家の生活を維持しながら、大学に通う費用を稼ぐのに苦しむ21歳のヒロイン理子。
そんなある日、彼女に成り上がりのチャンスが。
一方で、百貨店のエリートバイヤーだった小島は会社をクビになるという転落人生を辿ることに。
その交わることのないはずのふたりの一般人が金持ちの思惑で交錯する、生と死を賭けたサドンデスを描いた作品です。
無差別殺人事件の裏に金持ちの思惑あり?
そんな馬鹿なと思いつつも、今の日本での出来事やテレビなどで得た情報、実体験から、本作で起きていることを100%フィクションだとも言い切れない内容だなと思える話です。
まさにリアルではないでしょうがリアリティがどこかある作品。
ただ、作者をみて勝手にゴリゴリの刑事モノかと思っていたら、私が今まで読んだ作者の作品にしては刑事パートは少なめだなという印象です。
作品のテーマもあるとは思いますがヒロインの成上り、小島の転落部分にスポットライトが当てられています。
はじめは、サドンデス?っていう感じでしたが、読み進めるごとに、牙が見えてきて、どんどん話に引き込まれていきました。
そして、頭の中ではエディ・マーフィの『大◯転』みたいなシーンが出できて、確かに金持ちってこういうことやるシーンあったよなぁと思いながら読んでました。
さて、そんな本作品から感じたことは、成上りをみる面白さです。
人の成上りって、見ていて嫉妬したくなる人もいるし、不快に思うものもあるし、応援したくなるものもある。
それは成功の過程を見聞きしている時であって、SNSであがったものだけをみたら、私も
「やらせやん」
とか
「どうせ、いかがわしいことしてるんだろ?」
とか、妬みながら眺めてしまうかもしれないタイプの人間です。
でも、サクセスストーリーというか、成功したと思われる人の自伝や伝記を読むと、この人凄いなと思ったりします。例えばスティーブ・ジョブズの本とか読むの面白いですし、世界的にヒットしてるということは、こういう成功者について書かれた本を読むことが好きな人は多いということなんだろうなと。
そう思うと不思議なもので、サクセスストーリーは好きなのに、反面嫉妬や妬み、疑惑、何ならいつか痛い目を見てほしい(失敗してほしい)と呪いのように願う不思議さ。
こういう矛盾を抱えているなと気付かされました。
そして、こう読んでみると、登場人物の小島は私だなと思いました。
私も、大なり小なりの成功体験を勲章のように胸に抱えていて、その体験がいつ暴れだすかわからないなと思いますし、成功した時の気持ちよさを忘れられる人もそんなにいないだろうし、まさに成功は麻薬だなと思いました。
最後に、お金を動かす力を持っている人、それこそが今では権力者であり、権力者に利用される、これは今を生きている私達の生きている世界の1面を言い当てていると思います。
ただ、お金の力でことをなし得ようとすると、結局お金の力に最後は屈する。
暴力で勝ち続けてもやがてその暴力に屈するように。
結局、どこまでいってもサドンデスということなのかなと思いました。
※ブクログに掲載した感想を転載しております。
前半、どこがサドンデス?成り上がりと死?ってなってしまいましたが、100ページを超えたあたりからは面白いなと思いました。
成り上がりか死ぬかは大げさかもですが、明日は我が身と思えることもあるせいか、妙にリアリティを感じました。