる事は出来ない・・ 他の方法は・・
「そうだ・・!」私はマイクに怒鳴った。
「サミー曹長! 整備班、サミー曹長! 至急連絡口に!!」
「・・・ 大尉!・・ なんですか?・・」
「オーリン曹長のジムは動くか?」
「・・・ まだです・・戦闘に入ったので・・作業中でした、
でも、パネルを開けて、焼けた基盤は外しました・・
また、新しい基盤だとパラメータなど、初期値データの入力や調整が
必要なので、クマ軍曹機の基盤を使って、オーリン曹長機を先に修理しようって・・
既にクマ軍曹機の基盤は外して用意していますので、はめればOKですが・・
カーゴハッチが損傷を受けて、カーゴデッキが真空状態なので・・ 」
「解った・・ クマ軍曹機の基盤か・・ さすがだな! ありがとう!
とにかく、優先事項だ! 緊急で修理をして欲しい!
私もそちらに向かう! 頼んだぞ!」
「・・・ ひょっとしたら・・ また新手の敵ですか? 了解です!大尉!!」
私は艦長を振り返った・・
「艦長・・ マスミン大尉の言われるように、多分敵の対艦用のMSが来ます・・
カーゴデッキのジムを何とか修理し迎撃準備をします!」
「修理が間に合うの? 状況は理解したわ、大尉・・お願いね!・・」
私は、カーゴデッキに急いだ・・ ヒロ中尉達も心配だが、今は艦を守る事!
できることの最善を尽くさないといけない!
ノーマルスーツ(パイロット用宇宙服)の気密を確認し、気密ブロックを抜け
カーゴデッキに入った・・ 中では整備班のメンバーが作業に取り掛かってくれている
私はサミー曹長を探し、ヘルメットをくっつけた、
真空状態での震動を利用した会話方式だ、
「どうだ? どれぐらいかかる?」
「あと15分ってところですか・・」
「急いでくれ・・ 」
突然ヘルメット内のスピーカーが怒鳴る!
「・・・ 大尉! マスミン大尉の予想が当たりました!
敵モビルスーツです! 来ます!」
「何機だ!」
「・・・ 1機です! 機種はスカート付きと特定!」
やはり・・ 1機か・・ ジオンの考えが読めた!
機動性の高い、戦闘艦(多分ムサイ型だろう)でこちらの死角に入り
隙を見て対艦艇攻撃用のモビルスーツで攻撃をかける・・
囮のパプア補給艦も守らないといけないので、パプア補給艦側にモビルスーツは
対艦艇攻撃用の1機を残し、全てを回すはず・・
予想だが、こちらはこの1機を撃退すれば良いはずだ!
そして敵のモビルスーツはジャイアントバズーカ装備のMS-09リックドムだ・・
高機動だし、バズーカは対艦攻撃向けの装備でもある・・
ザクだったら、ザクマシンガンなら・・ 少しは持ちこたえる事もできるが、
相手がリックドムとなると・・ バズーカを喰らうわけには行かない!
「了解だ・・ 後、何分で遭遇する?」
「・・・ 3分です!」
「解った・・ 少佐を出してくれ!」
「・・・ ワサビィ大尉・・ クロヒッツだ!・・・ 何か?」
「副長・・15分、耐えてください、上部のガトリングで上部側に弾幕を
お願いします。
また、艦長に伝えてください・・ 敵のMSが来たということは、敵艦からの
ビーム攻撃は多分ありません・・
回避行動は艦長のお好きなように行ってくださいと・・」
「・・・ 解ったわ・・ でも・・ 艦の下部の防御はどうするの?」
「私に考えがあります・・ とにかく少佐は15分、艦の上部を守ってください・・」
「・・・ 考えって・・ まぁいいわ・・ じゃ下半身♪は任せたわよ!」
「了解! 艦長によろしくぅ!♪
少佐殿の下半身は、私が守ってみせますよ♪」
「・・・ ばか・・・ 艦内に丸聞こえよ♪」
・・・
私はカーゴスペースの中を見渡した・・ 上部クレーンに繋いだ戦闘ポッドの
ボール(RB-79)が繋がれている・・
「サミー! ボールを貸してくれ!」
「やっぱね・・ 大尉はきっと言うと思いました・・
でもボール1機でリックドムと戦闘ですか?・・ 自殺行為ですよ?」
「艦の下部を守るだけだ、何とかなるだろう・・」
「1機じゃダメです・・ 2機ならなんとか・・ 出ましょうか?」
「えっ・・・? 今なんて言った?」
「私も出ましょうか?って言いましたが・・
基盤の交換は部下がやりますから・・」
私はサミー曹長の目を覗き込んだ・・ 目は落ち着いた静かな目だ!
「助かる! ただ、前が私だ! サミーは援護を頼む!
常に不規則に動いてくれ・・ 敵はバズーカだから、弾数に限りがある
だからこちらには弾は使わないだろう・・ 艦狙いだからな・・
サーベルで来るはずだから・・ かわすぞ! 機動性はボールが上回る!」
「了解です 大尉! 行きましょう!」
私とサミー曹長は上部クレーンに繋いだボールに取り付いて、中に入った・・
整備が出来ている。さすがだ!
メインスイッチをオンにして起動に入った、電気式の戦闘ポッドは即時起動した。
このあたりが、モビルスーツにない、使い勝手の良さなのかもしれない。
通信機をオンにする・・
「サミー曹長・・感度は良好か?」
「・・・ 感度良好です、大尉!」
「ゲートをオープンし、クレーンの保持索を外してくれ!」
前部ハッチがゆっくりと開きはじめたが、動きがぎこちない・・
先ほどのミサイル攻撃での損傷痕が痛々しくみえる・・
開き始めたハッチの隙間から、太陽の光が差し込んできた。
敵に艦首を向けている事から、太陽に向かっているのだ・・
方向的には不利な迎撃体制だ!
軽くバーニアを吹かし、ゆっくりとカーゴデッキから表に出る。
サミー曹長も私に続いてカーゴデッキから表に出てきた・・
サーマルセンサーをオンにするが、太陽のせいで敵の位置を捉える事ができない・・
「サミー曹長・・ 艦の下部に潜るぞ! 着いてきてくれ・・」
「了解です・・ 大尉・・」
「艦長! 聞こえますか? ワサビィです・・ ボールで艦の下部に付きました・・
しかし、太陽のために、サーマルセンサーが利きません、
なんとか太陽との軸線を外すようには出来ませんか?」
「・・・ 大尉・・ わかったわ・・ 何とか外すよう動いてみるわね・・
ボールがあったのね、例のサミー曹長から出てた依頼の機体ね♪・・
でもMS相手にボールでは歯が立たないって聞いているけど・・
無茶はしないでね。
あっ・・ 敵のMSが来たわ・・ 注意してっ!!」
艦長との交信が終るか終らないかのタイミングで、艦のガトリング砲が吠えた!
一斉射だ!・・ すると太陽の中から、敵のMSリックドムが飛び出してきた!
艦の上部で方向を変化させ、後部に回り込もうとする、死角を探しているのだろう・・
必ず下部に回ってくるはず・・ 慣れないボールのコックピットの中で妙な感覚に
取り付かれていた・・ 来る・・ 奴は来る・・ なぜ、そのように感じたのかは
全く解らないが、妙な自信が私にはあった・・
その時、予想したように艦の下に潜ろうと、リックドムは軌道を変えてきたのだ!
「来た!」 ボールの照準を合わす・・3点射撃で180ミリ低反動砲を発射した!
3点射撃とは照準地点に1発、そして右側転位点(重量下ではジャンプの頂点)に
2発目、そして左側転位点に3発目を打ち込む基本的な射撃法だ。
しかし、敵のリックドムも手馴れだ! 左右ではなく上部に回避する
再度、照準を合わせ、3点射撃を試みるが、今度は下部に回避した・・
「そうか・・ サミー・・ 聞こえるか?」
「・・・ なんですか、大尉?」
「3点射撃は左右ではなく、上下に切り替えて援護してくれ!」
「・・・ 了解・・ でも・・ 早いや・・ 照準が中々定まらない・・」
「あせらんでも良いぞ・・ 大丈夫だ!
大体の方向が合えば、撃って良いからな・・
ただ、弾丸は21発だ・・ 3点射撃を7回撃ったら丸腰だ・・
途中で単発モードに切り替えてくれ・・
スカート付きを落とすのではなく、射撃体勢に入らせなければ勝ちだ!
それから、もう少し小刻みに方向変換を行なえ! 単純な動きは
命取りになるからな!
あと、常に艦を斜め前方に位置した場所をキープしろ・・
敵と自機と母艦が1線上に並ぶと、敵の思うツボだ・・
母艦を守るためにバズーカを阻止するには、自機で体当たりしか策がないからな・・」
サミー曹長に叫びながらも、私は3度目の3点射撃を左右で行っていた・・
やはり、敵のリックドムは上部に回避している・・間違いない・・ こいつの癖だ!
急にリックドムが距離を詰めてきた! まずい!! 私はバーニアをMAXで吹かす!
ボールは噂以上の高機動を発揮する・・ サミー機も上手く回避した!
私達の横をかすめ通過した、リックドムは、軌道を左に変えた・・
嫌な汗が噴出す!
私達に向かってきたのでは無く、艦を狙っていたのか・・ こいつはプロだ!
リックドムは、そのままグリフィンに一直線で向かい、バズーカを発射した!!
「しまったぁ!!・・」
と思った時、グリフィンから弾幕が広がり、バズーカの弾丸が空中で爆裂する!
気付かない間に艦が180度ロールし、ガトリング砲が設置されている艦の上部が
こちら側を向いていたのだ・・
艦長の気転か? 副長とのコンビネーションはさすがだ!
「サミー! 艦がロールした 下部に移動するぞ!」
「・・・ 了解!・・ 」
私とサミー曹長は機体を反転させ、またグリフィンの下部に回りこむ
そこには既にリックドムがグリフィンに対し射撃体勢に入っていた・・
「ええい!このスカート付きめっ!」
ほとんど目測で、トリガーをひいた!
180ミリ低反動砲は以前の設定のまま3点射撃を行う・・
とっさに私はボールを90度ロールさせ再度トリガーを引く90度ずれた3点射撃・・
結果として上下左右の5点射撃だ!
リックドムは下部に転位する・・ そこに2度目の180ミリ砲弾が見事にHITした!
一瞬リックドムの動きが止まる・・
「サミー! 今だ!打ち込め!!」
「・・・ オオオオ~!!」
サミー曹長の叫び声がスピーカーから聞こえると同時にサミー機が連射した、
5連射だ! しかし敵のリックドムも紙一重で回避し、グリフィンから離れる・・
「くそぉ逃げられたか! そうは簡単にはいかないか・・」
「・・・ ですね・・ 大尉・・ でもいい感じでしたね・・」
「おう・・ とにかく、もう少し頑張ろうぜ!」
「・・・ しかし・・ 大尉・・ どうやってジムに乗り換えるのですか?」
「ん? すまん!実はノープランだ・・ 何とかなるかな・・と・・」
「・・・ ええ~っ! そんな・・ まさか私1人で守れと言わないですよね・・」
「とにかく、後で考えるとして、今はスカート付きを止める事が先決だ!!」
「・・・ まぁ・・そうですけどぉ・・ なにか良い案があるとばっかり・・
・・・ 整備班! 聞こえるか?サミーだ! ジムの修理はあと何分だ?!」
「・・・ あと数分です! 現在稼動確認中です!」
「・・・ 了解! よくやってくれた! ありがとう!!
・・・ 大尉、そろそろ真面目に乗り換えを考えましょう!」
「そうだな・・ サミー曹長・・ 真面目にな・・
これはどうだ? 次の奴の攻撃を回避したら、すぐに私がカーゴデッキに飛び込む・・
多分1分ほどで、乗り換えて出て来れるだろうが・・ 1人でいけるか?・・」
「・・・ やっぱりぃ・・ だから1人だと、不安ですって・・というか・・
他の方法はないのですか? あと残弾数も気になりますし・・ 」
そうだ・・ サミー曹長は戦闘員パイロットではない・・ 無理な注文だったか・・
また、私の残弾もあと6発しかない・・・・ どうする?・・
2機一緒にデッキに飛び込むか・・ それもリスクが高い・・
「・・・ 大尉! また奴が向かってきました!」
「1発当てたのが、奴の右肩部分か・・ 機動関係には影響が無いみたいだな・・
ただ・・ サーベルが使えなくなっていれば、良いのだが・・
もう1発お見舞いしてやるしかないか!・・
サミー、右に展開し、スカート付きが右に出ないよう援護してくれ!」
「・・・ 了解!・・」
私は、リックドムに向かってフルスロットルを吹かした
互いの速度がプラスされ、みるみる近づいてくる!
サミー曹長が撃つのと同時に、私は左にステップし、1発180ミリ砲を発射する!
リックドムは左ではなく、また上側にステップしサミー曹長と私の砲撃を回避する。
「ちぃ!・・ また上だったか!」
リックドムがヒートサーベルを抜いて、私のボールに襲いかかって来た!
すかさず、MAXでバーニアを吹かす。
リックドムの下部にもぐり込み180度回頭、180ミリ砲を1発発射・・
と同時にリックドムは右に回避する・・ 重そうな機体なのに、敏捷だ!
そのまま、逆噴射しリックドムとの距離を広げた・・
白兵に持ち込まれると、勝ち目が無い・・
再度、グリフィンのガトリング砲の連射がリックドムに撃ち込まれた!
常にグリフィンは艦をロールさせ、リックドムには艦底部を見せない機位を
取ってくれている・・
敵のリックドムは再び、グリフィンの下部に潜り込もうと軌道を変える・・
「待ちやがれ! そうはさせるか!」
と、私も、グリフィンの下部にもぐり込むが・・
リックドムの姿が見えた瞬間に私は異様な違和感を感じた、
すかさずバーニアを逆噴射させたが・・
瞬間、衝撃と共に、大きなGに襲われた。同時に機体内の電源が落ち真っ暗になる・・
「しまった!! 喰らった!!」
直撃ではないが、バズーカをどこかに喰らった?・・
全く制御できない・・ くそぉ!はじき飛ばされたか?・・
非常に時間が長く感じる・・ 状況が掴めない・・
一気に汗が噴出してきた・・
真っ暗なコックピットの中で自分の鼓動の音だけが大きく響いていた・・
「<第14話>軍法会議か?・・」http://blog.goo.ne.jp/ichigowasabi/e/a36a64d8648ab658f376df17dfe7ba33に続く・・・
(2007/07/31 12:36)