じゅにあ★Schutzstaffel II

キン肉マンの2次創作。小説載せてます。(以後更新予定無し)

檻(3)

2019-06-13 22:00:00 | 小説/檻
 
 
 
耐える事と諦める事は、外から見える様子は何となく似ているが、中身は全く違う。
 
耐える事の先には希望があると思う。
 
 
だが、という事は。
俺は本当のところ、諦める事が増えているのではなく、希望を失くしているのだろうか。
 
 
 
 
 
 
あの日、口煩(うるさ)い爺様達が持って来た書類には、実に様々な要項が所狭しと並んでいたが、唯一無かったのは、俺がその”職務”に携(たずさ)わる期限だった。
 
 
一瞬疑問には思った。
ただすぐに、決める必要などないなと思い直した。
 
 
ーー生き返ったからふりだしに戻ったのかもしれない。でも、殺さない限り俺は・・・。
 
 
何故ならきっと、自分は遠からず死ぬと思っていたから。
そして内情を知る爺様達も、それを知った上であれこれ画策したのだと思ったからだ。
 
 
だが、本来一番甘えてはいけないのが死だ。
生きている間は生きないといけないと思う。
 
 
なのに俺は、何処か期待した。
 
だから取り上げられてしまったのだろうと思っている。
 
 
 
生き返ってから、もう何年経っているのか正確には分からないーーというか、正直数えるのが怖い。
ただ、きっと、俺はまだまだ生きるのだろうという、根拠は無いがそんな予感はしている。
 
 
かつての仲間が与えてくれた体。
その、ちょっとしたズレのような違和感は、どうやら気のせいではなさそうだ。
 
 
諦める事が増えてきたのは、この体のせいかもしれない。
ただ、少なくとも一つ、今の体にとても感謝している事もある。
 
 
もしファーターから貰った体そのものだったとしたら、こんな風に人目に晒(さら)され管を繋がれるなど、屈辱で我慢ならなかったと思うし、最悪関わる人間全員殺していたかもしれない。
 
 
 
 
 
 
赤いランプが点いてから、もうどのくらい経ったのだろう。
時計も窓も無いこの部屋では知りようもない。
 
 
それどころか、今日の計測がいつ終わるのかさえ、俺は聞かされていない。
今夜は何の予定も無いから余計にだ。
 
ブザーが鳴ればまだ暫く続く。ガラスの横の扉が開けば終わりの可能性が高いのだが。
 
 
ーーまあ、予定があってもそれはそれで面倒なのだけど・・・。
 
 
 
 
 
 
俺に求められた”職務”。
その本質が自分で分からない以上何でもやると決めた一方で、絶対にやらないと決めた事も二つある。
 
 
一つは誰かを殺す事。
どれだけ必要だと言われても、”正義超人”という過去がある以上人に手を掛けた瞬間、自分が自分でなくなる気がするからだ。
 
そしてもう一つが子供を持たない事。
ただ、殺す事は比較的容易に諦めてもらえたが、こちらは未だに有形無形の圧力を受けている。
 
 
自分はきっと、ファーターのように我が子を愛せないーーという理由は絶対に理解されないだろうし、そもそも口にも出せない。
そして曖昧な態度を取る他ない俺は、”職務”で出席せざるを得ない社交の場で、血筋と外見だけは最高の女に、次々引き合わされていたのだった。
 
 
ーーいや・・・ちゃんと話せば、きっと皆優しい人だったんだろう。問題は結局、俺なんだ・・・。
 
 
一族の人間すらよく分からない俺に女を理解するなど、出来ないというより不可能に近い。
だからその点ではテリーもロビンも、キン肉マンですら、俺には雲の上の人に見える。
 
 
形さえ整えば情なんて要らないのかもしれない、と思った事もあるにはあった。
ただ何の興味もない相手を、人形のようにお飾りで側に置いておくのも何だか悪いような気がした。自分自身、お飾り頭首を自覚していたから、尚更そう思った。
 
 
だから俺はそういう社交場では、普段以上に無表情で無愛想を貫いていた。
 
 
 
それに今となっては、男と寝ている夫など、どんなに心の広い女だって嫌だろう。