今日の一貫

官僚内閣制 官僚亡国論 日本の統治構造

この間官僚内閣制に対する批判本が次々と出版されている。
インパクトが大きいのは中川秀直著『官僚国家の崩壊』(講談社)であろう。
ステルス複合体となずけられた不思議な官僚集団。
日本の改革を推進する上での最も根強い抵抗勢力となる。
この本、改めて言うまでもないが、21世紀大改革のために政治主導の必要性を説いたもの。
官僚国家の崩壊
中川 秀直
講談社

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次の選挙の争点は、「官僚内閣制」ではないか。
年金問題や道路財源の使途を巡り、これだけ国民が願ってることとは逆のサボタージュにもにた生態を見せつけられると、「幾ら何でもでもなーー」、、とおとなしい国民ですら不信感を持たざるを得ない状況になっている。
そこに、福田内閣、官僚制の上にたった内閣との定評がたち、公明党が自民党離れを始めている。

ジャーこんなになってしまった官僚制度、、、官僚内閣制って一体どこがどう悪いの?
どうすれば改革できるの?
となるのは理の当然だろう。

そこを解きほぐすように官僚内閣制批判の本が続々と出ている。
屋山太郎『天下りの崩壊』海竜社(7月14日)、
田中一昭『官僚亡国論』講談社(7月30日)とつづいた。
寺脇研まで悪のりして『官僚批判』(講談社)という本を出版した。
機を見るに敏な人だ。
この人は一体何を考えてるのだろうか?
志半ばにして石もて追われた我が官僚時代を振り返っている本を「官僚批判」とは、、。

まそれはそれとして
読みやすいのが、屋山太郎著『天下りの崩壊』。
天下りシステム崩壊―「官僚内閣制」の終焉
屋山 太郎
海竜社

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屋山・田中の二人は、07年7月にできた「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」委員。
内閣総理大臣の下に開催される懇談会。「有識者懇談会」と呼んでいる。
田中一昭は「官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会」委員長を兼ねる。
08年通常国会に提出された「公務員制度改革基本法案」の内容は、屋山によれば、次の4点
①21世紀にふさわしい行政システム、それを支える公務員像の実現。
②公務員制度全体をパッケージとして検討。
③能力、実績主義の人事管理の徹底
④再就職に関する規制を加える。
官僚内閣制の問題やその崩壊過程、改革のプロセスに関しては、この本にが詳しい。
本質を事例をあげて書いており、2時間もあれば読めてしまう。

田中の本は、中曽根内閣での土光臨調当事者としてのこれまでの経験が反映している。
官僚亡国論 「官」にあって「官」と闘う
田中 一昭
講談社

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土光臨調、国鉄改革の成功をあげたあと、道路公団改革の失敗、が書かれ、
その後、屋山と共通する官僚内閣制の改革が書かれている。
視点は、主に元官僚の立場から公務員制のあるべき姿(第1章 公務員の使命)やその変質、将来が描かれ、最終章は、自律心と自立心をもて、となっている。
道路公団の話は前著の二番煎じだし、土光臨調・国鉄改革も少々古い感が否めなくもないが、精神は伝わってくる。

この本のおもしろいところは、小泉総理評。
いわく「全体を見渡せない」人(139P)。
竹中氏は絵を描いて説明していたと、竹中氏をほめ、自分はそれができなかったとも。
中曽根、橋本は「読書家で資料を読み込んでいたが、小泉は本は読むようだが資料は読まない」。
「感性の人が総理になったことの悲劇」
「小泉総理自ら抵抗勢力と呼んで非難したはずの利害関係者に、彼が実は肝心なところを譲歩していた」。
「抵抗勢力も同じ舞台に上がるという意味では大事な仲間だったということか」
といったようなもの。
おそらく正しいのだろう。

「役者もシナリオライターも不揃いすぎたのだ」という。
審議会や委員会での評論や議論とそれを具体化するための制度設計との間には、大きな開きがある。
その開きに、官僚が入り込む余地がある。
改革のためには、この両方に関して独自の意志を持って行動できるプロジェクトマネージャーが必要になる。
道路公団改革ではそれをやる人がいなかった。
田中氏は、国鉄改革との違いを何点か挙げているが、「議論の後を引き継いだ実行部隊の違い」を二番目にあげている。
また時代の違いとして、国鉄は破産寸前で組合がひどかった、道路公団は鐘の鳴る機で組合もなかった、という点が改革の本気度に繁栄したとも。


ところで、屋山太郎氏も書いているように、
公務員改革は、「自民党が政権を維持できるか、民主党に政権を執られるかの岐路を占うもの」。
自民党が官僚内閣制を打破できるか?
これ言われるほどに簡単ではない。
というのも、官僚内閣制は、自民党の意思決定プロセスと一体となっているから。
自民党の政調会には部会が各省に対応してある。
そこには省のことを良く知っていて、また関係団体に精通している族議員がいる。
この部会、常に官僚を呼んで勉強会をおこなっている。
それにとどまらず法案や新規事業の意思決定すらやってしまっている。
政調会で決められたことが、省の政策に反映する、いや一体化する。
政調会の案が総務会で決定しない限り、首相といえども政策かはできない。

つまり、今のままの自民党の意思決定プロセス、自民党政調会が官僚を呼んで政策決定している、ようでは官僚内閣制はなくならない。
この自民党の意思決定システムが、今とは別個のシステムになるかが鍵なのだろう。
ということは、自民党が選挙に勝つには、現在の自民党の意思決定システムをぶっ壊さないとだめだということに。
これはちょっと厳しいのではないか?


日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書 (1905))
飯尾 潤
中央公論新社

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議院内閣制が民主主義の基本だとするのは、飯尾潤『日本の統治構造』中公新書2007に詳しい。
要するに、「民主制の代理関係が一貫しており、一つの連鎖になっているから」
有権者→国会議員→首相→大臣→官僚といった権限委譲の連鎖が目に見え、るからである。
ところが、「内閣は、首相を中心として団結した合議体から、それぞれ拒否権を持つ大臣からなる合議体」へと逸脱してしまったとも。
この現象は、「官僚からなる省庁の代理人が集まる」官僚内閣制だ。
現に、6月諮問会議での若林元農水大臣「総理おことばですが」発言は、官庁の代理者として首相の指示をはねつけた好事例。
大臣は閣僚であるはずなのに、大臣という省益を代表するものになっている。しかもその省益、自民党の政調会で族議員と一緒に作ってるだけに、首相も面と向かって異を唱えるわけにもいかない、という構図だ。

社会の一大変革を成し遂げなければならない時期に、国民と政府の契約関係の間に官僚が入ることはおかしい。
ここはその契約関係を選挙時に明確にする作業が必要になる。
それがマニュフェスト選挙であろう。
特に予算規模の大きい厚労省、国交省・
年金医療道路など、国民の社会福祉に関わるこれらの省の有り様は、マニュフェストで契約関係をはっきりさせ、透明性を高めていくべきだろう。
農水省のような官庁は、その仕事の大半を地方政府に任せた方がいい。

ところで、飯尾さん、この本で読売・吉野作造省(2008)、サントリー学芸賞(2007)受賞という。おめでたいことです。
吉野作造、宮城県大崎市(旧古川市)出身で、記念館もある。
今度は仙台市内ではなく、是非大崎市でお会いしましょう。
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