「勝つ」ための思考法~続・勝負師の極意~ | |
武 豊 | |
双葉社 |
「競馬やめます」とかはじめに書いておきながら、このブログ開設して初めて読んだ本がこの本という…
武豊騎手が好きなので、武豊騎手の競馬に対する考え方や勝負へのこだわり方などその思考法を知りたいなと思いながらタイトルだけ読んで購入。帰りの電車で読んできました。
全214ページですが見た目には結構分厚く見えます。ただ、結構行間が空いているため文字数は少なめで読みやすい書籍となっております。
内容としては『週間大衆』で連載されたいものを加筆修正したもので、一冊まるごと順を追ってインタビューしたり武豊騎手が書いたものではないという点に注意が必要です。というのも、そのせいで、スペシャルウィークの福寿草特別で2着になった話で弟の幸四郎をどやした話とか被る話が結構多いので、その話はもういいやと思うかもしれません。
・ビジネス書、自己啓発として
内容としては、競走馬の騎手という独特の仕事をしてはいますが、基本的には私の仕事(営業)にも通じる話だなと思いました。
騎手として仕事をしている以上、勝ったり負けたりするわけですが、その勝ち方も完璧な勝ち方もあればラッキーパンチで勝ちを拾うこともある。いつも常に納得のいく勝ち方ができるわけでもなければ、納得のいく負け方ばかりではないということです。例年の最高勝率ジョッキーが1割台の前半くらいというのを考慮すると、どんだけ勝てる騎手でも10回に1~2回くらいしか1着をとれない計算になります。なぜ、そうなるのかといえば、相手や馬の気分があるからだということでしょう。
私も営業という業務をこなしている以上、競合相手、取引相手など様々な利害関係を持った相手と競いながら新規契約をとりにいくわけです。そこには上で述べたように自分の思惑通りにいってまさに完璧に新規を獲得したこともあれば、競合相手のミスや流れが向いただけで新規獲得ができた場合も中にはあります。
もちろん、新規契約に至ることは稀で勝率で換算すると1割にも満たないんじゃないかと…。防衛したり取られたりなども含めれば、失敗することや負けることの方が多いのではないかと思います。
そう考えると、サラリーマンとはいえ勝負の世界に生きていると言えるわけで、トップジョッキーといえる武豊騎手の思考方法はいろいろと参考になる点も多いですし、サラリーマンとしての心構えもはずれているとは思えない部分が多々あります。
特に負けた時の心構えとして、今は引退されている安藤騎手の飄々とした態度を例として確かにそうだなと思わされるとこがありました。結局失敗したり負けたりしたことを後に引きづらず、いかに失敗を次の経験として生かすかそれだけを考えるしかないのだなと。
失敗し、うまくいくと思っていたものが失敗すると落ち込んでも仕方ないなと思いつつも引きずってしまいがちですが、そこで得た経験を次に生かしつつ、いかにくよくよせずにやっていくかどうかというのが大事なんだと思いました。
その他、仕事は決して自分一人の力でなしとげているのではなく、仕事の成功には裏方がいるということが一番顕著に出るのが競馬というものです。一頭の馬の成長や勝利の裏には調教師、厩務員、牧場関係者など様々な裏方がいます。勝利の際はそういう裏方の頑張りにも感謝をすること、これは見落としがちですが、とても大事なことだなと思いました。
私の仕事の中にも、私の資料をまとめてくれる事務員や私の仕事をサポートしてくれる部下、影で私の失敗にたいして怒られるたびにかばってくれる上司など私の表向きの仕事からは見えない裏方のものには感謝してもし足りないくらいだなと思いながら読んでいました。もちろん、私も裏方の仕事の方がまだまだ多いですが、自分自身の仕事が成功したときはその支えになった方々への感謝の気持ちも忘れてはならないなと改めて思いました。
武豊騎手自体が競馬の勝負の世界という独特の世界で生きていられる方ですが、私たちの仕事の心構えとして参考になる部分は多いなと思いました。
・競馬としての読みものとして
武豊騎手自体、長年競馬会のリーディングジョッキーとして君臨してきこともあり、多くの名馬の手綱をとってきた方でもあります。
いろいろな名馬に乗ってこられたので、オグリキャップやメジロマックイーン、スペシャルウィーク、ディープインパクトなど数々の馬の名前がずらりと並んでいるので、武豊騎手が乗っていた馬が好きな方は楽しめる内容になっていると思います。
話題として多めなのが武豊騎手自身が初めてダービーを取った時の馬、スペシャルウィークの話題が多いかなと思います。というよりも、福寿草特別2着のときの話題がやや多いかなと思います。
癖のある馬としての話題ではレース直前の輪乗りの際に必ず用をたすマーベラスサンデー、ダンスインザダークや気性的に激しくて苦労したシーキングザパールの話もあったり、ファインモーションの話もありました。
ちなみに、ファインモーションが子供作れないのは医学的な問題だったということを本書で初めて知ったというのは内緒です。
競馬が好きな方なら乗ってきた馬がさすがに名馬だらけなので、競馬としての読み物としても十分楽しめるものになっていると思います。
と、簡単なビジネス書・自己啓発として読む分にも十分面白いと思いますし、競馬好き、武豊騎手のファンとして読む分にも楽しめる内容になっています。
ただ、連載として書かれたものを修正しているだけですので、話としての一貫性もなく話題としても深い話はあまりないので物足りなさは否めないです。
しかし、簡単にあっさりと読むには行間も空いているので誰でも読みやすい書籍だと思います。
深かったり、小難しいビジネス書や自己啓発本とは違うのでそういったものをお探しの方には向かないですが、簡単にすぐに読みたい、武豊騎手や彼が乗っていた馬が好きだという方には読みやすいので、興味のある方はどうぞ読んでみてください。