この講演は、農政からみて、政権交代はすでに2009年5月におこっていた。
特命チームの頓挫、経済財政諮問会議の6月民間議員の2月と6月のペーパーの落差を傍証としてあげた。
また、民主党政権は、これまで農誠意として地道に実行すべき、ラージパッケージの内容を少なくも、マニフェストやインデックスでは掲げているので、最低限、これまでのしがらみの解消は期待はできるとしたもの。
ラージパッケージは、1次産業資源を無駄に使ってる現状を改革するための諸施策。
以下、「米麦日報」有断転載しておこう 2009年12月3日
宮城大・高木客員教授、民主党農政「しがらみ脱却の可能性」指摘
宮城大学は1日、仙台市内で事業構想学部と食産業学部の連携公開講座を開催、予定を上回る200人弱が詰めかけた。
このなかで、同大学の客員教授である高木勇樹氏(J-PAO副理事長、元農林公庫総裁、元農林水産事務次官)が、「我が国の一次産業の将来展望『政権交代と農政』」と題して講演を行っている。
高木教授は、民主党農政についてマニフェスト、インデックスの特徴をあげ、「現段階ではこれ以上でも以下でもない」としながらも、「これまでのしがらみから脱却またはリセットできる可能性は相当大きい」と、評価というよりは期待感を表明した。
講演のなかで高木教授は、「政権交代と農政」の淵渡を1993(平成5)年のガット(関税貿易一般協定、現在のWTOルール)ウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉、現在のドーハ・ラウンド)決着、つまり米の関税化拒否の代替としてのMA加重受け容れに求めた。
その後、現在に至るまで常に繰り返されてきた米政策の変遷を説明するなかで、何度かあった「改革できそうで、そのたびに頓挫したタイミング」の代表例として、「生産調整に関する研究会」(2002年1月18日~2003年4月4日)で「ラージ・パッケージでの政策の必要性」を指摘したにもかかわらず、その結論としての「米政策改革大綱」(2002年末)でラージ・パッケージ政策を打ち出せなかった点を例示。
2006年7月の品目横断的経営安定対策(現在の水田・畑作経営所得安定対策)、今年7月の農地法等抜本改正と、ラージ・パッケージの一部であったはずの政策をスタートしおえるまで結果的に7年もかかってしまった点を、「戦力の逐次投入」と表現した。
一方、2007(平成19)年夏の参院選を契機とした「米緊急対策」を端緒に、与党(当時)自民党が再び「主食向け米価維持のための生産調整強化路線」に転換した点を「バックギア」と指摘。
この路線を継続してきた一方で始まった石破農政(昨年9月)によって、今年1月になって6大臣会合、特命チームを設置。
「4月17 日の6大臣会合決定に盛り込まれた項目を見る限り、これをベースに改革を進めれば、農業・農村の具体的将来像、特に米の生産調整について方向性を示しえたはず」だったが、実際にはこれ以降、特命チームの検討は頓挫した。
したがって実際の政権交代は今夏の衆院選によって実現したわけだが、高木教授は「特命チームの検討が頓挫して以降、総選挙までは、与野党とも消化試合に終
始した」とした上で、「農政の政権交代は、今年4月末に起こっていた」と結論づけた。
政権交代後、民主党農政が進み始めているものの、高木教授は「戸別所得補償も含め、現段階では制度の詳細が明らかになっていないため、何らかの評価なりコメントをする知見を持ち合わせていない」とした上で、マニフェスト、インデックスを引き合いに出し、「現段階ではこれ以上でも以下でもない」とした。
ただ、「民主党農政を点検する切り口(キーワード)」として、
①間接支援から経営体への直接支援の政策手法・政策ルートに転換、
②経営形態(個人、法人、集落)や業態(直販、地産地消)にかかわらず、「持続する農業」、「(リスクをとる)経営」をめざしているか否か(農商工連携、6次産業化推進のベース)、
③その上でのセーフティネット(例=直接支払い)か一一と整理した上で、「これまでのしがらみから脱却またはリセットできる可能性は相当大きい」としている。
こうした政権交代の動きとは別に、純粋に「我が国一次産業の招来展望」を描く上での切り口として、高木教授は、①「資源少国・日本」が本当か検証すれば、豊富な農林漁業資源を活用しきれていない実態が浮かびあがる(耕作放棄地や食品残漆の存在、手つかずの間伐材、漁獲量が少なすぎるサンマなど)、②依然として所得水準の高い1億人の人口を抱える豊かな国内市場、富裕層が厚みを増しつつある中国をはじめとする東アジア市場、③日本のモノづくりの力、異業種との連携、④農林漁業者の知的水準、経営マインドの高さ一一を指摘した。
主催した宮城大の大泉一貫副学長(兼事業構想学部長、教授)も「我々は一次産業が衰退するものと勝手に思い込んでしまっただけなのではないか」として、「〝オープン・アグリ〝に努めるべき」との考えを示している。
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