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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

父・正典のこと『ちりとてちん』

2007-11-29 | テレビドラマ
 ヒロイン喜代美(貫地谷しほり)の父正典(松重豊)のことを少し。和田家の面々は母の糸子(和久井映見)をはじめとして皆相当にぶっとんでいる。食卓の会話はその様子がわかる格好の場である。もう何週も前だが、塗り箸職人の正典を取材したいとフリーライターの奈津子(原沙知絵)がやってくる。掲載されるのが女性誌『サブリナ』(たしか)と聞いて、父は「どんな雑誌だろう」と素朴な疑問を口にする。すると長男の正平(橋本淳)が、雑誌のコンセプトや読者層について滔々と述べる。正典が「なんで知っとるんや?」と聞くとすかさず、祖母小梅(江波杏子)が「これですのや」と食卓の下から雑誌『サブリナ』の現物を取り出す。正典は「なんで持っとるんや?」と驚く。このドラマについての記事を最初に書いたとき、自分は何気なく「父親の突っ込みがおもしろい」と記したのだが、待てよと思った。正典の台詞は、けったいな家族の言動に対する実に率直な疑問でありコメントであり、批評である。彼は和田家の中で、いちばん普通の感覚の持ち主なのだ。自分たちみる側が思うことを、絶妙のタイミングで言ってくれるので、場面のテンポが上がり、ぐんとおもしろくなるのである。そのコメントに対して、家族がほとんど反応せずにどんどん会話が進んでいくところがなんとも…。

 先週放送分で、喜代美にぞっこんだった和田友春(友井雄亮)が「B子との婚約を解消させてください」と頭を下げにくる。無論婚約などしておらず彼の思い込みなのだが、他の家族が婚約云々の話で盛り上がったのに対し、正典だけは少し違う表情をしていた。友春が「B子に負けないように、自分も父親の立派な跡継ぎになるために頑張る」という、「B子に負けないように」のひとことを聞き逃さなかったのだ。このあと、塗り箸屋の店先で正典と友春がかわす会話はしみじみと心に残るいい場面だった。友春さんのことも書きたいので、この場面のことはここまでで…

 

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2 コメント

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はじめまして。 (nagochan)
2007-11-30 01:24:20
はじめまして。
朝の「ちりとてちん」をこんなに真剣に観ている方がいるとは驚きました。
わたしもあのお父さんはちょっと浮いた存在と思っていましたが、近頃案外キーマンだなと思うようになってきました。
なんて、ほとんどボーッと見ているのですが・・・

明日から、違った見方を楽しめそうです。
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 nagochanさま、ようこそ当ぶろぐにお越し下さい... (因幡屋)
2007-12-01 22:19:35
 nagochanさま、ようこそ当ぶろぐにお越し下さいました。コメントありがとうございます。高校時代、現代国語の先生に「短編小説には無駄な言葉はない。」と言われ、ほんの短く、小さなひとつの言葉が伏線になっていたり、作者の思いを秘かに示していることなどを教わりました。朝の連ドラをみるとき、どうもそれを思い出すのでしょうか、ご指摘の通り真剣に、と言いますか前のめりに…更新が遅れがちなのですが、続けて書いてみたいと思っておりますので、どうかまた読んでやってくださいまし!
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