ちょっと前に投稿した記事、電力系統周波数の「急降下?」 の続報です。
Rapid Mains Frequency Decsent in Tokyo https://youtu.be/ejQsBP8EW80
データを解析してみたところ、周波数変化率・変化の幅、周波数低下してからの挙動がどうも発電機の「系統からの解列」に思えてなりません。そこで思い切って東京電力に電話。(注:最近の用語では電凸て言うらしい)
最初に電話した部署はカスタマーセンターみたいなところ。事情を丁寧に話したら内容は伝わったみたいで、あとで専門の部署からご返事しますとのこと。なにせ発電設備(または送電)に関する事項なので簡単には教えてくれないだろうと思っていましたが、なんと、大船制御所の方から直接ご連絡いただきました。観測した事象を詳細に説明したところ、詳細を調べていただき、後日わざわざ電話でご連絡をいただきました。丁寧なご対応にこの場を借りてお礼申し上げます。
結果は、予想どおりで、私の観測した時間帯、"近隣の"火力発電所で「ちょっとしたこと」があったらしく、私の想定した内容どおりでした。もっと細かい話を伺いたかったのですが、運用のプロに対して素人が立ち入る話ではないと思い、丁寧にお礼を述べ電話を切りました。
話変わって九州電力での話。
こんな「フリッカー」が九州電力管内で広域に発生したみたいです。
http://www.sankei.com/region/news/170503/rgn1705030054-n1.html
原因は太陽光発電についている「パワーコンディショナー」(以下パワコン)(=交流をつくって系統に流し込む装置)が「無効電力」を大量に流し込んだためと判明。電力会社は、実際に消費される「有効電力」、電圧の維持や系統の安定のために「無効電力」の調整を行っています。東京電力の例では新富士変電所(富士サーキット近く)に系統安定化のための「同期調相機」が置かれています。ここで無効電力のコントロールが行われています。
九州電力は系統容量が小さく、隣の中国電力と連系している連系線が細いため、太陽光発電が増えると何かしらの問題があるかも、と以前から感じておりました。 2015年3月に別府で研究会に参加した際もAC100Vモニターと近隣の変電所(西大分変電所 <地図>)を視察しています。北陸電力とくら朝7時〜9時頃の変動のパターンが特徴的だった印象があります。
この問題の本質は、パワコンの「単独運転検出機能」が未熟だったこと。少数のパワコンだけでは問題なくても大量のパワコンが同じ検出動作(アクティブ方式)を行い系統にダメージを与えてしまったこと。九州電力ではこんな「お願い」をしていますが、単価の高い電力を買い取らされ、今回のような系統が不安定になりかけて事業者に「設定変更をお願い」はおかしな話に感じます。系統に影響を及ぼす装置に対しては、「系統側の判断で遮断する」くらいの気概で望まないとパワコンも進化しないでしょう。
電気工学的にみた「理想的なパワコン」は・・・ 三相同期発電機とまったく同じふるまいをする発電機だと思います。近隣の発電機と周波数・位相同期を行うことができ、アンバランス時は「横流」で負荷分散する・・・ 周囲の電圧が上昇してきたなら(無効電力の増大)自身は誘導性負荷に変身すればいいのです。 安定供給・系統安定化する機能をもっている系統側の発電所は遠慮する必要はなく、分散電力側は、電力を供給するからには、最低限の有効電力・無効電力をきっちりと制御して欲しいものです。ちなみに「遅れ無効電力の消費=進み無効電力の供給」といったはて?な関係があります。
この「有効電力(real power)」「無効電力(reactive power)」は電気工学を勉強していないと馴染みのない用語です。スマートグリッドExpo で説明員に意地悪な質問をしてみましたが、無効電力が系統安定のために重要な働きをしていることを理解できている方はほとんどいらっしゃいませんでした。。。交流は「送っているうちに電圧が上昇」することがあるという摩訶不思議なことだらけなのです(フェランチ効果といいます) 情報工学全盛の時代、コイルだの電線だのというレトロな?技術は興味が失われているのでしょうか・・・
三相同期発電機と同等の特性をもつパワコンが開発されれば世界的な表彰ものだと思うのです。今の時代、「基準発電所」からのフェーザー情報をパワコンが受信し、所定の制御指示にしたがって、所定の電圧・力率(=つまり所定の有効/無効電力)で発電するなど簡単だと思うのです。そういう装置にこそ、高い単価で買電してあげれば良いと思います。