7日の東京外為市場でドル/円が一時、2024年12月上旬以来となる150円台に下落した。市場の一部では、7日(日本時間8日未明)に行われる日米首脳会談後の共同会見で、トランプ米大統領が足元のドル/円について「円安が進み過ぎている」などのけん制発言をすれば、急速にドル安・円高が進行するかもしれないとの警戒感が浮上している。
また、ベッセント米財務長官が6日のブルームバーグとのインタビューの中で、特定の国名を挙げていないものの、貿易黒字の要因として為替水準や金利水準の低さに言及していることに対しても、日米首脳会談の直前というタイミングでもあり、米国が日本に対して何らかの「注文」を出すのではないかとの思惑が市場関係者の間で出ている。筆者も為替や日銀の金融政策に関して、米国が何らかの意向を示した場合、市場が不連続に変化する可能性があると指摘したい。
<ドル/円は一時150円台に、注目されたBBGのベッセント米財務長官インタビュー>
7日午前にドル/円は一時、150.958円まで下落した。6日の当欄で指摘した日銀の田村直樹審議委員の講演内容を材料に日銀の次の利上げが前倒しされるとの思惑や、ターミナルレート(利上げの最終到達点)が0.75%にとどまるとの見方が修正を余儀なくされるのではないかとの観測から、ドル売り・円買いが出やすい地合いになっていたという。
複数の市場関係者によると、ベッセント財務長官のブルームバーグインタビューの内容にも先行きを展望する上で、見逃すことができない要素が盛り込まれていたという。
ブルームバーグの記事によると、ベッセント財務長官は多くの国が「大規模な黒字を蓄積しており、自由な形の貿易システムは存在しない」と指摘。為替レートがその一因となっている可能性があるとの見解を示すと同時に「金利抑制」が要因となっている国もあるとも述べた。ただ、特定の国名は挙げなかったという。
<「金利抑制」は日本想定か、市場の一部に米財務長官は日銀の利上げ支持との見方>
複数の市場関係者は、通貨安が貿易黒字の一因となっていると述べている際に想定されている国は、日本と中国ではないかと予想。「金利抑制」は日本を間接的に差している可能性があると指摘した。
また、米財務省は5日、ベッセント長官と日銀の植田和男総裁がオンラインで会談し、緊密かつ生産的に協力することで一致したと公表した。そこでマクロ経済や金融に関する優先事項が共有されていると説明された。
先の複数の市場関係者は、ブルームバーグとのインタビューで「金利抑制」に言及しているベッセント財務長官が、足元で150円台の推移となっているドル/円がドル安・円高方向に動くことが米国の対日貿易赤字を削減させることにつながるとの考え方を背景にして、日銀の行っている利上げを支持したり、利上げの継続に賛意を示すことがあったのではないか、と予想している。
<トランプ氏が円安是正に言及なら、急速な円高進展も>
筆者は、日米首脳会談後に発表される共同声明で、為替に関して特別な言及があるとは予想していないものの、会談後の共同会見でトランプ大統領に対して為替の質問が出た場合、日本側の想定を超えて足元の水準に言及し、円安をけん制したり円高方向にシフトすることが望ましいと発言する可能性はあると考える。
その場合、NY市場での取引時間帯であれば、ドル/円は急速にドル安・円高方向にシフトすると予想する。また、共同会見の内容が取引終了後に伝わった場合は、翌週のオセアニア市場を皮切りに東京市場を表舞台としてドル安・円高が大幅に進行することもあるのではないか。
複数の国内メディアの報道によると、共同声明には「日米関係の黄金時代を築く」との文言が盛り込まれ、生成AIや半導体開発などでの連携が強調され、日米安全保障条約5条の沖縄県・尖閣諸島への適用が再確認されるとみられている。
だが、金融・資本市場の関係者が注視しているのは、やはり為替問題でトランプ大統領が何らかの発言をするのかどうか、発言した場合に日本の対米貿易黒字の削減と関連付けられるのか、という点だろう。
8日未明にNHKが共同会見を中継した場合、かなりの市場関係者が視聴するのではないかと予想する。
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