この法律、リスクにさらされる土地利用型の農業経営者にセーフティネットをと考え出されたもの。これまでの価格政策を所得政策に切り替える。切り替えに当たっては、所得保障の対象とする農業経営者をどの様に特定するかが課題となった。
民主党などは、これは農家の選別政策だとして反発の声もあがったが、私としては、ここまでは、この法案を支持したいとおもっている。
ただ、やはり課題は対象となる担い手の特定だろう。
認定農業者がまず対象となるのは異存がないところ。
しかし、担い手の不在が考えられる地域では、経営実態を持つ集落営農も対象とすることがうたわれている。
これは「経営実態」を持つ、という限りで、法案には賛成なのだが、しかしこれまでの実際の動きは必ずしもそうはなっていないようで、そのことは問題としなければならないのだろう。一時しのぎ的な(本人達は必死なのだろうが)法の考えにに沿わないような集落営農が増えてはいないか?
また農地集積を先に、2階部分に経営者をという推進手法はこれまで幾度も失敗を重ねてきた手法。農地集積は、信頼のある農業経営者が自らの経営活動の中ですべきで、地域はそれをサポートしてあげる、というのが筋、と私は主張し続けている。
地域が農地集積をみんなでする、が先ではうまく行くはずはないと思うのだが。
また認定農家だけになったら、行政や農業会議所、農協の出番はほんのわずかになってしまう可能性もあるが、集落営農で農地集積をといってる限りは役割は明確だし出番は多い。居場所作りに集落営農を利用したきらいはないか?
そんな意地悪な見方をしなくても、農水省行政は、農地法や旧農業基本法など、法律とは全く異なった運用をしてきた歴史がある。今回は是非法律通りの行政をして欲しいものだ。
つまり、経営実態を持つ者を法の対象とすべきとした理念を、運用で骨抜きにしないようにして欲しい。
水田農業は、まだまだ所有のロジックがまかり通る世界である。そうしたところに、皆で話あって経営体をといったきれい事はなかなか浸透しづらいものだ。
今後必要なのは、水田所有を利用本位に変える、法的整備なのだが。
ただ注意しておくべきは、農地法を、罰則も含め、法律通りに運用すえば、それはそれで利用補にの農林業せいになってしまうのだが。それは、第三次農地改革にすらなる。
このパラドックスを農政関係者は考えておく必要があるだろう。
つまり、戦後60年で作られた、有効需要創造農政をうち破り(これが何かは拙著をお読みいただきたい)、新たな農政を推進するためには、およそ60年前に作られた法律の額面どおりの運用でいい、というパラドックスである。
ともあれ、担い手経営安定新法、建前上は、戦後の護送船団方式といわれた農政を、選別政策に切り替える画期的なものである。新の産業法として機能して欲しいと思う。
最新の画像もっと見る
最近の「農政 農業問題」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2020年
2019年
2014年
2004年
人気記事