
この小説をはじめて読んだのは50年近く前のことになるでしょうか。
それがなぜ再び今読んでみたかといえば,実は最近,新田次郎氏と井上靖氏にはまっているのです。
この文庫本は14篇の短編集なのですが,メインが『アイガー北壁』です。
当時はどんな気持ちで読んだのか想像もつきませんが,数年前に実際にアイガー北壁を目の前で見て,この小説の中の光景が手に取るようにわかりました。
そして,著者の表現の豊かさに改めて感服しました。
日本語の使い方のすばらしさを現代の小説家も見習ってほしいと思いました。
新田氏も井上氏も1910年前後に生まれています。
現代の教育に問題があるのかなあと思ってしまいました。
さて,この短編集ですが,ブックカバーの裏表紙には以下の概要が記載されています。
「取りつき点から頂上まで1800メートルの巨大な垂直の壁に挑んだ2人の日本人登山家の実名小説『アイガー北壁』。2人のパーティーが白馬岳主稜で吹雪にあい、岩稜から姿を消す『気象遭難』。冬期の富士山で、不吉な予測が事実に変って主人公の観測所員が滑落死する『殉職』。他にヨーロッパ・アルプスを舞台にした『オデットという女』『ホテル氷河にて』など、山岳短編の傑作全14編を収録する。」
とあります。
是非お読みいただきたい一冊です。