カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

子どもの人身売買防止プロジェクト現地出張報告<子どもたちに迫る危険>

2005年09月03日 00時55分35秒 | 人身売買防止プロジェクト(意識啓発)
みなさんこんにちは、平野です。そのノンビリとした風景、穏やかな人々を見ていると、外からはあまり想像がつかないのですが、実際に直接話を聞いてみると、カンボジアの農村の子どもたちがさまざまな危険にさらされていることが分かります。今回は、SBPN(School Based Prevention Network=学校ベースの人身売買防止ネットワーク)フォローアップワークショップの中で挙げられた、レイプ、ドメスティック・バイオレンス、人身売買の誘いの実例をご報告します。

【レイプのケース】

7月29日夕方6時30分、レイプ未遂事件が発生、加害者は22歳男性、被害者は14歳女性。報告の描写の詳細さに驚いていると、この事件の被害者はSBPNメンバー本人だったのでした。彼女が大きな声を出したところ犯人が逃げ出したため、彼女はすぐさま両親や近所の人、そして村の有力者たち(既出の頻出語“village authority”です)に報告、彼らの調停で、結局50ドルの和解金で決着したそうです。
HCCスタッフによると、古くからのカンボジア社会の考え方だと、被害者でありながら烙印を押され、結婚が難しくなることを恐れた女性は、黙っていることが多かったといいます。彼女が勇気を出して告発したことは、心強い事実であり、SBPNの活動の大きな成果とも言えるでしょう
一方で、50ドルの和解金での決着には、なんともスッキリしないものを感じてなりません。和解金の金額の大小に関らず、やはり未遂とはいえ凶悪犯罪の加害者は逮捕され、法の裁きを受けるべきです。HCCスタッフともそのことを話し、2人で残念がったのですが、SBPNメンバーとはいえ、おとなたちの間で進められたであろう調停に割って入るのは難しいことです。また、法の裁きを、と望めば、そこからさまざまな意味で膨大な手間(時間・費用・汚職との関り)が発生しますし、公正な裁判が行われる保証は全くありません。現状できることの範疇で最善のことをしたメンバーの勇気を喜びつつ、あるべき姿への遠い道のりを思わずにいられませんでした。

【ドメスティック・バイオレンスのケース】

あるメンバーの子どもの父親が、農作業を終えて帰ってきたときにまだご飯ができていなかったことに腹を立て、母親を殴ったそうです。彼女は隣人にそのことを伝え、仲裁に入ってもらったとのことでした。2003年頃からドメスティック・バイオレンスがあるという話でした。
また他のメンバーは、義理の兄が暴力を振るうため、幼い兄弟を避難させたという話を聞かせてくれました。総じて、直接助けたり防ぐことは難しくても、周囲の人に助けを求めたり、避難したり、他の人を避難させることはできる、と口を揃えていました。

【人身売買のケース】
これはある小学校のSBPNのリーダーの体験談ですが、「マレーシアに来て働かないか?」という誘いを受けたそうです。全部が全部ということはないでしょうが、マレーシアでの仕事、特にメイドの仕事に関しては、到着した途端雇い主にパスポートを取り上げられて・・・に始まる悲惨な話が無数にあります。提示された額は月100ドル~働きに応じて、というものでした。マレーシアという場所もよく聞く話ですが、誘った人が「母親のいとこ」という遠いといえば遠いが知らなくはない親戚の人。これもまたよく耳にするパターンですが、もちろん彼女は断りました。また父親に報告したところ、父親も「トレーニングなどで恐ろしさを学んだばかりで、行かせるはずがないじゃないか」と同意してくれたそうです。それにしても、人身売買業者の魔の手が伸びていることを実感する話でした。

今回は子どもたちの身に迫る危険について、実例を挙げてお話しました。私自身、書きながら改めて国際子ども権利センターの使命を認識させられました。
次回は、ワークショップの中から、カンボジア独特の楽しいお話をお届けします。

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