評価:★★★★[4/5]
惜しい!終盤の『キルビル』風味のアクションは蛇足と言える。
ジャッキー・チェンからアクションを封印した
初めての監督として後に語り継がれるだろう・・・って(大袈裟やね)
しかし、その心意気には、何処か新生ジャッキーを
誕生させるという気がしてならない。
本作は、
ハリウッド映画に対抗できるアジア映画のレベルアップとして
ジャッキー・チェンが立ち上げた“アジアン・プロジェクト”の
第一回作品であるということだそうです。
◇
恋人のシュシュを追って日本に密航してきた鉄頭は、
新宿・歌舞伎町にたどりつき、友人の阿傑の元に身を寄せる。
その後、同郷の友人たちと共に日雇いの仕事をしたり、
警察に追われる中で刑事の北野と知り合いになったりしたが、
シュシュは見つけられずにいた。
そんな折、ナイトクラブでの仕事中に
幹部ヤクザ・江口の側にいる美しい女性に目を奪われる。
彼の妻だというその女は、
なんと鉄頭の恋人のはずのシュシュだった……。
◇
それまでのジャッキー映画とはひと味ちがう。
シリアス・ヒューマン系の映画は過去にあることはあったが
それでも結局は自慢のカンフーで決着を付けるのが定石であった。
だが、今回に限っては、完全に普通の人であり
むしろ敢えて普通に見せようとしているのか、歩く姿は
何処となく『レインマン』のダスティン・ホフマンみたいだった。
日本に留学し消息を絶った恋人の安否を確かめるため
中国から密航して来た男が日本の裏社会に関わって行き
次第に人生そのものを破滅させていく悲しいドラマである。
ドラマが実に良く出来ている。
鉄頭(ジャッキー)の中国での生活ぶりや
密航して来てからの日本で生きていくために
仲間たちと共に日雇い労働などの職探しなどが
段階を追って丁寧に説明されているので、とても分かりやすい。
こういった説明部分でクドく感じてしまうこともなく
それなりにテンポが良いので、グイグイと画面に吸い寄せられる。
また、映画としてでなく実際に密航してきた
彼らの行動が、本来こういう展開で行われていたのかなと
想像させる部分では勉強になった感じである。
偶然に街で見つけたシュシュはヤクザの妻となっていた。
ここで互いにその存在に気が付くが、自分らの立場上
感情を押し殺し、見つめ合うことしか出来なかったのだ。
この辺りから、ただのアクション映画ではないと思わせる。
超人的な強さを持っていないから、その場でシュシュを
力づくで奪い去ることが出来ないところがリアルで良いんですね^^
◇
これは深作欣二監督の『仁義なき戦い』の第一作を
何処となく匂わせているかなという感じだ。
もちろんジャッキーの立ち位置としては主役の菅原文太である。
新宿を取り仕切るヤクザ三和会の幹部・江口(加藤雅也)と
ひょんなことから知り合い、また、新宿警察の腕利き刑事とも
あることがきっかけで、貸し借りを共有する関係となる。
そして中国人不法移民の集団が勢力となり権力へと移行して行く。
密入国者として日陰で暮していた男が、次第に
実力を付けて行き、三和会の枝葉として歌舞伎町一帯を
任されるようになっていくのだが、そこはヤクザの世界、
三和会のなかに中国人の出世に対する不満などが出て
敵対する組織への寝返りや裏切りなどで予測不可能な
展開へと物語は突き進んでいくのだ。
基本的には鉄頭(ジャッキー)の仲間を想うやさしい
気持は最後まで維持されており、自分が大物になったことへの
おごりなどは一切見せないところが共感を呼ぶのだろう。
いちばん可愛がっていた弟分の阿傑(ダニエル・ウー)の
“ある失敗”がもとで、成功を収めていた鉄頭(ジャッキー)の
事業すべてを崩壊へと向けさせてしまう皮肉な運命が
なんとも切ないのである。
冒頭から中盤以降まで一気に魅せてもらえますが
終盤からラストにかけては、チョット締めを急ぎ過ぎたのか
余りにも突飛な展開になってしまったことが悔やまれる。
特に、三和会の会長となった・江口(加藤雅也)の
行動にはチョット納得できない軽さが目立ったのが惜しい。
おまけ)
・90年代の新宿・歌舞伎町を徹底リサーチのもと
外国人監督なのに、よくぞここまでリアルな日本を
描いてくれたものだと感心するばかりである。
・北野刑事(竹中直人)が良い味を出してくれています。
下水道で密航者を追う場面で溺れるなんて(爆)
逃げてるのに、それを見て助けた鉄頭(ジャッキー)も
誠実過ぎる感じがして、珍しいシーンとして映った部分です。
----------------------------------------------------------
監督:イー・トンシン
脚本:イー・トンシン/チュン・ティンナム
撮影:北信康
音楽:ピーター・カム
出演:ジャッキー・チェン/竹中直人/ダニエル・ウー/加藤雅也/
ファン・ビンビン/倉田保昭/峰岸徹/長門裕之/
『新宿インシデント』
惜しい!終盤の『キルビル』風味のアクションは蛇足と言える。
ジャッキー・チェンからアクションを封印した
初めての監督として後に語り継がれるだろう・・・って(大袈裟やね)
しかし、その心意気には、何処か新生ジャッキーを
誕生させるという気がしてならない。
本作は、
ハリウッド映画に対抗できるアジア映画のレベルアップとして
ジャッキー・チェンが立ち上げた“アジアン・プロジェクト”の
第一回作品であるということだそうです。
◇
恋人のシュシュを追って日本に密航してきた鉄頭は、
新宿・歌舞伎町にたどりつき、友人の阿傑の元に身を寄せる。
その後、同郷の友人たちと共に日雇いの仕事をしたり、
警察に追われる中で刑事の北野と知り合いになったりしたが、
シュシュは見つけられずにいた。
そんな折、ナイトクラブでの仕事中に
幹部ヤクザ・江口の側にいる美しい女性に目を奪われる。
彼の妻だというその女は、
なんと鉄頭の恋人のはずのシュシュだった……。
◇
それまでのジャッキー映画とはひと味ちがう。
シリアス・ヒューマン系の映画は過去にあることはあったが
それでも結局は自慢のカンフーで決着を付けるのが定石であった。
だが、今回に限っては、完全に普通の人であり
むしろ敢えて普通に見せようとしているのか、歩く姿は
何処となく『レインマン』のダスティン・ホフマンみたいだった。
日本に留学し消息を絶った恋人の安否を確かめるため
中国から密航して来た男が日本の裏社会に関わって行き
次第に人生そのものを破滅させていく悲しいドラマである。
ドラマが実に良く出来ている。
鉄頭(ジャッキー)の中国での生活ぶりや
密航して来てからの日本で生きていくために
仲間たちと共に日雇い労働などの職探しなどが
段階を追って丁寧に説明されているので、とても分かりやすい。
こういった説明部分でクドく感じてしまうこともなく
それなりにテンポが良いので、グイグイと画面に吸い寄せられる。
また、映画としてでなく実際に密航してきた
彼らの行動が、本来こういう展開で行われていたのかなと
想像させる部分では勉強になった感じである。
偶然に街で見つけたシュシュはヤクザの妻となっていた。
ここで互いにその存在に気が付くが、自分らの立場上
感情を押し殺し、見つめ合うことしか出来なかったのだ。
この辺りから、ただのアクション映画ではないと思わせる。
超人的な強さを持っていないから、その場でシュシュを
力づくで奪い去ることが出来ないところがリアルで良いんですね^^
◇
これは深作欣二監督の『仁義なき戦い』の第一作を
何処となく匂わせているかなという感じだ。
もちろんジャッキーの立ち位置としては主役の菅原文太である。
新宿を取り仕切るヤクザ三和会の幹部・江口(加藤雅也)と
ひょんなことから知り合い、また、新宿警察の腕利き刑事とも
あることがきっかけで、貸し借りを共有する関係となる。
そして中国人不法移民の集団が勢力となり権力へと移行して行く。
密入国者として日陰で暮していた男が、次第に
実力を付けて行き、三和会の枝葉として歌舞伎町一帯を
任されるようになっていくのだが、そこはヤクザの世界、
三和会のなかに中国人の出世に対する不満などが出て
敵対する組織への寝返りや裏切りなどで予測不可能な
展開へと物語は突き進んでいくのだ。
基本的には鉄頭(ジャッキー)の仲間を想うやさしい
気持は最後まで維持されており、自分が大物になったことへの
おごりなどは一切見せないところが共感を呼ぶのだろう。
いちばん可愛がっていた弟分の阿傑(ダニエル・ウー)の
“ある失敗”がもとで、成功を収めていた鉄頭(ジャッキー)の
事業すべてを崩壊へと向けさせてしまう皮肉な運命が
なんとも切ないのである。
冒頭から中盤以降まで一気に魅せてもらえますが
終盤からラストにかけては、チョット締めを急ぎ過ぎたのか
余りにも突飛な展開になってしまったことが悔やまれる。
特に、三和会の会長となった・江口(加藤雅也)の
行動にはチョット納得できない軽さが目立ったのが惜しい。
おまけ)
・90年代の新宿・歌舞伎町を徹底リサーチのもと
外国人監督なのに、よくぞここまでリアルな日本を
描いてくれたものだと感心するばかりである。
・北野刑事(竹中直人)が良い味を出してくれています。
下水道で密航者を追う場面で溺れるなんて(爆)
逃げてるのに、それを見て助けた鉄頭(ジャッキー)も
誠実過ぎる感じがして、珍しいシーンとして映った部分です。
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監督:イー・トンシン
脚本:イー・トンシン/チュン・ティンナム
撮影:北信康
音楽:ピーター・カム
出演:ジャッキー・チェン/竹中直人/ダニエル・ウー/加藤雅也/
ファン・ビンビン/倉田保昭/峰岸徹/長門裕之/
『新宿インシデント』
トラックバックありがとうございました。(*^-^*
外国人監督が日本を描くとステレオタイプになってしまう事が多いけど、
この作品は日本文化に関しては独自の視点で的確に描いていましたね。
加藤雅也はルックスは若く見えるけど46歳になるので
最近は年齢相応の渋い役や老け役にも挑戦しています。
ただ、以前は映画中心だったけど、近年はドラマが増え、舞台にも進出しているので、
映画の出演本数が減ってきているのが残念です・・・。
こちらこそありがとうございます^^
>この作品は日本文化に関しては独自の視点で的確に描いていましたね。
暴対法ニュース辺りで、ボロが出るぞ出るぞ~と思ってましたが
意外や、綻びは見受けられませんでした^^
ただ、シュシュの日本語は聴いてて辛かったですけどね^^;
>加藤雅也はルックスは若く見えるけど46歳になるので
なるほど~!そうだったのですね。
背は高いしアジアが誇るスターとしての素質は十分ですよね^^
中国語や韓国語など話せるようになれば金城武くんにはないアウトローな役が回ってくるかもしれないですね^^
ブラピやジョニデと同い年ということで、何か通じる部分がありそうです。
これはスゴい!
倉田さん、峰岸さんともに、なかなか良い演技をされてました。
特に峰岸さんは、これが遺作となったわけですから
追悼の意をこめて鑑賞させてもらいました^^
倉田さんってぜんぜん歳を取ってないんですよ~
あの若さはどこから来るものなんでしょう^^;
>愛知出身のカンフー役者がいましたなぁ。息子も俳優やってたけど
んんん?
ショー&ケイン親子じゃないことは確かですね^^
この親子も見ないですね~
アメリカで教室でも開いているんでしょうね^^
この人です。息子の名前も出てます。
http://www.budo.co.jp/
息子さんは可也の有名人ですよね^^
最近では『俺は、君のためにこそ死ににいく』で
自爆した少尉を演じており、観てきました。
逆に驚いたのは、こんなに大人しそうな息子に対して
父の個性豊かなキャラというところです。