自燈明・法燈明の考察

現実社会の不確実性

 皆さんは、朝起きた時にその日に見ていた夢を覚えて居られますか?

 最近なのですが、私はその日に見た夢の内容を覚えて居られなくなってきています。いや、正確には思い出そうと思えばある程度思いだせますが、以前の様に鮮明に覚えられる回数が減っている気がします。

 これは老化現象の一つなんでしょうか。

 先日、昨年末に行った手術から半年経て再発チェックを受けてきました。検査の内容は造影剤を使ったCT撮影で、その結果は「問題なし」という事でした。次回は来年1月に再発チェックを行い、そこで問題が無ければ1年毎に行うそうです。

 まあ昨年末の腎臓腫瘍は癌だったので、こういった事は致し方ない事なのですが、この「再発チェック」というのは、CT撮影から担当医の診断まで、およそ1週間ほど間があるのです。その間、私の脳裏には常に「再発していたらどうしよう」という、漠然とした命に対する不安を抱えて過ごす事になるのです。まあその前に、再発する病気でもあるので、日常生活の中であるちょっとした体調の変化にも、過敏になってしまう事があるんですね。

 私の人生の中で、これほど身近に「自分の死」を感じながら生活する事は、今まではありませんでした。でもこの病気になってから、以前よりも確実に「自分の死」について考えさせられてしまいます。

 ただ恐らくこれは私だけではなく、人生五十年を過ぎてしまうと、何かしら体調に変化が起きたり、場合によっては様々な病を得る事から、同じ様に感じる人はいるのかもしれませんね。幸いな事に、私は創価学会の宗教から離れてかなり経過しているので、この「自分の死」に対して、「勝利する」とか「乗り越える」という概念は既にありません。どちらかと言えば、どの様に自分自身が受容していくのか、そういった事を考えたりする時間が多くなりました。

 毎朝起きると、五感で感じるこの現実世界を実感し、ああ今日も目覚めたんだなという事を実感します。しかし「死」を受容するという事は、この五感で日々実感するこの現実世界とは異なる世界を私は経験する事になる。という事実がこの先にある事を受け入れる事から始まると私は思うのです。またその際には、この現実世界に生きている肉体(仏教では五陰世間とも呼びますが)を私は恐らく失っているのです。また失うのは肉体だけではありません。いま家族として生活している妻や子供たち、また友人関係や親戚関係についても同様に失う事になるのでしょう。数ある「臨死体験」の中では、この死の先で、先に亡くなっている親族や友人との再会、なんていう話もありますが、そこで再会したとして、それは既にこの現実世界での再会とは異なると思います。そして経済的なもの、この人生で得て来た様々な肩書なども失う事になりますが、これについて仏教では「奪衣婆」という事で表現されている通りかと思います。

 そして恐らく死の先に持ち越せるモノがあるとすれば、この現実世界での経験(記憶)だけなんでしょうね。

 これは一介の俗人である私であろうと、如何なる地位や権力、そして名声を持った人であっても、そこに差別は一切ありません。何故ならこの世界に「不死」の存在として、未来永劫、永遠に続く現実世界の中で肉体を維持しつづける生き物というのが存在しないからです。死とは全ての人、生き物に対して「平等」に訪れる事なんですから。

 私は決して死とは「無」に帰する事とは考えていません。これは単純な話で「無」という状況を、皆さんは想像する事が出来ますか?

 私が思うに恐らく死の後も「我」という事を感じ続け、それによって様々な事を思惟し、考えるという心の活動が止む事は無いでしょう。しかしだからと言って、それが「三世永遠の生命」という事で表現される事と同じという訳でもないと思うのです。何故なら、いま現実世界で生きている自分自身の存在とは、まさに「一期一会」の様なものであり、そこにある「自我」がまるで「霊魂」の様に、この先も永遠に存在するものでは無いからです。私達が日常的に時間軸として感じている「過去~現在~未来」という流れも、果たして常に川の流れの様に、ひたすら未来だけに流れるという保証は、死の先には誰もしていませんし証明すら出来ません。

 とまあ、こんな事を考えてみると、いまこの現実世界にある「自我(自分)」という事、そしてその周囲の様々な環境という事も、実は恒に続くものではないので、日々の生活の中でそういった周囲の環境(人間関係や土地、そして社会等)に対する認識についても、考え直さなければならないのかもしれませんね。

 この現実世界は不確実性のある世界なんだと。

 そしてこの観点に立って見ると、実は仏教で説かれている内容についても、今までとは違い、より身近に具体的な姿を以って、私の心に響いてきたりするのです。

 ちょっと最近になって考えている事を、文書化してみました。

 


クリックをお願いします。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「私の思索録」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事