それは深夜の12時半位のことだった。静寂の闇を引き裂くように、私に腹痛が襲いかかった。
まさにそれは、突然のゲリラの襲撃だった。
私は腹を押さえて急いで汲み取り式のトイレ中に立てこもった。
10分もしただろうか、ゲリラは諦めたのか元の静かさに戻った。
やれやれと安心して戦い済んだ汲み取り式のトイから出て、ベットに入った。
眠れないまま30分ぐらいであろうか、ぼんやりしていると、またゲリラの襲撃が突然始まった。
もう私が持っている紙は底をつきそうだった!これ位の量では、とても間に合わないと判断し、私は急いで車に乗り込み、1キロ先の神社の簡易水洗のトイレへと車を走らせた。
頼む!間に合ってくれ!お願いだー!
必死の思いでスピードを上げ、ゲリラの襲撃から逃げようとした。
遠くに明かりが見え、ホッとするもゲリラはもうそこまできている。
もうダメかもしれない。
そう思った時、ウィンド会員の面々のあざ笑うような顔が脳裏にうかんだ。
私はやっとの思いで神社のトイレに立てこもりゲリラとの戦いが20分程続いた。
一旦何とかゲリラを征し、バンガローに戻った。
でもいつやってくるかわからないゲリラの襲撃に安心できずにいた。
時折、お尻の辺りに、ゲリラの予感を感じながら不安と恐怖に駆られながら時を過ごした。
もう紙は使い果たしたという不安におののき、私は迷った。
ここでゲリラの襲撃に備えるか?
1キロ先にある先程の神社のトイレに身をよせるべきなのか?
それとも、7キロ先にある長浜の水洗トイレに逃げ込むか?
私は重大な決断に迫られていた。
時は既に深夜2時を回っている。
ここで討ち死にするより、もっと戦いやすい場所に移動することが賢明だと言う決断に至った。
しかし神社にすべきか、長浜にすべきか迷う。
私は決断した長浜に行くべきだ!
なぜなら、神社の闇に灯る提灯が私の恐怖を煽るだろう。
まして深夜の2時過ぎ、白装束をまとって、手には、わら人形を持った女が神社の大木に五寸釘をわら人形に打ち付ける姿が頭をよぎった。
恐怖が私を包み込む。
私の生き残る道は長浜しかない。
ゲリラの襲撃に対応できるのはあそこしかない。
そう決断した私は、また急いで車に乗り込み長浜に向かった。
幸い、進軍中にゲリラの襲撃はなかった。
長浜について、先ず確認したのは、トイレットペーパーだ。
いざと言うとき、これがなければ戦いにならない。
今付いているものと、予備があることを確認し車にもどった。
寝袋の上に掛け布団をかけ、万全の寒さ対策をしてゲリラの襲撃に備えた。
来るなら来い!迎え打ってやると腹をきめた。心が座ればもう何も怖くない!
直ぐ側には逃げ込むトイレの壕がある。
こうして、私はいつしか深い眠りについた。
朝、目が覚めると猪苗代湖が朝陽に照らされ、眩しいほどに輝いていた。
あーやっとゲリラとの戦いが終わった。
私は朝の光を全身にあびて、昨夜のゲリラを征したという自信と私が決断した行動が正しかったのだと思った。
こうして、私は、また一つ大きく成長したんだと言う満足感に満ち溢れていた。
眩しいほどに輝く猪苗代湖を眺めながら
私はタバコにをつけた。
なんとも言われない程の清々しい朝だった。