ISが「首都」で必死の抗戦 シリア・ラッカにBBC記者入る
-
2017年06月23日 BBC
過激派組織のいわゆる「イスラム国」(IS)が「首都」と称するシリア北部のラッカで、米国主導の有志連合に参加する
クルド系とアラブ系の連合勢力「シリア民主軍」(SDF)が激しい攻勢を掛けている。BBCのゲイブリエル・ゲートハウス
記者が現地から報告する。
長く、厳しい道のりだった。ラッカ中心部を目指し郊外の町々を車で通過した時に周囲に見えたのは、米軍の空爆で崩
れ落ちた建物や、進攻するSDFと後退する自称「イスラム国」の戦闘員らとの戦いに巻き込まれ、銃痕が壁一面に散ら
ばる店舗の様子だった。
SDFが前進するにつれ、人や荷物がうず高く積まれ、白旗を上げた荷車が現れるようになった。避難する家族の中に
は、長引くシリア内戦を逃れてよそからラッカに身を寄せた人たちもいる。せっかく逃げ込んだラッカでまたしても、戦闘
の真っただ中に巻き込まれてしまったのだ。
最初からラッカにいた人たちは、悪夢の中で何年も暮らしてきた。
塗装業の男性は、「あいつらは私たちを次々殺した」と話す。「私たちは生まれた時からイスラム教徒で、断食して祈って
きたというのに、あいつらは私たちが不信心者だと言うんだ」。
ラッカ市内には今でも数万人の住民がいる。町から逃げようとする人を片っ端から打ち殺す支配者たちによって人質に
されている。
子供の体をしっかり抱える女性は、「イスラム国に神の復讐があるよう祈っている」と言う。「私たちに降りかかったすべ
てのことは連中のせいです」。
SDFは今月に入り、ラッカ郊外を急速に進んだ。米軍による空爆と砲撃が後押しした。
空爆と砲撃は今も続く。時折、爆弾が落ちるドスンという鈍い音が聞こえ、その後に市の中心部で粉塵の雲が上がるの
が見える。
しかしSDFが旧市街の端に到達した今となっては、進軍の速度はゆっくりしたものになった。IS戦闘員たちは狭い街路
に押し込められている。
空から爆撃される上に三方を囲まれて、ISはあらゆる手段を使って抵抗している。
私たちは市の中心部へと車を走らせた。頭上から聞こえる音で、ISのドローン(無人機)が飛んでいるのが分かる。遠隔
操作された小型のヘリコプターで、見つからずに空から手投げ弾を落とすことができる。
旧市街を見渡せる建物の最上階で、SDFの戦闘員たちは突然攻撃を受けた。
「狙撃手だ、狙撃手……」。誰かが叫ぶ。
迷彩服の女性戦闘員が地面に伏せて横たわり、ISが撃ってくる方へ重機関銃を向けて一斉射撃する。
看護師から戦闘員に
クルド人たちは、女性も男性と肩を並べて戦う。女性戦闘員の名前はデリラ。22歳で、以前は看護師の勉強をしてい
た。しかしこの前線で、彼女は本当の天職を見つけたようだ。
「標的に命中して、敵を殺した時はすごくうれしい」と、激しい銃撃の合間にデリラさんは笑いながら言う。「私たちの士気
が上がって力も増す。私たちの友人や同胞を守っている」。
前線から戻り疲れ切った戦闘員たちは、夜を徹した激しい戦闘について語ってくれる。トンネル網を使い前線の後ろに
入り込み、SDF陣地の裏から奇襲をかけてくるのだそうだ。
「こちらを包囲して全方面から撃ってきた」。マシュクと名乗るアラブ人戦闘員は話す。「一人人質にされたけど、どうにか
助け出した」。
ISは恐怖を武器に
ドローンやトンネル、自爆攻撃、狙撃手――。ISはどの戦いでも恐怖を武器にしてきた。どの集団よりもうまくそれをやっ
ているかもしれない。ラッカ奪還の戦いは長く、厳しいものになるだろう。もしISが「首都」を失えば、彼らが主張するカリ
フ制国家がいずれ終わりを向かえることを意味する。
しかし、その後はどうなるのか。ISの思想は同時に消えるのか。多分そうはならないだろう。シリアの長い戦争がそれで
終わるわけではないし、世界に拡散した暴力の終わりではないことも確かだ。
<ISの支配地域が2016年1月と今月でどのように変化したかを比較>
(英語記事 Raqqa: The desperate fight for Islamic State group's 'capital')
ISがイラクで首都としているモスルではISが追い詰められています。しかし市民を盾にして抵抗してます。
市民が戦闘に巻き込まれる危険性は大きいです。