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【写真】 エンソ・ビルディング 撮影 平山 達氏 (Photo : Susumu Hirayama)
先日、アルヴァ・アールトが設計した 「フィンランディア・ホール」 の大理石外壁に関しての話題を取り上げたが、アールトの建築で外壁に大理石を使用したものは、同じヘルシンキ市内にもう一つある。
ヘルシンキの観光名所でもあるマーケット広場の近く、カタヤノッカの「エンソ・ビルディング」である。
1月9日の報道で「フィンランディア・ホール」の補修した大理石の外壁が、再び反る兆候を見せていると報じた「ヘルシンギン・サノマット」誌は、「エンソ・ビルディング」の外壁についても同様の問題が生じていると報じている。
この建物はパルプ、木材製品を扱う企業「エンソ・グートツァイト (現在はStora Enso)」 の本社ビルで、アールトの設計により1961年に完成した。
建物の建つ地域はヘルシンキでも歴史的建造物が多く残る地域で、ビル建設当時から近隣のロシア正教の教会 「ウスペンスキー寺院」との歴史的景観など、多くの論争があった。
様々な困難をアールトは独創的、柔軟なアイデアで解決し、アールトの事務所にとっても思い入れの強い作品であるという。
外壁の問題については 「アルヴァ・アールト財団(Alvar Aalto Foundation - Alvar Aalto Academy)」もヘルシンキ市当局も外観の変更には強く反対しているので、アールトのオリジナルデザインは守られるであろう。
企業が絡むと建築の保存がすんなりといかなくなるのは、どこの国でも同じようだ。
以下、2005年の3月16日付、「ヘルシンギン・サノマット」誌からの記事抜粋である。
「エンソ・ビルディング」のストラ・エンソ社は本社の外壁を現在の大理石から花崗岩への張替えを要求している。
エンソ社はオリジナルである、白いカララ大理石はフィンランドの気候に合わず、花崗岩の方がより耐久性があると述べている。
エンソ・ビルは国際的に著名な建築家、アルヴァ・アールトによって設計され、1961年に完成した。大理石貼り外壁は、この10年間の間にかなり悪化し、ストラ・エンソ社は、来年にも大規模な修復工事を計画している。
しかし、アールト作品の保存を進めている 「アルヴァ・アールト財団」 は外観の変更はどの様なものでも反対している。
ストラ・エンソ社は、修繕計画をフィンランドの建設会社「エヴァタ社 (Evata)」に委託した。 エヴァタ社は、大理石を最も色の白い花崗岩である アメリカン・ベセル・ホワイト花崗岩 への取替えを提案した。
「ヘルシンギン・サノマット」誌は、この建物へのどの様な変更工事もヘルシンキ市の特別許可が必要であろうと述べ、この問題へのヘルシンキ市民の意見を広く求めている。