鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
(2020年11月13日号)
*インド太平洋戦略、崩壊か?
米民主党の大統領候補であるバイデンが韓国の文大統領に電話で「韓国はインド太平洋の安全保障と繁栄の中心軸だ」と言った。「やっぱりバイデンさん、ボケとるな」と思うのは私ばかりではあるまい。
インド太平洋の中心軸は、誰が見たってインド洋と太平洋の接点である南シナ海だ。だからこそ菅総理は就任直後に、ベトナムとインドネシアを訪問し武器供与で合意したのだ。しかも同日、米国は台湾に空対地ミサイル135基を含む総額18億ドルの武器売却を決定した。
ところがバイデンさんは「韓国がインド太平洋の中心」という趣旨を述べた。文大統領は返事をしなかったという。いかに韓国人が世界中心史観だと言っても、インド太平洋の中心に位置していない事ぐらい、地球儀を見れば誰にも分る。文大統領も「バイデンさん、ボケとるな」と思ったに違いない。
実は韓国は日本が提唱している「自由で開かれたインド太平洋」構想への参加を表明していない。米豪印、東南アジア、カナダ、欧州までもが賛意を示す構想に賛意を示さないのは、韓国特有の反日主義があるためだ。
それが分かっているから、日米も韓国に強いて参加を求めていない。トランプに至っては在韓米軍の撤退まで考えている。ところがバイデンは逆で、韓国にひざまずいてでも米軍を駐留させ続けなければならないと考えている。
だからこそ「韓国がインド太平洋の中心」というような歯の浮くようなお世辞が飛び出すのだろう。だが笑ってばかりもいられない。バイデンの韓国重視の姿勢の裏側には台湾軽視の姿勢が隠れている。
もしバイデンが大統領になれば、トランプ政権が進めてきた台湾承認の動きは止まり、そして国防費が削減されるだろう。つまり米国の推進してきたインド太平洋戦略は崩壊する。そうなれば日本の提唱する自由インド太平洋構想は絵に描いた餅となろう。
大統領選は、トランプが法廷闘争を開始し、一部の州では再集計が始まっている。ロシアや中国が言う通り、選挙結果はまだ確定していない。前号でも述べた通り、バイデンになれば、日本は地獄だ。トランプになることを祈る他あるまい。