じゅにあ★Schutzstaffel II

キン肉マンの2次創作。小説載せてます。(以後更新予定無し)

檻(2)

2019-06-13 22:01:00 | 小説/檻
 
 
 
だか、頭首の”職務”とは、そもそもどういうものなのだろう。
 
 
誰も納得のいく答えを与えてはくれないし、いくら考えても良く分からない。
 
そしてファーターは何をどうしていたのかも、悲しいかな、俺は全然知らなかった。
 
 
 
 
 
 
徽章に触れたままでも人間になれる事を知ったのは半年程前だった。
 
それまでは、わざわざ体から遠ざけたり近づけたりしていた。だが色々なデータから、何かを導き出しでもしたのだろうか。
言われるまま試す事半日。俺はめでたくそのコツを掴んだ。
 
 
ーーくだらない・・・一発芸じゃあるまいし。
 
 
超人から人間へ。逆に人間から超人へ。
上手く説明出来ないが、それぞれ呼吸と力の入れ方に、ちょっとした違いがある。
 
もちろん手っ取り早いのは距離を取る事だ。
集中し、少しずつ波長を合わせていかなければ、徽章を持ったままの変化は上手くいかない。
 
 
だがここの人間達は、どうやら人間と超人、その変化の過程に一番興味があるようで、時間が必要な程彼等にとっては好都合のようだった。
 
 
そして、いつの間にやら設置されたのが例の信号もどき。
わざわざ口で言わなくても、青で人間、赤で超人と、効率良く作業が進められるようになった訳だ。
 
 
 
徽章を手に超人になるのは、人間になるよりずっと簡単ではあるが、体への負担はかなり大きい。
無理矢理何かを押し込まれ、膨らませられるような感覚。
毎回、熱が上がり汗が滲んでくる。
 
今、体から伸びた管を通る血は、人間のそれなのか違うのか。
変化の瞬間、色が変わっていたらちょっと面白いような気もするが、目を閉じている為見る事も出来ない。
 
 
 
ようやく変化も一段落し、俺は目を開け徽章を握っていた手の力を抜く。
 
息を整えながら、右側のガラスにぼんやり写る自分の肩を眺める。流石にそこはまだ白いままだ。
そしてそのガラスを隔てた向こうでは、数人の白衣を着た男達がモニターを指差しながら何かをしきりに喋っている。
 
 
ーーまるで動物園だな。
 
 
拒否する理由も権利も、俺には無い。
だから言われれば従うまでなのだが、この”職務”がどんどん過激になっている事だけは、何となく引っかかっている。
 
 
最初は身体測定の延長線みたいなものだった。それが健康診断のようになり、それ以上になり・・・。
体に繋がれる管やコードも増える一方だ。
 
それに自分の格好にしても、以前は腕捲り程度で済んでいたのに、今や上半身まるっと脱がされる始末。
 
 
このまま続くと、いつか俺は丸裸にされ、蛙の解剖さながら生きたまま腹を切られるんじゃないだろうか。
もしくは体全部バラバラにされて、瓶詰めにでもされてしまうんじゃないだろうか。
 
 
ーー少なくとも、ファーターはこんな事してなかっただろうな・・・。
 
 
そんな、普通に暮らしていればまず直面しないような類(たぐい)の不安を抱えていた。
 
 
 
 
 
 
喉が渇いてきた。
血を抜かれ、汗もかいたのだから当然の事だ。
 
 
水は手を伸ばせば届く位置にある。
ただ、飲むには手元のボタンを押し、ガラスの向こうに居る人間を呼び、許可を得る必要がある。
 
たかが水一杯にそんな手間を掛けるのも馬鹿らしい。それこそ、飼い犬ですら水は自由に飲めるだろうに。
 
だから結局、何時も諦める。
 
 
 
「・・・」
 
 
 
いや、水だけに限った話ではないのかもしれない。
 
 
日増しに俺は、諦める事が増えているような気がする。