アーノルド・トインビー博士の有名な言葉、これは私のTwitterで引用しましたが、以下の様な言葉がありました。
①自国の歴史を忘れた民族は滅びる
②すべての価値を物やお金に置き換え心の価値を見失った民族は滅びる
③理想を失った民族は滅びる
これは当に今の日本社会を表していませんか?
自国の歴史。今の日本人で自国の歴史を語れる人は、いったいどれだけいるのでしょうか。
確かに神代の歴史までを学べなんて事は言いません。そこまで行くと神話の世界で、今の私達からすればかなり荒唐無稽な話に思えます。しかしせめて飛鳥時代あたりから、特に江戸末期以降の近代史については、興味を持って欲しいものですが、学校教育でもさわりを舐める程度しか教えていません。特に太平洋戦争あたりの歴史観に至っては、GHQから与えられた史観を、ほぼ踏襲した内容になっています。
私は何も戦争の英霊達を敬えとか、よく自虐史観という話をする人達の様な事は言いません。しかし必ず物事には良い面、悪い面というのが有るように、その時代にも同様な事はあると考えています。
では太平洋戦争当時の良い面は何だったのか、悪い面は何だったのか。そう云う事をしっかりと、日本人が議論をすべきだと思うのです。
確かに太平洋戦争では多くの有為な若い人材がいましたが、それを多く無駄死にさせたのは当時の軍執行部です。では何故、軍執行部の無責任な行動を国として許容してしまったのか。また中国利権を狙うアメリカと日本は対峙して、結果として日本は戦争という道を選択したわけですが、そこには何があったのか。
今の日本人が認識しているのは、GHQから与えられたものばかりで、日本人として先の戦争の総括すら出来ていないのです。
本当は、これらの事は、GHQからの視点だけではなく、当時の日本人の視点からも見なければわかりません。
この様な自国の歴史観を国家としてしっかり持たないから、日本という国は、浮き草の様な今の姿になってしまったのではありませんか?
またすべてをお金や物として捉え、そこにある無形の価値を見れなくなっても居ますよね。これは特に2000年以降、小泉自公政権で、市場原理主義を日本が取り入れてから顕著になりました。
企業も損得のみで判断し、株主への利益還元のみを主眼として動いています。
私はこれが悪いと単純に言いませんが、例えば会社というのは社会の公器であり、雇用を作るということに責任を持つ組織だと思うのですが、近年では企業の多くは従業員に支払う人件費すら、単純に経費として計上し、損金扱いをしています。従業員に対してそんな姿勢で組織が望めば、そこに新たなイノベーションも生まれなければ、新たな価値を作ることも難しくなるのは必定でしょう。
これは従業員側にも言えるのですが、より多くの収入を得るとか、仕事を単にお金を得るだけ場でしか無いと捉え、まるで会社にぶら下がる様な、所謂「フリーライダー」の様な従業員も増えています。
要はそこに「心」があるのか、「公共心」があるのか、本当はそこを問わねばならないのです。しかしこんな議論をしても、それを自社の利益誘導に使う会社や、自己保身に使う従業員も今なら出てきてしまいますので、実りのある議論にはならないでしょう。
一体、この国の精神的支柱の「心」は、どこに捨ててきてしまったのでしょうか。
また今の日本に「理想」はありますか?
政府は外国に対して様々な経済的支援に余念がありません。国内にある貧困格差はどこ吹く風で、政府は多くの外国に対して経済的支援を続けています。
また近年では人口減少と少子化にかこつけて、外国人を日本に受け入れようという議論まで噴出し始めています。
では一体、日本はそんな行動の先に、どんな国として諸外国から認知されたいのでしょうか。
明治期の日本は、いい悪いは別にして、アジアに対して近代化を進めるトップリーダーを目指していました。また太平洋戦争前には、大東亜共栄圏の構築を目指していましたが、そこにあった理想とは、アジア有色人種の欧米からの自主独立でした。
この理想がどの様な結果をもたらしたのか、そこはしっかりと成功/失敗を評価し、プロセス含めて検証を日本がしっかりと為すべきなのですが、そこは今の日本では歴史観が無いので、そんなことすら行えていない事は大きな問題です。
しかし今の日本という国にはそういう理想すら見えなくなっていませんか?
昨今では、ウクライナ紛争を切っ掛けとして、敵基地攻撃能力の件や、国土防衛という言葉が一部の政治屋達から聞こえたりします。そしてマスコミもそんな政治屋の浅い言葉を真面目に日々報道しています。
しかし今の日本にとって、そんな議論を行う前に、このアーノルド・トインビー博士の言葉をよくよく考えて、自分たちを振り返らなければなりません。
せめてそんな意識が国の中に、少しでも芽生えてくれれば良いのですが、それはそれで難しそうですね。
だから私個人として、今の日本の将来像が見えないのです。