ロシア、拿捕したウクライナ艦船解放せず 西側が相次ぎ非難
[モスクワ/キエフ 26日 ロイター] - ロシアが25日にクリミア半島沖でウクライナの
艦船3隻を砲撃後に拿捕(だほ)した問題で、ロシアは26日現在、艦船と乗組員の解放を巡る
西側諸国の要請に応じていない。
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長はウクライナのポロシェンコ大統領と
電話会談を行った後、26日にウクライナとの緊急会合を召集することを決定。NATOは
「ウクライナの領土保全と主権を完全に支援」していると述べた。ウクライナはNATO
加盟国ではない。
欧州連合(EU)のトゥスク大統領もウクライナ艦船の拿捕を非難し、ロシアに対し直ちに
解放するよう要請。
英国、フランス、ポーランド、デンマーク、カナダも今回の事件を非難している。
ウクライナ政府はロシアによる攻撃を非難。ウクライナには自国を防衛する権利があるとし、
軍隊を完全な戦闘態勢に置いた。ポロシェンコ大統領は28日付で全土に戒厳令を発令する
方針を表明。発令期間は30日間となる。
ロシア外務省はウクライナに非があるとして同国を非難。声明で、今回の事件は対ロシア制裁の
一段の厳格化を目的に計画されたものだったとの見解を示し、「ウクライナが米国、およびEUと
手を組んで追求しているアゾフ海と黒海でロシアとの紛争を引き起こす政策は、深刻な結果を
招くとウクライナに対し警告する」とした。
ロシア連邦保安局(FSB)はウクライナ艦船はロシアの領海を侵犯したとし、刑事事件として
捜査を始めたと表明。ペスコフ大統領報道官は拿捕は国際法、および国内法に厳格に則った
措置だったとの見解を示している。
ロシアのインタファクス通信は人権団体の話として、26日現在、24人のウクライナ人乗組員の
身柄が拘束されていると報道。砲撃で負傷した3人の乗組員の容態は深刻ではなく、病院で手当を
受けているとしている。
また目撃者によると、クリミア半島のケルチ港に停泊しているウクライナの3艦船の船体に
目立った損傷はない。
アゾフ海の西岸に位置するクリミア半島は現在はロシアが支配しており、東岸もロシア領と
なっているが、北岸はウクライナ領となっており、アゾフ海ではこれまでも緊張が高まっていた。
事件を受けロシアルーブルは対ドルで1.4%下落。1日の下落としては11月9日以来の
大きさとなっている。
国連安保理、ケルチ海峡情勢の協議を否決
国連安全保障理事会で、ロシアが提案したケルチ海峡の情勢検討が採択されなかった。
11月に安保理の議長国を務める中国の代表は「議題承認に反対が7名、4名が賛成、4名が棄権、
議題は採択されない」と発表した。
ロシアは先に、議題項目「国際平和と安全保障の維持」に関して緊急会合を開くよう要請していた。
ロシア連邦保安庁は11月25日午前、3隻のウクライナ船がロシア側に航行の許可を得ずに
ケルチ海峡に向かい、領海に侵入したと発表した。
ロシア保安庁沿岸警備隊とロシア黒海艦隊の艦船がウクライナ艦船に対し、停止するよう法にかなった
要求を行った。ウクライナ艦船はこれに反応せず、航行を続けた。違反船舶の強制停止のため、
武器が用いられた。
ウクライナ海軍の兵士3人が軽傷を負った。3人は治療を受けた。艦船は拿捕された。ロシア大統領府は
この事件を「非常に危険な挑発行為」だと呼んだ。
ウクライナのポロシェンコ大統領は、黒海での出来事を受けて国内で戒厳令を発令する大統領令に
署名した。