日本経済新聞
【ジュネーブ=馬場燃】世界貿易機関(WTO)の二十四日未明の閣僚会合で、欧米が農産品関税の削減幅を例外的に小さくできる「重要品目」を全品目の四%に限ると提案したことがわかった。
農産物の輸出国で、鉱工業品の関税引き下げに抵抗する新興国に譲歩を迫る狙いがある。今後四%を軸に交渉が進む見通しで、八%を主張してきた日本は孤立する恐れがある。(関連記事5面に)
今回の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)には百五十三の国と地域が集まり、農業や鉱工業品の関税を削減するルール作りを議論している。二十三日から日、米、欧州連合(EU)、インド、中国、ブラジル、オーストラリアに絞った少数国閣僚会合を開催した。各国がぎりぎりの譲歩を迫られ、交渉は妥結か決裂か重要な局面を迎えている。
焦点の一つとなっていた農業分野で米国、EUは農産品の重要品目について、たたき台である議長案の「四―六%」の下限である四%にすると提案した。
高関税で保護される品目を減らすことで、農産品の輸出拡大で攻勢をかけたい新興国や途上国に市場を開放する姿勢をみせた。
日本の農産物は千三百三十二品目あり、関税率が一〇〇%を超す農産物は百二十五品目ある。重要品目が四%なら五十三品目に限られ、コメ、砂糖などの一部にとどまる。
これまで日本は「重要品目を八%は確保したい」と主張してきた。
EUは国内農業保護のため日本に同調していたが、交渉進展のため輸出国に歩み寄った。
重要品目を一%に限定するよう求めていた輸出国の米国は四%に譲歩した。
主要七カ国は二十四日午後に再び集まり、さらに議論を深める。
次の焦点は、新興国が議長案で「一九―二六%」と幅をもたせている鉱工業品の関税引き下げ幅でどう折り合うかに移る。
▼重要品目 農業の貿易自由化ルールの大筋合意を目指す世界貿易機関(WTO)の交渉で、農産物の関税の削減幅を例外的に小さくできる品目。
日本の場合は、現在七七八%の高関税のコメ(精米)など、国内農家の保護を理由に関税を急激に下げたくない品目の指定が想定される。
閣僚会合前に農業交渉の議長が示した案では、「全品目の四―六%」を指定できるとしている。
議長案では基本的に農産物の関税を六六―七三%削減するが、重要品目はその三分の二、二分の一、三分の一の削減ですむとされている。
ただ、低関税で輸入する枠を増やさないといけない。
【5面】
保護農政転換迫る、WTO交渉、「重要品目」4%に限定案、農産物厳しい選別。2008/07/25, , 日本経済新聞
【ジュネーブ=市村孝二巳】高い輸入障壁でコメなど国内農産品を輸入品との競争から保護し続けてきた日本の農政が転換を迫られている。農産品などの貿易自由化ルールを決める世界貿易機関(WTO)閣僚会合で、欧州連合(EU)と米国が関税大幅削減の例外となる「重要品目」の数を全品目の四%に限ると提案。
交渉が妥結すれば、日本は高関税の農産物に優先順位を付け、どの品目の保護を断念するかという厳しい選別を余儀なくされそうだ。(1面参照)
関税率が一〇〇%を超える農産物の品目はコメ、乳製品、砂糖など百二十五品目あり、全部で千三百三十二品目のうち九・四%に上る。
農業交渉議長の最終合意案では関税率七五%超の品目は七割前後の関税削減を求められている。
この原則をコメ(精米)に適用した場合、七七八%の関税率は一気に二三三%まで低下する。
重要品目はできるだけ関税水準を高くするため関税削減率を原則の三分の一まで圧縮できる例外措置。
日本は今回の閣僚会合で少なくとも八%は重要品目を確保することを最優先課題の一つに掲げていたが、欧米がいち早く四%への譲歩を提案したことで、日本が重要品目候補と想定していた高関税品目の一部は原則通りの七割削減にさらされる可能性が高まった。
農林水産省は高関税品目の保護優先順位をこれまで明らかにしていないが、コメ(十七品目)は最優先となる見通し。欧米提案通りの四%なら五十三品目に限られ、コメ以外に砂糖(五十六品目)を含めようとしても一部しか対象にならない。
最終合意案は重要品目の数を二%分上乗せする例外規定も盛り込んでいる。
これは欧米に比べて全品目数が少ない日本が重要品目で不利な扱いを受けないように、ファルコナー議長に要請した項目。
しかしブラジルやオーストラリアなど農産物輸出国は反対しており、二%の上乗せが実現するかどうかは微妙だ。
インドのナート商工相は少数国会合後「上限関税で進展があった」と述べた。
日本が強硬に反対する上限関税が導入された場合、影響はさらに大きくなる。
七割削減後も一〇〇%を超えるコンニャクイモ(現在一七〇六%)やコメ(同七七八%)、落花生(同七三七%)、でんぷん(同五八三%)などの関税率は一律一〇〇%にカットされる。
最終合意案には「上限関税」という記述はない。
その代わりに、七割削減後も一〇〇%を超える関税品目が残る日本やスイスのような国は、重要品目に義務づけられる低関税輸入枠の拡大幅を国内消費量の〇・五%分上乗せするという代償措置が求められている。
ブラジルなど新興国は鉱工業分野の大幅な関税削減と引き換えに、日本などが反対する上限関税や代償措置を強く求めており、日本は「厳しい」(若林正俊農相)立場に追い込まれている。
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ミナミ
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