【社説】「金正恩」「万歳」…ここは本当にソウルなのか
左派13団体のメンバー約70人が7日、ソウル・光化門で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)
朝鮮労働党委員長ソウル訪問を歓迎する組織を結成、「金正恩」と連呼したり、「万歳」と叫んだりした。
組織名からして「白頭称賛委員会」という。南北首脳の白頭山登頂を記念して付けたと言うが、
彼らの性向から見ると、北朝鮮「金王朝一族」のいわゆる「白頭血統」を称賛するという意味合いも
あるのだろう。彼らは宣言文で、金正恩委員長の訪韓を「自主統一のためならどんな犠牲も甘んじて
受け入れるという誠意ある姿に我々国民は感動した」と書いている。
「南朝鮮に金正恩委員長崇拝旋風が巻き起こっている」という北朝鮮の宣伝機関の主張は全くの
作り事ではなさそうだ。
「白頭称賛委員会」のうちの一団体「韓国大学生進歩連合」は、2016年に脱北して韓国に亡命した
太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使を脅迫し続け、公の場で講演することを妨害した。
今年8月に「太永浩逮捕決死隊」を立ち上げて脅迫電話をかけたり電子メール送ったりして太永浩氏の
口をふさいだ。太永浩氏は先月、国会で「こうしたことを防ぐ現行法はない」と身辺に迫る問題を
訴えなければならない状況にまで追い込まれた。そしてとうとう6日に予定されていたキリスト教系団体での
講演を取りやめたという。北朝鮮の住民を奴隷のように踏みにじる独裁者が称賛され、惨たんたる北朝鮮の
真実を明らかにしようとした脱北者が脅されるという行為が白昼のソウルで繰り広げられている。
金正恩委員長は人に向かって高射銃を乱射させ、異母兄を外国の空港での化学兵器により暗殺させた。
全世界の人々が彼の残忍さに衝撃を受けた。北朝鮮の全住民が「金王朝一族」の奴隷であり、
そのうちの8万-12万人は収容所で獣同然の扱いをされている。
国連北朝鮮人権決議案が5年連続で「責任者の処罰」を勧告したのは、金正恩委員長の真の姿を忘れるなと
言うことだ。交渉相手である金正恩委員長に対する基本的な礼儀は必要だ。しかし、北朝鮮の核廃棄の
ための一プロセスに過ぎない。我々が自由民主体制を放棄しない限り、金正恩集団を称賛することはできない。
しかも、金正恩委員長は核放棄とは正反対の方向に向かっている。
それでも現政権は「率直」「礼儀正しい」「戦略的」という形容詞を用いて、
「北朝鮮の人々の生活をより重視する指導者がついに出現した」と言った。このように現政権が
金正恩委員長を持ち上げるから、ソウルのど真ん中で「金正恩」「万歳」という叫び声が上がることに
なったのだ。彼らが「金正恩」「万歳」と叫んだ場所から約100メートルの所に駐韓米国大使館がある。
ここではほぼ毎日、反米デモが行われている。今後、こうした状況はさらにひどくなることだろう。