今日の一貫

戦後保護農政の性格と今後

戦後保護農政と自立型農政との比較を行っている。
今回は、戦後保護農政とは何なのか?

1)戦後農政の性格;
戦後農政の性格をいえば、「中央集権的・農協協調・護送船団的バラマキ型保護政策」、「弱者・格差是正保護農政」、しかしその本質は、「小所有者保護による体制維持」政策

①戦前の小作争議を背景とし、農村への民主化と社会政策的意味あいをもって農地改革が行われたが、そのことによって自作農が創設された。

②その後このフレームは体制維持政策として機能するようになる。
社会主義への対抗として自作農制を機能させ、また高度経済成長期には、保護的政策を強化、有効需要創造的政策(後述)を強化し、豊かな農民を作り、保守安定層としての小所有者優遇政策農政としての性格を強化する。

③そのため産業政策としては、目標に向かって体系化したものとは言い難いものとなり、施策同士が相互に相殺し、スピード感に欠けた実効性に乏しいものとなった。

そうなったのは、
① 政策課題や政策(手法)が上記理由(体制維持の手段としての農政)により政治イシューとなることが多く、絶えず揺れ、思い切った施策展開(産業施策)ができないこと(総花的になる)

② 全国をターゲットとした施策展開(中央集権的農政)であるため、政策課題や手法が全国一律で、地域の特性を踏まえず、個々の経営者にふさわしくないものとなりがちである。

③また、民間への不信感があり、啓蒙的かつ唯我独尊的になり押しつけになりがちである。民間のアイディアが蓄積しない構造になっている。

④さらに、本質的には、
農家の所得形成、有効需要創造に特化し、農業団体をパートナーとした中央集権的政策執行を旨とした「戦後高度経済成長期」の農政の発想(体制維持=票が欲しい)からなかなか抜け出せない

2)政策目標について
=農有効需要創造策による豊かな農民の創出
この時期、政策は「高米価」、「兼業維持」、「資産保全」の政策を講じた。

内容は、①需給動向を無視した「米価の維持」、②「従事耕作者を60日」にするなど農地法違反にならないよう読替をしてでも行ってきた「兼業農家維持」、③ゾーニングがありながらスプロール的な転用を認める「農地資産保護」という三つの政策である。農家は遅れているという発想、社会政策的発想。

3)政策手法について
=政官業の40年体制による推進。
政府を企業者、農家を「単なる業主」とし、農協等の各種農業団体を企業者たる政府の補佐とする、政官業協調の1940年体制を維持する政策手法。農家の知恵や民の発想への不信感。官の政策への自信。

4)結果とその後の農政
①戦後のこうした小所有者保護的政策や執行手法は確かに「豊かな農民」を作った。
しかし農業は衰退した。衰退したのは農家の創造性が萎縮してしまったから。

②これらと「決別」しようとしてなかなか「決別」できない例としての需給調整政策
農政は、弱者対応、社会政策的行政、であり、ボトム・アップ的政策(有効需要創造策)となっている。
産業政策としては産業調整政策に移行できない。
経営者育成にブレーキをかけている。

③民主党が上記の構造に気づき、その横取りを考えはじめたのが、戸別所得補償政策(07年)。

④自立型農政の考え方から見た場合の戦後農政の課題。
産業として自立し得ない。
補助金依存が今後も続く。
農協に依存しても票はでないと気付くかどうか。
またそれが実証されるかどうか、が農政の転換となる。
マスコミも農協の不買運動が怖い。
いわば、自爆テロ的な政治運動を展開する全国農協中央会の方針が問題。
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