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みなさんこんにちは、平野です。前回に続いて人身売買の実態についてです。前回は人身売買には多くの人々が関与しており、また関与の深さや意識のレベルが違うことについてご説明しました。つまり、完全な悪意の犯罪者、自分自身騙されて親戚などに嘘の職業斡旋をしてしまう村人、そしてよく分からずに全体の一部に関与する人々などがいるということです。今回は、前回の最後に触れたとおりカンボジアの人身売買業者の「個人事業主」という特徴を考察し、それらの要因から人身売買事件に対する警察の捜査が非常に困難になっていることをご説明します。
【“本当の悪”は滅多に捕まらない】
近年人身売買は組織犯罪の枠組みでとらえられることが多く、大規模な犯罪組織の関与は、日本やロシア、東ヨーロッパ、コロンビア等に多く見られます。しかし末端では小規模なグループや緩やかな結びつきしかない個人によって行われる人身売買も少なくなく、カンボジアの場合もそれにあてはまります。よって俗に言う「芋づる式」のようなかたちで一度に多くの人身売買業者を逮捕するのは容易ではありません。
何らかのかたちで被害に遭った人が救出され警察が動いた場合、警察は村でその子どもなり女性なりに職業斡旋をした人を逮捕します。これまでお伝えしている通り親戚や知人であることが多いわけですから、逮捕は困難ではありません。しかし、警察が彼らを捕らえてもその先にいる人身売買業者の正確な住所等を知っていることは少なく、また電話番号を聞きだしたとしても、プロの人身売買業者は見知らぬ電話番号からの電話に安易に応答することはありません。これらのことから、タイ国境で人身売買に取り組むある警察官は、「中間の業者を逮捕することは不可能に近い」とまで述べていました。
【人身売買事件を起こしても、職業斡旋を続けられる】
こうして、プロの人身売買業者でなくもっとも逮捕しやすい人々が逮捕され、無罪を主張し、そして最終的に裁判を受けて釈放される、ということが繰り返し発生します。就職斡旋した人々が本当になにも知らなかったのか、それとも本当は承知の上だったのか、これは判別するのが困難な場合が多く、証拠不十分で釈放されることが多いわけです。人身売買問題に詳しい弁護士によると、国境付近で職業斡旋業を営んでいる人々の中で、かつて人身売買の罪に問われたが無罪となり、釈放後も同じ職業を続けている者も少なからずいるということでした。
これに対する見方は色々です。「親戚や知り合いに嘘の職業斡旋をしてしまった村人のほとんどは、自分自身も騙されている」と主張する人も多いですが、「いや、彼らも知っているはず」と主張する外国人NGOワーカーにも会いました。それぞれ自分の見解がありますし、そうあってほしいという思いもあるでしょう。しかしいずれにしても、こうしたカンボジアの現状は、計算され尽した組織犯罪とはまた違った取り組みの難しさを生み出しています。
※写真はある国境付近の町でタイ国境に向かうカンボジア人の人々です。最近は、人身売買のケースでも合法的に越境するケースが増えているといいます。
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