定時制高校(夜間高校)で夜な夜な行われる、科学部による実験。
科学に目覚めた青年や料理店のおばちゃんなど年齢も凸凹の部員が織りなす成長と青春を描いた物語です。
科学はエリートや優等生のものなのか?
本作品を読んでいて、是非、今の進路を悩める高校生に読んでほしいなと思いました。
いろんなことで挫折するし、いろんな理由で普通に高校生活を送りたかった、あるいは高校で学びたかった人が学べないなど、高校に行けない人もいる。
「親ガチャ」とか生まれた時からの差がとかいろいろ言われる今の時代、何が1番不幸なのか。
私は
「打ち込めるものや熱中できるものがない」
ということ。
これが、貧しくもなく、ハンデももっていない人にとって1番不幸なんじゃないかと思います。
作中のご年輩の方々が一生懸命生きた時代は、大体の人が貧しくて、集団就職して、家のために働いていた人たちばかりだったということを知ってはいても想像したことがなかった私は、確かに家族のために仕事を頑張ろうと思っていても、下の兄弟を学校に行かせるため、親を食べさせるための生活なんてしたことはないです。
そんな時代からすると凄い贅沢な暮らしをしているし、義務でもないのに、高校や大学は当たり前のように進学する。
でも、やりたいことはない。そんな不幸なことはないかなと感じました。
その代わり、集団就職をしていた世代からすると、不登校になったりなど、社会に出る前から傷つく子供も多いというのも事実。
ただ、何がきっかけになるかはわからないですが、そういった子達もリカバリーのチャンスはどこかに潜んでいる。
辛さもあり、温かさもある。そんな青春小説だなと思いました。
そして、本当ならば興味を持ったことはいつはじめても良いはずなのですが、学問に関しては厳しい現実も実は描かれている作品です。
なぜなら、本作で書かれていた科学はエリートや優等生のものなのか?という問いは実は日本の学問界隈全てに当てはまることだと言っても過言ではないからです。
私の専攻していた分野も、大体は東京の有名大学が中心、地方も旧帝大が中心ですし、名前の聞いたことのない大学が出ても、出身大学や誰々の弟子っていうのは有名なところしかいかないのが現状です。
面白い学説を提唱しても、どこぞの有名大学の教授が認めない限りは議論すらならない。
そんなことが日本では昔から続いています。
そういう厳しいこともありつつ、でも、本作の登場人物が乗り越えられないかもしれない壁かもしれませんが、乗り越えてほしいなと応援したくなります。
そして、今の学校生活を楽しくないと思っている学生や進路に悩んでいる学生は本作品に触れて、自分自身と向き合ってほしいなと思う、そんな作品だなと思いました。
学校には何でもあるんだよ?やる気になれば宇宙や火星も作れる。
あなたのやりたいことはわかりませんが、失敗してもその失敗を楽しめることは間違いなくあなたの好きなことです。
※ブクログに掲載した感想を転載しております
登場人物全員を好きになれるというくらい魅力的なキャラクターに溢れているなと感じた本作品。
トライ&エラーを繰り返す科学実験は楽しめないと無理ですけど、楽しめさえすれば宇宙だって火星だって作れるというのも面白い。
そして、現実は厳しいということも織り交ぜつつ、それでも彼らの未来が明るいことを願いたくなりました。
また、貧しい時代を生き抜いて今の日本を作り上げてきた高齢者には敬意を、これからの日本を築き上げていくこれからの若者や今を生きる私たちは頑張らないとなと思いましたし、そしてその頑張りは頑張りたいと思える時に頑張るしかない。
日本のためとは思わなくてよい、まずは自分自身の生活や将来の基礎を築き上げていきなさい、そんなメッセージも今となっては込められていたのかなと思いました。