米不法移民、親子分離めぐり応酬 メディア「児童虐待だ」 政権「人道的扱い」
2018.6.19 22:16 産経新聞
【ワシントン】トランプ米政権が不法入国者の取り締まりを強化したことでメキシコとの国境から米国に
不法入国して拘束された親子が引き離される事案が相次ぎ、野党やCNNテレビなどのメディアが人道問題で
あるとして批判を強めている。これに対し、国境警備を所管するニールセン国土安全保障長官は18日の記者会見で
子供たちは人道的に扱われていると反論し、厳格な法執行の妥当性を主張した。
米政権は4月から取り締まりを強化した。米メディアによると、5月末までに米南部国境から不法入国したため
裁判を受ける保護者約2千人から子供が引き離されて施設に収容された。
CNNは18日、南部国境で親から引き離された子供が泣き叫ぶ音声などを放送して視聴者の感情に訴えた。
ニールセン氏の記者会見でもCNNの記者が「罪のない子供が親から引き離されるのは児童虐待ではないのか」と
質問した。
これに対し、ニールセン氏は子供たちに食事、教育、医療、娯楽を与えるなどしていると述べ、人道的に
扱われていると反論した。また、多くの子供たちは親に伴われず不法入国してきているとし、児童保護の
重要性を強調した。
トランプ氏は18日、ホワイトハウスでの演説で「米国を(不法)移民や難民の収容施設にはしない」と
取り締まりの正当性を強調し、不法移民の入国を防げないのは、野党が移民制度改革に関する法整備に協力しない
からだと主張した。大統領夫人のメラニア氏は親と子供が引き離される様子を「見たくない」とし、
与野党が協力して法整備に取り組むべきだとする声明を発表した。
一方、ブッシュ(子)元大統領のローラ夫人は米紙ワシントン・ポストで、親子を引き離す政策を
「残忍で不道徳だ」と批判した。
米不法移民の親子「分離」、議会共和党に重圧
中間選挙を前に成果狙うが、党内の意見は一致せず
【ワシントン】不法入国者の子供を国境で大人から引き離すドナルド・トランプ米政権の政策が、米議会にも
影響を及ぼしている。すでに国内にいる不法移民の扱いについて幅広く移民政策が議論される中、議会共和党には
重圧がのしかかる。
トランプ政権の「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策は米国入りしようとする不法移民を拘束するもので、
南部国境地帯では大人と子供が引き離される事態が起きている。こうした不法移民を収監する連邦政府の施設も
収容人数が限界に近づいている。
メキシコと国境を接する選挙区から選出されたウィル・ハード下院議員(共和、テキサス州)は、選挙に向け
対立候補と接戦が続く。ハード氏は、大人から引き離された子供を保護する目的で連邦政府が現地に設置した
テント施設を視察。政権の政策から一定の距離を置く姿勢をアピールした。
同氏は視察後、米CNNに対して「これは共和党の問題でも民主党の問題でもない」とし、「子供をどう扱うかに
関する問題だ」と述べた。
一方、議会共和党は意見の一致が見られないまま、中間選挙を前に移民政策で一定の成果を出したい考えだ。
同党の中道派議員と保守派議員は有権者から相反する要望を受けている。
トランプ氏は19日夜に共和党下院議員らの会合に出席する予定。
ホワイトハウスの議会担当責任者マーク・ショート氏は17日、移民政策が中心に話し合われることになるだろうと
インタビューで述べた。子供が家族から引き離されていることについては、「この政策は極めて複雑で、より適切な
コミュニケーションを図る必要がある」とし、「このような事態にどうたどり着いたか、その経緯はまだ話し合えて
いない」という。
下院共和党のケビン・マッカーシー院内総務(カリフォルニア州)の事務所は、同党がまとめた2つの移民関連法案の
採決を週内に行う可能性があるとした。これらの法案が成立すれば、身柄を拘束された不法移民の親子は同じ施設に
収監されるか、子供は親族に預けられるなどの処置がほとんどの場合で取られることになる。
ホワイトハウスは、どちらの法案でも可決されればトランプ氏は署名するとしている。