一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

再送:トランプ大統領が共同会見で為替に言及なら、市場急変も 注目された直前の財務長官発言

2025-02-07 14:59:32 | 経済

*写真を添付して再送しました。

7日の東京外為市場でドル/円が一時、2024年12月上旬以来となる150円台に下落した。市場の一部では、7日(日本時間8日未明)に行われる日米首脳会談後の共同会見で、トランプ米大統領が足元のドル/円について「円安が進み過ぎている」などのけん制発言をすれば、急速にドル安・円高が進行するかもしれないとの警戒感が浮上している。

 また、ベッセント米財務長官が6日のブルームバーグとのインタビューの中で、特定の国名を挙げていないものの、貿易黒字の要因として為替水準や金利水準の低さに言及していることに対しても、日米首脳会談の直前というタイミングでもあり、米国が日本に対して何らかの「注文」を出すのではないかとの思惑が市場関係者の間で出ている。筆者も為替や日銀の金融政策に関して、米国が何らかの意向を示した場合、市場が不連続に変化する可能性があると指摘したい。

 

 <ドル/円は一時150円台に、注目されたBBGのベッセント米財務長官インタビュー>

 7日午前にドル/円は一時、150.958円まで下落した。6日の当欄で指摘した日銀の田村直樹審議委員の講演内容を材料に日銀の次の利上げが前倒しされるとの思惑や、ターミナルレート(利上げの最終到達点)が0.75%にとどまるとの見方が修正を余儀なくされるのではないかとの観測から、ドル売り・円買いが出やすい地合いになっていたという。

 複数の市場関係者によると、ベッセント財務長官のブルームバーグインタビューの内容にも先行きを展望する上で、見逃すことができない要素が盛り込まれていたという。

 ブルームバーグの記事によると、ベッセント財務長官は多くの国が「大規模な黒字を蓄積しており、自由な形の貿易システムは存在しない」と指摘。為替レートがその一因となっている可能性があるとの見解を示すと同時に「金利抑制」が要因となっている国もあるとも述べた。ただ、特定の国名は挙げなかったという。

 

 <「金利抑制」は日本想定か、市場の一部に米財務長官は日銀の利上げ支持との見方>

 複数の市場関係者は、通貨安が貿易黒字の一因となっていると述べている際に想定されている国は、日本と中国ではないかと予想。「金利抑制」は日本を間接的に差している可能性があると指摘した。

 また、米財務省は5日、ベッセント長官と日銀の植田和男総裁がオンラインで会談し、緊密かつ生産的に協力することで一致したと公表した。そこでマクロ経済や金融に関する優先事項が共有されていると説明された。

 先の複数の市場関係者は、ブルームバーグとのインタビューで「金利抑制」に言及しているベッセント財務長官が、足元で150円台の推移となっているドル/円がドル安・円高方向に動くことが米国の対日貿易赤字を削減させることにつながるとの考え方を背景にして、日銀の行っている利上げを支持したり、利上げの継続に賛意を示すことがあったのではないか、と予想している。

 

 <トランプ氏が円安是正に言及なら、急速な円高進展も>

 筆者は、日米首脳会談後に発表される共同声明で、為替に関して特別な言及があるとは予想していないものの、会談後の共同会見でトランプ大統領に対して為替の質問が出た場合、日本側の想定を超えて足元の水準に言及し、円安をけん制したり円高方向にシフトすることが望ましいと発言する可能性はあると考える。

 その場合、NY市場での取引時間帯であれば、ドル/円は急速にドル安・円高方向にシフトすると予想する。また、共同会見の内容が取引終了後に伝わった場合は、翌週のオセアニア市場を皮切りに東京市場を表舞台としてドル安・円高が大幅に進行することもあるのではないか。

 複数の国内メディアの報道によると、共同声明には「日米関係の黄金時代を築く」との文言が盛り込まれ、生成AIや半導体開発などでの連携が強調され、日米安全保障条約5条の沖縄県・尖閣諸島への適用が再確認されるとみられている。

 だが、金融・資本市場の関係者が注視しているのは、やはり為替問題でトランプ大統領が何らかの発言をするのかどうか、発言した場合に日本の対米貿易黒字の削減と関連付けられるのか、という点だろう。

 8日未明にNHKが共同会見を中継した場合、かなりの市場関係者が視聴するのではないかと予想する。

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田村審議委員が「25年度後半に1%まで利上げ」と言及、物価上振れリスク意識

2025-02-06 11:07:30 | 経済

 日銀の田村直樹審議委員は6日午前に長野県松本市で講演し、2025年度後半には少なくとも1%まで政策金利を引き上げておくことが必要との見解を表明した。田村氏は昨年9月に2026年度までの展望リポート見通し期間後半にかけて1%まで引き上げることが適切との考えを示しており、1%までの引き上げ時期が前倒しされた。ドル/円はこの発言を受けて一時、151円後半までドル安・円高が進んだ。

 田村審議委員の講演では、経済や物価に対する評価が全般に強く、物価の上振れリスクにも言及しつつ、次の利上げが実施された場合の0.75%の水準も実質金利の観点で見れば大幅にマイナスと指摘。タカ派色が鮮明になっている。従来からタカ派的な見解が目立っていたとはいえ、経済・物価に対する認識は植田和男総裁がこれまで示してきた見解と重なっており、マーケットは一段と日銀利上げの織り込みの前倒しを強いられると予想する。

 

 <強い経済・物価に対する評価>

 田村審議委員の講演の中で注目されたのは、金融政策運営の前提となる経済・物価に対する評価が強かったことだ。

 まず、企業や家計の予想物価上昇率はしっかりと高まっており「概ね2%程度の水準に達している」と指摘した。そこに企業の賃金・価格設定行動の変化、人手不足を背景とした供給力不足の状況が加わり、中小企業まで含めた賃上げの実績を確認できる2025年度後半には、「物価安定の目標」が実現したと判断できる状況に至る、と明言した。

 その上で「2025年度後半には、政策金利である短期金利は経済・物価に対して中立的な水準、すなわち名目の中立金利まで上昇していることが必要」との見解を打ち出した。

 

 <1%への利上げ、中小企業の賃上げ確認できれば25年10月の可能性も>

 田村審議委員は中立金利の水準を「最低でも1%程度だろうとみている」としており「2025年度後半には少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げておくことが、物価上振れリスクを抑え、物価安定の目標を持続的・安定的に達成するうえで必要」との見解に結びつくとしている。

 2025年度後半というのは幅が広いが、「中小企業まで含めた賃上げの実績を確認できる」時期という説明を素直に受け取れば、2025年10月にも1%に利上げすることが必要と読み替えが可能だと筆者は考える。

 

 <企業の賃上げ設定行動の変化、植田総裁と同じ見解>

 もし、25年10月に1%という利上げパスが描かれているのであれば、次の0.75%への利上げの時期は次の次の4月30日ー5月1日の金融政策決定会合という可能性が高まるのではないか。マーケットの足元における利上げ織り込みは20%にとどまっているが、今後の日銀サイドの情報発信や経済データの内容によって、織り込み度合いが一段と高まる可能性が、この日の田村審議委員の講演で強まってきたと予想する。

 また、タカ派の田村氏の発言だから、日銀の多数意見とはかい離しているとの声が市場には多くみられるが、利上げパスの前提になる経済・物価に関する評価は、すでに植田総裁が会見や国会での答弁などで示している内容と大きな差はない。

 例えば、企業の賃金設定行動に関し「人を確保できる水準の賃金を設定せざるを得ないという状況がまずあり、それを所与として経営を考える、具体的には、価格転嫁や効率化、事業や企業の再編を含めたビジネスモデル変革などを、考えなければならない時代に入ってきている」との見方は、すでに植田総裁が1月会合後の会見で同じ趣旨の発言を行っている。

 「物価安定の目標」の実現に向けてオントラックで進んでおり「目標が実現する確度は、引き続き高まってきていると判断している」という部分も、植田総裁が繰り返し発言している。つまり、タカ派とみられる利上げパスの前提になる経済・物価の判断で田村審議委員の考え方が多数意見とほぼ同じであるなら、自ずとその結論部分も多数意見の中に包含される可能性がある、とみるのは合理的な推論だと考える。

 

 <中立金利、1%以上という表現の含意>

 ターミナルレート(利上げの最終到達地点)に関連し、田村審議委員は中立的な金利水準について「最低でも1%以上だろう」と述べつつ、「政策金利を0.75%に引き上げたとしても、引き続き実質金利は大幅にマイナスであり、経済を引き締める水準にはまだ距離がある」と語った。

 0.75%でも実質金利は大幅にマイナスとの表現から見ると、田村審議委員の想定している中立金利は「1%以上」の表現で形式的にありえる1%ではなく、それより上の水準ではないか、と筆者は推論する。

 

 <マーケットは慎重に判断、求められる「繊細さ」>

 同時に「長きにわたってほとんど金利がない世界が続いてきたわが国においては、経済主体が金利にどのように反応するか、予断を持たずに注意深くみていく必要がある」とも指摘し、必要以上に利上げに前傾姿勢となっているわけではない、との見解も示している。

 いったん151円台に下落したドル/円はその後、152円台に戻し、長期金利は1.280%で前日から横ばいで推移している。市場の利上げ織り込みは、6日正午の段階で3月会合がゼロ%、4月30日ー5月1日の会合が20%、6月会合が46%、7月会合が78%、9月会合が100%と前日からの変化率は小幅だ。市場は、日銀の政策スタンスを慎重に推し量ろうとしているようだ。マーケットと日銀の対話は、従来にも増して繊細さを伴うデリケートなやり取りになりそうだ。

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トランプ大統領が共同会見で為替に言及なら、市場急変も 注目された直前の財務長官発言

2025-02-07 13:19:06 | 経済

 7日の東京外為市場でドル/円が一時、2024年12月上旬以来となる150円台に下落した。市場の一部では、7日(日本時間8日未明)に行われる日米首脳会談後の共同会見で、トランプ米大統領が足元のドル/円について「円安が進み過ぎている」などのけん制発言をすれば、急速にドル安・円高が進行するかもしれないとの警戒感が浮上している。

 また、ベッセント米財務長官が6日のブルームバーグとのインタビューの中で、特定の国名を挙げていないものの、貿易黒字の要因として為替水準や金利水準の低さに言及していることに対しても、日米首脳会談の直前というタイミングでもあり、米国が日本に対して何らかの「注文」を出すのではないかとの思惑が市場関係者の間で出ている。筆者も為替や日銀の金融政策に関して、米国が何らかの意向を示した場合、市場が不連続に変化する可能性があると指摘したい。

 

 <ドル/円は一時150円台に、注目されたBBGのベッセント米財務長官インタビュー>

 7日午前にドル/円は一時、150.958円まで下落した。6日の当欄で指摘した日銀の田村直樹審議委員の講演内容を材料に日銀の次の利上げが前倒しされるとの思惑や、ターミナルレート(利上げの最終到達点)が0.75%にとどまるとの見方が修正を余儀なくされるのではないかとの観測から、ドル売り・円買いが出やすい地合いになっていたという。

 複数の市場関係者によると、ベッセント財務長官のブルームバーグインタビューの内容にも先行きを展望する上で、見逃すことができない要素が盛り込まれていたという。

 ブルームバーグの記事によると、ベッセント財務長官は多くの国が「大規模な黒字を蓄積しており、自由な形の貿易システムは存在しない」と指摘。為替レートがその一因となっている可能性があるとの見解を示すと同時に「金利抑制」が要因となっている国もあるとも述べた。ただ、特定の国名は挙げなかったという。

 

 <「金利抑制」は日本想定か、市場の一部に米財務長官は日銀の利上げ支持との見方>

 複数の市場関係者は、通貨安が貿易黒字の一因となっていると述べている際に想定されている国は、日本と中国ではないかと予想。「金利抑制」は日本を間接的に差している可能性があると指摘した。

 また、米財務省は5日、ベッセント長官と日銀の植田和男総裁がオンラインで会談し、緊密かつ生産的に協力することで一致したと公表した。そこでマクロ経済や金融に関する優先事項が共有されていると説明された。

 先の複数の市場関係者は、ブルームバーグとのインタビューで「金利抑制」に言及しているベッセント財務長官が、足元で150円台の推移となっているドル/円がドル安・円高方向に動くことが米国の対日貿易赤字を削減させることにつながるとの考え方を背景にして、日銀の行っている利上げを支持したり、利上げの継続に賛意を示すことがあったのではないか、と予想している。

 

 <トランプ氏が円安是正に言及なら、急速な円高進展も>

 筆者は、日米首脳会談後に発表される共同声明で、為替に関して特別な言及があるとは予想していないものの、会談後の共同会見でトランプ大統領に対して為替の質問が出た場合、日本側の想定を超えて足元の水準に言及し、円安をけん制したり円高方向にシフトすることが望ましいと発言する可能性はあると考える。

 その場合、NY市場での取引時間帯であれば、ドル/円は急速にドル安・円高方向にシフトすると予想する。また、共同会見の内容が取引終了後に伝わった場合は、翌週のオセアニア市場を皮切りに東京市場を表舞台としてドル安・円高が大幅に進行することもあるのではないか。

 複数の国内メディアの報道によると、共同声明には「日米関係の黄金時代を築く」との文言が盛り込まれ、生成AIや半導体開発などでの連携が強調され、日米安全保障条約5条の沖縄県・尖閣諸島への適用が再確認されるとみられている。

 だが、金融・資本市場の関係者が注視しているのは、やはり為替問題でトランプ大統領が何らかの発言をするのかどうか、発言した場合に日本の対米貿易黒字の削減と関連付けられるのか、という点だろう。

 8日未明にNHKが共同会見を中継した場合、かなりの市場関係者が視聴するのではないかと予想する。

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