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拉致で覚醒した国民は今
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【阿比留瑠比の極言御免】
記者会見を見てあれほど泣けたことは、それ以前も以後もない。14日の 本紙掲載記事「陽炎(かげろう) 拉致問題の行方」(上)の写真で、20年前 の記憶がよみがえった。拉致被害者の横田めぐみさんの母、早紀江さんが 平成14年9月17日、政府からめぐみさんの死亡宣告を受けた後に臨んだ記 者会見の様子を写したものである。
「これまで長い間放置されてきた日本の若者たちの心の内を思ってくだ さい。私たちが力をあわせて闘ってきたことが、(拉致事件という)大変 なことを明るみに出した。これは日本にとっても、北朝鮮にとっても大事 なことであう」
この小泉純一郎首相の初めての北朝鮮訪問当日は、本社勤務だったため 現場にはいなかった。だが、テレビ画面を通してみても、涙ぐみながら訴 える早紀江さんの言葉に心が震えた。
[高揚していた小泉氏]
北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記が拉致を認め、後にデタラメと判明す るが拉致被害者8人の死亡を伝えてきたのである。これで、憲法9条がれ ば日本の平和は保たれているという平和ボケの時代は終わり、国民は厳し い国際社会の現実に目覚めだろう・・・とも感じたのだった。
ところが、平壌での小泉氏の記者会見の模様は違った。拉致被害者家族 が巻き起こした日本社会の怒りのうねりを、まるで感じ取っていないよう に見えた。
「(8人死亡は)誠に残念な報告であり、ご家族の気持ちを思うと、何 とも言いようがない。このようなことを二度と起こさないためにも、日朝 関係の改善を図っていく必要がある」
小泉氏は国民の怒りを共有するどころか、表情は明らかに高揚してい て、笑みさえ浮かべていた。日朝国交正常化に向けた確かな手応えを感 じ、満足感を覚えていたのだろう。
家族らと小泉氏との2つの記者会見に大きな落差を感じ、訪朝に同行し て、政府専用機で羽田空港に戻ってきた安倍晋三官房副長官に電話して伝 えた。
「小泉首相は会談は成功だと満足げでしたが、日本の空気は違う。首相 に厳しい視線が向けられている」
安倍氏は即座に「分かっている。私はそのことを踏まえた上で対応す る」と応じた。家族会との交流が深い安倍氏は、国内の反応がこうなるだ ろうことを首相官邸内でおそらくただ一人、正確に予想していた。
[謀略との新たな闘い]
安倍氏は翌18日朝、拉致被害者家族らに首脳会談の様子と結果を説明 し、深く頭を下げた。拉致被害者「救う会」の西岡力幹事(現会長)が尋 ねた。
「死亡の確認はしたんですか」
これに安倍氏が「確認はしていません。詳しい経緯は必ず調査させま す」と率直に答えたことで、悲嘆にくれていた家族ら関係者はわれに返っ た。西岡氏は後にこう振り返った。
「被害者8人死亡で『拉致事件は解決した』とする北朝鮮の謀略との新 たな闘いが、ここから始まった」
そして戦いは今も続くが、拉致事件で覚醒したかに見えた日本社会は再 びまどろみ始め、関心は薄れてきた。若い世代には当然、20年前の記憶は なく北朝鮮による非道な行為に対する怒りも十分、共有できているとは いえない。
早紀江さんは今月6日、報道陣の取材に対し、拉致事件で進展が見られ ない現状について語っている。
「いつまでたっても解決しない。言いようのないいらだちを強く感じる」
20年前に実感した国民の拉致事件に対する怒りと家族らへの共感を再び 取り戻し、解決を急がなければならないと切に思う。
拉致で覚醒した国民は今
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【阿比留瑠比の極言御免】
記者会見を見てあれほど泣けたことは、それ以前も以後もない。14日の 本紙掲載記事「陽炎(かげろう) 拉致問題の行方」(上)の写真で、20年前 の記憶がよみがえった。拉致被害者の横田めぐみさんの母、早紀江さんが 平成14年9月17日、政府からめぐみさんの死亡宣告を受けた後に臨んだ記 者会見の様子を写したものである。
「これまで長い間放置されてきた日本の若者たちの心の内を思ってくだ さい。私たちが力をあわせて闘ってきたことが、(拉致事件という)大変 なことを明るみに出した。これは日本にとっても、北朝鮮にとっても大事 なことであう」
この小泉純一郎首相の初めての北朝鮮訪問当日は、本社勤務だったため 現場にはいなかった。だが、テレビ画面を通してみても、涙ぐみながら訴 える早紀江さんの言葉に心が震えた。
[高揚していた小泉氏]
北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記が拉致を認め、後にデタラメと判明す るが拉致被害者8人の死亡を伝えてきたのである。これで、憲法9条がれ ば日本の平和は保たれているという平和ボケの時代は終わり、国民は厳し い国際社会の現実に目覚めだろう・・・とも感じたのだった。
ところが、平壌での小泉氏の記者会見の模様は違った。拉致被害者家族 が巻き起こした日本社会の怒りのうねりを、まるで感じ取っていないよう に見えた。
「(8人死亡は)誠に残念な報告であり、ご家族の気持ちを思うと、何 とも言いようがない。このようなことを二度と起こさないためにも、日朝 関係の改善を図っていく必要がある」
小泉氏は国民の怒りを共有するどころか、表情は明らかに高揚してい て、笑みさえ浮かべていた。日朝国交正常化に向けた確かな手応えを感 じ、満足感を覚えていたのだろう。
家族らと小泉氏との2つの記者会見に大きな落差を感じ、訪朝に同行し て、政府専用機で羽田空港に戻ってきた安倍晋三官房副長官に電話して伝 えた。
「小泉首相は会談は成功だと満足げでしたが、日本の空気は違う。首相 に厳しい視線が向けられている」
安倍氏は即座に「分かっている。私はそのことを踏まえた上で対応す る」と応じた。家族会との交流が深い安倍氏は、国内の反応がこうなるだ ろうことを首相官邸内でおそらくただ一人、正確に予想していた。
[謀略との新たな闘い]
安倍氏は翌18日朝、拉致被害者家族らに首脳会談の様子と結果を説明 し、深く頭を下げた。拉致被害者「救う会」の西岡力幹事(現会長)が尋 ねた。
「死亡の確認はしたんですか」
これに安倍氏が「確認はしていません。詳しい経緯は必ず調査させま す」と率直に答えたことで、悲嘆にくれていた家族ら関係者はわれに返っ た。西岡氏は後にこう振り返った。
「被害者8人死亡で『拉致事件は解決した』とする北朝鮮の謀略との新 たな闘いが、ここから始まった」
そして戦いは今も続くが、拉致事件で覚醒したかに見えた日本社会は再 びまどろみ始め、関心は薄れてきた。若い世代には当然、20年前の記憶は なく北朝鮮による非道な行為に対する怒りも十分、共有できているとは いえない。
早紀江さんは今月6日、報道陣の取材に対し、拉致事件で進展が見られ ない現状について語っている。
「いつまでたっても解決しない。言いようのないいらだちを強く感じる」
20年前に実感した国民の拉致事件に対する怒りと家族らへの共感を再び 取り戻し、解決を急がなければならないと切に思う。