EMERALD WEB≪拝啓 福澤諭吉さま≫

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アメリカとトルコが危険地帯シリアで激突寸前

2018-03-28 20:39:52 | 戦争・内戦・紛争・クーデター・軍事介入・衝突・暴動・デモ

アメリカとトルコが危険地帯シリアで激突寸前

 

クルド人勢力から奪還した地区にトルコ国旗が掲げられる(3月15日、シリア北部アフリン) 

 

<米軍が支援するクルド人を攻撃したエルドアン――それでも両国が引くに引けない複雑な事情>

世界有数の危険地帯シリアで、アメリカとトルコが激突寸前となっている。1月20日にトルコがシリアに越境し、米軍が支援する

シリアのクルド民兵組織YPG(人民防衛隊)に攻撃を仕掛けたからだ。


中東安定化のためには米・トルコ両国の協力が必要だ。アメリカとたもとを分かてばトルコのエルドアン政権は独裁化を強め、

NATOで結ばれたトルコと欧米との同盟は終わるだろう。


両国はシリアで利害衝突に直面している。アメリカがYPGを支持するのは正しい。米軍はテロ組織ISIS(自称イスラム国)を

拠点の北部ラッカから掃討するのにYPGに頼り切りだったからだ。同時に、トルコがアメリカのYPG支援に不安を抱くのも正当だ。

YPGはトルコからの分離独立を唱えテロを長年行ってきた反政府組織PKK(クルド労働者党)とつながっているからだ。


ロシアとイランに対抗

ISIS掃討がほぼ終わっても両国関係の悪化は止まらない。アメリカは内戦後のシリアで権益を確保する手段として、YPGとの

関係を強めている。それをアメリカの裏切りと感じたトルコは、YPGの拠点であるシリア北部のアフリンを攻撃。

次にはアフリンの東約100キロ、YPGと米軍部隊の一大拠点マンビジに向かうと脅している。


両国は直ちにきびすを返すべきだ。アメリカはシリアで伸張するイランとロシアに対抗するため、YPGから手を引きたがらない。

しかし、イランとロシアの地域覇権を阻止できる力を持つのは、クルド人ではなくトルコだ。


アメリカがYPGからすぐに手を引けない事情もある。YPGは同盟軍としてラッカ奪還で重い犠牲を払った。だがISISが逃亡した今、

アメリカがすべきことはYPGに渡した重火器を回収し、クルド人部隊を撤収してアラブ系住民に権限を戻すよう促すことだろう。

またYPGに対し、アメリカがシリアでのクルド人自治を支援するのはPKKと絶縁する場合に限ると明言すべきだ。

 

その見返りとしてトルコはアフリン攻撃から手を引き、PKKと距離を置くシリアのクルド人と実利的な関係に着手する必要がある。

エルドアンは国内での強い指導力をてこに、PKKを含む幅広いクルド人社会と和解を目指すべきだ。トルコには1500万人近く、

イラク北部とシリアにも数百万のクルド人がおり、軍事的に対立する戦略は行き詰まる。


19年の大統領選をにらみ強国路線を掲げている現在、エルドアンにPKKとの交渉に合意する先見の明はないようだ。だがYPGと

対話を始めれば、エルドアンは大言壮語に釣り合う外交手腕を証明し、シリアの混乱から手を引くこともできる。


トルコは攻撃によって、かえってYPGをPKKに近づけている。YPGに手を差し伸べて、内戦後に国際的な支援と正統性を得たい

クルド人の利害を利用すれば、PKKと切り離せる。


トルコはシリア北部に緩衝地帯を置いて、シリアのテロを遠ざけ、難民を帰す安全地帯を確保しようとしている。そのためには、

シリア北部の大部分を支配しているクルド人の善意が欠かせない。


トルコは欧米、ロシア、イラン、近隣諸国と対立し、国内では民主主義が消えかけている。トルコを孤立から救うための第一歩は、

米・トルコ両国がシリアのクルド人の今後に対して何らかの解決策で合意することだ。