【大前研一のニュース時評】旭日旗、慰安婦…韓国の言いがかり「そこまで言うなら占領統治の象徴である青瓦台に住むのはやめろ!と日本は言うべき」
11日に韓国・済州島で行われた国際観艦式について、防衛省は海上自衛隊の護衛艦派遣を見送った。
韓国が自衛艦旗である「旭日旗」の掲揚自粛を求めていたからだ。
岩屋毅防衛相は「自衛艦旗は自衛隊法などの国内法令で掲揚が義務づけられている。国際法上も
国の軍隊に所属する船舶であることを示す『外部標識』に該当する」と見送りの理由を説明した。
これは当然のことだ。韓国は日本海軍の軍艦旗として使用された自衛艦旗を
「戦前の日本軍国主義の象徴だ」と主張している。しかし、日本と激戦を交えた米国を含め、
現在、旭日旗は国際社会に浸透している。
麻生太郎副総理兼財務相の祖父で、自衛艦旗を最終的に承認した吉田茂元首相も、「世界中でこの旗を
知らぬ国はない。どこの海にあっても日本の艦だと一目瞭然で、まことにけっこうだ。海軍の良い伝統を
受け継ぎ、海国日本の守りをしっかりやってもらいたい」と語っていた。
韓国が自衛艦の旭日旗に反対しているという話は、これまでにも何回かあった。
しかし、船が寄港できないような問題にまで発展したことは今までなかった。実際、韓国での
国際観艦式は1998年、2008年にもあったが、そのときは自粛要請はなく、海自の護衛艦は
旭日旗を掲げて参加している。
実はこの問題は20年前、当時の小渕恵三首相と韓国の金大中大統領の間ですべて解決している。
それなのに、韓国はこういう問題を今ごろになって持ち出してきている。
さらに慰安婦の問題も、「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した15年の日韓合意について、
韓国は「破棄されていないものの、崩れつつある」と主張している。そして、両国の政府間合意に基づき
元慰安婦を支援するために設立された「和解・癒やし財団」を年内に解散すると河野太郎外相に伝えてきた。
日本政府はこの財団に10億円を拠出し、多数の元慰安婦が財団を通じて支給金を受け取っている。
しかし文在寅大統領はなんと、「国民的理解が得られない」と言った。
国と国が「これで終わりました」と約束し、10億円の一部もすでに支払われている。それなのに
「国民の理解が得られない」と日本に断りなく財団を解散する。そんなことがあり得るのか。
そこまで言うんなら戦前の占領統治の象徴である青瓦台に住むのはやめろ!と日本は言うべきだ。
文大統領は100%、“向こう側”に渡ってしまった。
国連演説でも「世界はいま南北融和を助けるべきだ」と主張し、制裁始めにありき、の安保理決議に
異を唱えている。したがって、この人を説得しても無理だろう。ひょっとすると、北朝鮮と韓国が
一緒になって日本に対して反旗を翻すということもあり得る。
文大統領の頭の中には「日米韓」という言葉はなくなっていると思う。祖国統一のため、
米国をだましてでも朝鮮戦争の終戦宣言や平和条約締結に動くだろう。これに対し、「瀬取り」を
非難されている中国とロシアは反対もせずに傍観しているだけだ。
トランプ米大統領が金正恩朝鮮労働党委員長との「恋仲」を選挙スローガンに便宜的に標榜して
いることもあって、極東における日本の立場は孤立無援の状態になってしまった。
国連総会などで各国の意思表示のあったここ2~3週間の間に、極東アジアの地政学が大きく変わったと
いうことを理解する必要があると思う。
■ビジネス・ブレークスルー(スカパー!557チャンネル)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。