あの忠臣蔵の全段を通しでみる機会がようやくきました。
2013(平成25)年12月の歌舞伎座 昼の部、夜の部では大部分を上演したのですがすべてではありませんでした。今回は国立劇場開場50年記念イベントとして完全版として全てをみせてくれるのです。かなりの上演時間になるので、10月から12月まで3回にわたっての上演です。きょうは11時開演-16時15分終演(途中休憩2回55分)です。
大劇場3階の3等席最後尾列の中央に席を確保できました。オペラグラスがあれば顔、視線までよく見えます。
10分前に開演を知らせるブザーが鳴りました。口上人形による配役と役者紹介です。人形浄瑠璃の慣習をもとにしているそうです。エヘン、エヘンと咳払いをして看板役者の名を呼びます。人形の動きが滑稽なので雰囲気がとても和らぎます。
木の音とともに大序「兜改め」がはじまるのですが観客席は若干ざわついています。東西東西の掛け声(場内静かにねという意味だそうです)とともに静寂になり、定式幕がゆっくり、ゆっくりと引かれていき、はじまりはじまりです。登場人物は首を垂れた人形の形であり、七五三の置き鼓、浄瑠璃で人物紹介されると息を吹き込まれ、人間になるというこの作品だけの演出だそうです。
大序:鶴ケ岡社頭兜改めの場
二段目:桃井館力弥使者の場、松切りの場
三段目:足利館門前の場(進物、文使い)、松の間刃傷の場、裏門の場
四段目:扇ガ谷塩冶館花献上の場、判官切腹の場、表門城明け渡しの場
三段目の「文使い」「裏門」は国立劇場では昭和63年以来28年ぶりの上演、四段目「花献上」は東京でも昭和50年以来の上演だそうです。
これまで、おかる勘平は悲劇=奉公人同士は恋仲になってはならないというきまりゆえの悲劇かと思っていました。三段目「文使い」「裏門」をみて二人が逃避行に至った筋がよくみえました。塩冶判官の妻顔世御前の言いつけに従わずに、勘平会いたさに高師直に手紙を早めに届けてしまい、その結果、主君の刃傷沙汰を誘発させてしまったおかると、おかるの誘いに乗って情事にふけったために城から締め出され刃傷沙汰後の主君の様子をつかめなくなり職場放棄・逃亡した勘平のオフィスラブの果てだった・・・と。江戸時代の台本なのですが現代風なストーリーでもあります。おかる勘平を悲恋に仕立てたのは昭和の時代劇映画だったのでしょうね。
本蔵の娘小浪(米吉)は美しかったなあ。11月の第二部、12月第三部は、菊五郎、吉右衛門ら看板役者の出演です。楽しみです。