「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)5月31日(水曜日)
通巻第7774号 <前日発行>
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ウクライナ政府は中国製監視カメラをまだ使っている
軍事データと情報は中国からロシアへ転送された形跡が濃厚だ
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欧米は「国家安全保障上のリスク」を理由に中国製の監視カメラの使用を公共機関では禁止している。監視カメラの二大メーカーはハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)とダーファテクノロジー(浙江大華技術)である。
ところが、ウクライナは中国製監視カメラを使用している。つまり中国とロシアは、ウクライナ全土の監視カメラを通じて総ての動きを知ることが可能である。
ロシアはキエフなどをミサイルで攻撃したが、数時間以内に、オンライン監視カメラで撮影されたキエフの映像がロシアに掌握されていた。映像はキエフの対空防御に関する機密情報、防空ミサイルの数と種類、おおよその発射領域がロシアに筒抜けとなった。
2022年2月、クリストファー・レイFBI長官が議会で証言した。
「中国関連の防諜を調査中だが案件は二千件以上だ。中国は性質と規模の点で西側とは根本的に異なる方法で運営されている。あらゆる適切な技術的手段が情報検索に使用されている。今日の世界で、敵対的な政府がインフラや個々のデバイスを侵害する可能性ほど不気味な見通しはない。中国にはプライバシー保護がまったくない」。
2016年、米国のジャーナリストでサイバーセキュリティの専門家であるブライアン・クレブスのウッブサイトに、遠隔制御されてDDoSの大規模な攻撃が仕掛けられ、ダーファのカメラとビデオレコーダーだったことが判明した。
2017年、ダーファのカメラとビデオレコーダーに「バックドア」が発見された。これはブラウザを介してユーザー名とパスワードのデータベースをリモートで読み込むことが可能な「トロイの木馬」だったのである。
2022年、ハイクビジョンのカメラの認証情報がロシアで売られた。ハイクビジョンとダーファのカメラはハッキングが発生するたびに登場する。
2022年二月にロシアのウクライナ侵攻が開始されるとハイクビジョンの収益は42%増加した。ミサイルに搭載可能なカメラや既製のドローン、サーマルイメージャー、対ドローン攻撃などにロシアの高い需要に応えた。
中国の「国家安全維持法」は組織、民間企業、国民に対し、要請に応じて情報機関に協力することを義務付けた。国民総てであり、外国で暮らす中国人も日本留学中の学生も、国家の命令に従うことになったのだ。
しかも監視システムのメーカーは中国当局の直接の管理下で機能している。当該メーカー株式の過半もしくは40%以上を中国政府が所有している。つまりハイクビジョンもダーファも中国軍と密接に繋がっている。ファーウェイがどれほど否定しようとも、同社が中国軍関連の企業であるように。
米国のペンタゴン(国防総省)の文書が漏洩した。
このなかに、ハイクビジョンと「中国諜報機関」との提携が具体的に言及されている。目的は米国政府機関の建物と出入りする人間を監視することであり、中国はそのために数十億ドルの予算を組んでいると報告されていた。
2018年、米国議会は「国防権限法」を可決した。
電気通信およびビデオ監視の分野における特定のサービスおよび種類の機器の禁止を規定した。爾来、連邦政府機関はハイクビジョンやダーファの機器の購入、ならびに使用を禁止した。
2022 年末から国防権限法、包括的歳出法、米国知的財産保護法等が相次いで成立し、関連の規制強化や新たな措置が打ち出された。上下院で協議が進められてきた米国競争法案や台湾政策法案、USCC(米議会米中経済・安全保障調査委員会)年次報告書等に盛り込まれていた事項も含まれている。
2022年、中国軍事企業の最先端技術へのアクセスを制限するため、米国はダーファ社へのチップ輸出規制に乗り出した。英国政府も公的機関のハイクビジョンとダーファの監視カメラ設置を禁止した。
2023年、オーストラリア政府も同様の措置を執った。
令和五年(2023)5月31日(水曜日)
通巻第7774号 <前日発行>
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ウクライナ政府は中国製監視カメラをまだ使っている
軍事データと情報は中国からロシアへ転送された形跡が濃厚だ
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欧米は「国家安全保障上のリスク」を理由に中国製の監視カメラの使用を公共機関では禁止している。監視カメラの二大メーカーはハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)とダーファテクノロジー(浙江大華技術)である。
ところが、ウクライナは中国製監視カメラを使用している。つまり中国とロシアは、ウクライナ全土の監視カメラを通じて総ての動きを知ることが可能である。
ロシアはキエフなどをミサイルで攻撃したが、数時間以内に、オンライン監視カメラで撮影されたキエフの映像がロシアに掌握されていた。映像はキエフの対空防御に関する機密情報、防空ミサイルの数と種類、おおよその発射領域がロシアに筒抜けとなった。
2022年2月、クリストファー・レイFBI長官が議会で証言した。
「中国関連の防諜を調査中だが案件は二千件以上だ。中国は性質と規模の点で西側とは根本的に異なる方法で運営されている。あらゆる適切な技術的手段が情報検索に使用されている。今日の世界で、敵対的な政府がインフラや個々のデバイスを侵害する可能性ほど不気味な見通しはない。中国にはプライバシー保護がまったくない」。
2016年、米国のジャーナリストでサイバーセキュリティの専門家であるブライアン・クレブスのウッブサイトに、遠隔制御されてDDoSの大規模な攻撃が仕掛けられ、ダーファのカメラとビデオレコーダーだったことが判明した。
2017年、ダーファのカメラとビデオレコーダーに「バックドア」が発見された。これはブラウザを介してユーザー名とパスワードのデータベースをリモートで読み込むことが可能な「トロイの木馬」だったのである。
2022年、ハイクビジョンのカメラの認証情報がロシアで売られた。ハイクビジョンとダーファのカメラはハッキングが発生するたびに登場する。
2022年二月にロシアのウクライナ侵攻が開始されるとハイクビジョンの収益は42%増加した。ミサイルに搭載可能なカメラや既製のドローン、サーマルイメージャー、対ドローン攻撃などにロシアの高い需要に応えた。
中国の「国家安全維持法」は組織、民間企業、国民に対し、要請に応じて情報機関に協力することを義務付けた。国民総てであり、外国で暮らす中国人も日本留学中の学生も、国家の命令に従うことになったのだ。
しかも監視システムのメーカーは中国当局の直接の管理下で機能している。当該メーカー株式の過半もしくは40%以上を中国政府が所有している。つまりハイクビジョンもダーファも中国軍と密接に繋がっている。ファーウェイがどれほど否定しようとも、同社が中国軍関連の企業であるように。
米国のペンタゴン(国防総省)の文書が漏洩した。
このなかに、ハイクビジョンと「中国諜報機関」との提携が具体的に言及されている。目的は米国政府機関の建物と出入りする人間を監視することであり、中国はそのために数十億ドルの予算を組んでいると報告されていた。
2018年、米国議会は「国防権限法」を可決した。
電気通信およびビデオ監視の分野における特定のサービスおよび種類の機器の禁止を規定した。爾来、連邦政府機関はハイクビジョンやダーファの機器の購入、ならびに使用を禁止した。
2022 年末から国防権限法、包括的歳出法、米国知的財産保護法等が相次いで成立し、関連の規制強化や新たな措置が打ち出された。上下院で協議が進められてきた米国競争法案や台湾政策法案、USCC(米議会米中経済・安全保障調査委員会)年次報告書等に盛り込まれていた事項も含まれている。
2022年、中国軍事企業の最先端技術へのアクセスを制限するため、米国はダーファ社へのチップ輸出規制に乗り出した。英国政府も公的機関のハイクビジョンとダーファの監視カメラ設置を禁止した。
2023年、オーストラリア政府も同様の措置を執った。