今日の一貫

参議院選挙で争点にならなかった 小さな政府論

小さな政府は、喫緊の課題なのに争点にならなかった。
「生活」と「格差」が課題になったから、と考えるのが常識的回答だろう。
生活は確かに大事だ。
それと同レベルで、というより「そのためにも」といった方がいいのかもしれないが大事なのは、国家運営。特に経済。
ただそれは、決して抽象的国家観ではない。
戦後保守は経済成長、景気を優先課題としてきた。」
そうした意味では安倍政権は、日本の保守政権ではない。
そうでなかったのは、岸、中曽根、等々。
日経が31日の社説で、改革を論じていた。
もっともだと思う。

自民も民主も改革の灯を消すな(社説)2007/07/31, 日本経済新聞 朝刊, 2ページ, , 1916文字


 息の長い経済成長のため今こそ、経済活性化や「小さな政府」実現への様々な改革が必要なのに、今回の参院選で改革はあまり争点とならなかった。安倍晋三首相は経済改革に関してはほぼ官僚任せで、既得権益の壁を崩す強い意志が感じられない。民主党に至っては、ついこの間まで改革を掲げていたのに、今回は、ばらまき的な農業補助金構想で農家の票を大量に集めた。小泉前政権の下でともったばかりの改革の灯を、政争のために消してはならない。


迫力欠いた首相の路線
 首相は経済・財政改革に関してはあまり前面に出さなかった。消費税の増税については成長促進と歳出削減を進め、なるべく増税に頼らない考え方。確かに成長率が高まれば税収が増える。社会保障費の増加を考えると消費税増税はいずれ避けられないにしても、入札制度の改革などによって国・地方合わせ何兆円もの予算が削れる可能性がある以上、歳出削減を優先するのは当然だ。

 だが成長促進策や歳出削減の中身があいまいで迫力に欠ける。来年度の公共事業の削減幅をどの程度にするのかも、ついに言わなかった。

 そもそも首相は小泉改革を継承したものの経済への関心は薄かった。戦後体制からの脱却を掲げ憲法改正に道筋をつける国民投票法を制定したほか、教育再生に力を注いだ。それは良いが、教育論議は途中で「親学」に向かうなど脱線気味で、有能な人材をいかに育てるかという意味のある論議が深まらない。


 経済改革への明確なビジョンと、実現への意欲を見せなければ、ライバルに弱みを突かれるのは当然だ。
 小沢一郎民主党代表は農村地帯に多い一人区で、小規模農家も対象にする戸別所得補償の構想を示し、票を集めた。生産性向上にはつながらない案だが、それを支持した農家を責められない。政府・自民党が今春から始めた新農業補助金制度は一定規模以上の耕地を持つ農家を対象にし、耕地の大規模化を通じ生産性を高める内容だが、小さい耕地しか持たない農家への説明や配慮が足りなかったと言われても仕方がない。
 また、農村部など地方の経済が全体に疲弊している問題に有効な政策を出せなかった。地方経済の振興には税源や権限の移譲を含む地方分権が欠かせないが、官僚の抵抗が強く現政権下ではほとんど進展がない。二十九の一人区で自民党が六議席しか取れなかったのもうなずける。
 農村地帯の抱える問題が解消しなければ、農産物市場を開放できず、自由貿易協定(FTA)や世界貿易機関(WTO)の通商自由化交渉に支障を来す。それは製造業やサービス業の国際展開を考えると、とても困った問題である。続投を宣言した安倍首相は三十日の記者会見で「改革の陰の部分に光を当てなければならない」と反省の弁を述べた。地方分権の推進などが急がれよう。
 一方、民主党は小沢代表の下で戸別所得補償のほか、月二万六千円の子ども手当支給など、有権者の耳に心地よい構想を出した。経済活性化策は中小企業に焦点を絞り、政府系金融機関融資への個人保証の撤廃などを提言する。激化する国際競争に合わせ経済の構造を大きく変えるような建設的な内容とはいえない。


 菅直人、岡田克也、前原誠司各氏ら、以前の代表は自民党と改革を競ったが、小沢氏のマニフェストには「改革」の二文字がなかった。民主党は改革路線を続けるのかどうか、ぼやけた自画像を描き直すべきだ。
小沢氏、責任ある政策を
 民主党が政府・与党案をすべて参院で拒否するような行動に出れば、改革は停滞する。それが引き金になって自民党と民主党が「ばらまき政策」を競うようになれば最悪だ。両党は本当に重要な問題で政策を協議することも考える必要があろう。
 例えば役人の規律の緩みを正す改革。年金問題は社会保険庁職員のずさんな仕事ぶりが原因だが、それによって国民の政府不信は極みに達している。それを放置すれば、どちらの党が政権を運営するにしても困るはず。欧米に比べ遅れている会計検査や行政府内の監察、政策評価など「政府の内部統制」を充実させることに両党で取り組んではどうか。

 持続的な成長に不可欠の地球温暖化対策では民主党が排出権取引の導入を提言するなど一歩前に出ている。政権が代わるごとに制度を変えられないこのような問題でも、両党の協調は欠かせない。 
 海外の主要国の多くは市場機能を生かすための改革を終えた。英国はサッチャー改革で成長の基礎を築きブレア前政権が医療費増額や若者の就職支援などでバランスをとって十五年連続の成長だ。ドイツ経済も労働市場の改革や小売業の規制緩和などが功を奏し好調である。
 民主党には政権交代の可能性が見えてきたが、それを目指すなら、経済改革をこそ競ってほしいものだ。
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