ニューヨークの「暴露富豪」は劉暁波の次の希望になるか
The Risk-taker
最近、私はある動画に夢中になっている。1日に5~6時間も見入るので、妻に「うるさい」「子供の面倒も見てよ!」と怒られているが、
それでもイヤホンを使って台所で必死にスマホにかじりついている。
動画の主はAV女優ではない(笑)。今、中国国外に住む全中国人が夢中になっているのは、ニューヨークに住む富豪の郭文貴(クオ・
ウエンコイ)。もともとは中国政府の高官と懇ろな政商だったが、後ろ盾が失脚した後アメリカに「籠城」。ツイッタ―と動画で連日、高官
たちの腐敗情報を暴露している人物だ。
「習近平(シー・チンピン)国家主席の側近が、反腐敗運動を仕切る王岐山(ワン・チーシャン)の汚職問題への捜査協力を依頼してき
た」「王の家族は20兆元(300兆円)の資産を掌握している」......。腐敗高官の具体的情報まで公開する郭のせいで、今年秋に重要
な党大会を控えた共産党と中国は上を下への大騒ぎになる、と思われていた。
しかし郭の「爆料(特ダネ)」は必ずしも思いどおりの成果を上げていない。
理由の1つは、郭が「腐敗した高官は糾弾するが、習近平は支持する」という態度を取っていること。習を攻撃対象にしていないのは、
恐らく郭なりの保険なのだろう。もう1つは、郭の暴露した情報に間違いが含まれているらしいこと。王夫妻がアメリカに豪邸を持ってい
る、と告発したが、本当はアメリカ人の所有だった。
彼を「吹牛(ほら吹き)」と批判したい気持ちも分かる。それでも、私は郭を支持する。「没有郭文貴、没有『新中国』(郭文貴がいなけれ
ば新中国はない)」と思うからだ。
先週、ノーベル平和賞受賞者で反体制活動家の劉暁波(リウ・シアオポー)が病気で死去した。中国の民主化にとって最後の希望の灯
が消えた、とみんな嘆いている。ただ私は悲観していない。劉暁波が死んでも、第2、第3の郭文貴が生まれれば、いつか中国は変わ
る。
郭は暴露をせず、おとなしくアメリカで暮らすこともできた。新宿・歌舞伎町を生き抜き、日本で地方選挙にも挑戦した私は郭のような
「火中取栗(火中の栗を拾う)」男が大好き。最近、私は「歌舞伎町の郭文貴」と自分を呼んでいる(笑)。
ラージャオ(中国人風刺漫画家:画)&李小牧