今日の一貫

直接支払いに関する自民党の主張と民主党の主張に関して

1,今時44回衆議院選挙では、農水省の品目横断型直接支払いが国民的合意を得た感がある。この選挙では、自民党案と民主党案が対立した。

自民党案は、「担い手育成による農業構造改革推進のために、地域農業を支える経営に対する品目横断的な経営所得安定対策等を実施する」というもので、これは農水省案と同様である。政府案と同じ内容を提案するのは与党として当然のことであろう。

だが、44回衆議院選挙は、郵政改革か守旧かと行ったレトリックの中にあり、自民党案は改革案と国民に受け入れられ、同じ自民党が提案する「品目横断的な経営所得安定対策」も構造改革の切り札との印象を与えた。

他方、民主党はマニフェストの6番目に農業政策をかかげ、「補助金漬け農政を見直し、原則としてすべての販売農家へ総額1兆円程度の直接支払いをする」とした。
同時に、「農地取得要件の緩和や、新規就農しやすい条件」の醸成を語ってはいるが、いかんせん「全ての販売農家」とするあたりにバラマキの感を感じた国民は多く、そのため、民主党は大きな政府を指向する政党とのイメージを作ってしまった。

小さな政府を指向する自民党案は明らかに改革者としての印象を強くした。確かに、自民党は「攻めの農政」を強調し、輸出促進などを絡めながら、品目横断政策を語っており、民主党と比べると農業構造の改革を強く語っているように見えた。

2,自民党には守旧派の代表と目されるような農林族がいるが、すべからく改革の追い風受ける選挙になった。ある元農林族も郵政民営化促進論を熱く語っていた。

農業団体も、若干の味付けがあるものの、基本的に自民党と公明党、つまり小泉構造改革を支持した。
通常なら、郵政の次には農協が改革のターゲットとなるだろうし、そう考えれば、なぜ改革支持なのか不思議ですらあった。

特に今度の選挙は、小さな政府を目指す小泉自民党と、大きな政府論者にされた民主党との対抗である。農協が小さい政府支持という話は聞いたことがない。民主党が、バラマキ的直接支払いを掲げれば、農業団体は同調するだろうと踏んだのはむしろ当然だった。
しかし、農業団体も自民党の掲げる「農業の担い手を特定した日本型直接支払い」に反対ではなかった。特定される担い手を自ら納得できるものにできれば、それでいいと考えていたからである。
つまり、今回の選挙で明確になったことは、農水省が提案してきた「品目横断的経営安定政策」は、構造改革を実現する最も改革的な手法として受け入れられたという事である。

3,ただ、民主党案も制度設計によっては、構造改革推進的になりうる可能性はあると私は思っている。たとえば、「全ての販売農家」を対象としてもかまわないが、何が大切なのかといえば、構造改革を推進する「基準」を明確にするという一点だったろう。そのうえで、「基準」をクリヤーしようとする意志を持つもの「全て」がこの制度を選択できるようにすべきだったのだ。クリアーすべき「基準」を、過去の経営条件や現況で判断してしまったら、そこに構造改革に向けた担い手の意欲や創意の発露は弱体化してしまう。大事なのは、未来に向けた意思であり、如何に構造改革促進的にするかという視点であった。
ついでながら、民主党案には、1兆円の半分は地方政府にゆだねるとするなど、現場主義的な味付けもあり、それなりに工夫を凝らしているところがあり評価していい点だろう。

4,経営安定対策の方向は、「品目横断型の経営安定政策」でいくことに決まったが、「品目横断」にも課題がある。
直接支払いは、耕作放棄地の解消や農村資源の維持といった観点からと、国際競争力ある農業構造への転換を促すためのものと二つの位置づけがなされている。これを混同してはいけないが、ここでの論点は、構造改革を推進するための「直接支払い」である。特に水田農業の国際競争力の向上は必須であり、そのための改革の中身の「つめ」が必要である。

稲作に関しては、当面米の関税水準を現行水準に維持するとするのが、わが国のWTOの交渉課題だが、それはそれとして、担い手の急減、耕作放棄地の増加、国際情勢の変化等を総合的に考えれば、必然的に国際価格水準へシフトし、国際競争力を強化する構造改革が展望されなければならないだろう。

課題は、そうした国際競争力構築にどの様に直接支払を機能させるかである。それは水田農業の構造改革に如何に効果的に直接支払い制度を利用するかという視点でもあり、直接支払いを語るなら、当然にターゲットとする対象者の明確化・絞り込みが必要である。
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