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みなさんこんにちは、平野です。前回は、私が子の1年で現地で学んだことをもとに、どのような経緯で子どもや女性が人身売買という犯罪の被害にあってしまうのかについて書かせていただきました。その中で職業斡旋を装ったケースが多いことを述べましたが、今回はそもそも人々が、特に子どもや女性が、出稼ぎに出る背景についてご説明したいと思います。
【貧困】
農村の人々がなぜ出稼ぎに行かなくてはならないか、その背景にあるのは、一言で言えば貧困です。ユニセフの「世界子供白書2006年」によると、カンボジアでは人口の34%が1日1ドル以下で生活しています。そして1981年の調査で670万人程度とされた人口は、今ではその倍以上に膨れ上がり、さらに増えています。しかしながら、80%が農民と言われるカンボジアですが、1ヘクタールあたりのお米の収量は1.2~2トン程度(日本は6トン)であり、人口の増加に対応できていないのが現状です。
さらに2000年の大洪水、それに続く干ばつと自然条件からも農村の生活が圧迫されている一方で産業に乏しく、農村部に農業以外の職業の選択肢はあまりありません。カンボジア国内で言えば、数少ない巨大産業である縫製産業はプノンペン近郊に工場が多く、国外に目を向けると、タイでは安価な労働力としてカンボジア人の需要があります。こうした背景のもと、国内であれ国外であれ出稼ぎを希望する村人が増えてきているわけです。
そのような貧困の中、子どもたち自身も“家族を支えなければ”という義務感を強く感じている場合が多く、建設現場などで辛い児童労働を経験した子どもでも、家族の困窮を見かねて再度出稼ぎに行くことも少なくありません。こういった場合、必ずしも身体的な、あるいは言語による親からの「強制」を伴っているとは限らず、また周囲からも「家族のために働くよい子ども」とみなされ、子どもの権利侵害が発生している事実は見過ごされてしまいます。
【低い女性の地位】
女性、女子の出稼ぎについて言えば、その背景には7月19日付の記事でもご紹介しました「娘が家族のために尽くすのは義務」という伝統的な考え方があります。その象徴ともいえるのが「女性規範(Code for Women)」です。「女性規範」には、「夫が怒ったらそれ以上何か言ってはいけない」といった記述も見られ、問題を指摘する声もありますが、多くの小学校の道徳の時間に女子児童たちによって暗唱されています。
このような考え方のため、農村では中学校に行かずに働き始める女子が多くいます。前出の「世界子供白書2006年」によると、女子の中等教育の入学率は20%しかありません。出稼ぎに出る男性と女性では、女性のほうが行き先や仕事などについての情報を持たずに出稼ぎに出る傾向が強いことが指摘されているのですが、女子・女性の教育レベルの低さが人身売買業者に騙されやすい状況を生み出していることがうかがえます。
次回は、このような農村の現状に乗じて人身売買を企てる「人身売買業者」に焦点をあてます。
※写真は農村部のある小学校の1~2年生の子どもたちです。5年生6年生、あるいは中学校になっても男女とも同じ顔ぶれであってほしいと思います。
人身売買の撲滅にあなたの力を貸してください↓
http://jicrc.org/pc/member/index.html
なので、もしよければその他にどのような権利が侵害されているか教えていただけたらと思います。
よろしくおねがいします。