中国、混迷のベネズエラを支援 石油権益への関与強化を見返りに。 リスク抱えた国策投資に警鐘も
2018.9.16 21:27 産経新聞
【北京】南米ベネズエラのマドゥロ大統領は16日、中国への4日間の公式訪問を終えて帰国の途についた。
訪問期間中、同氏は中国首脳と相次いで会談し、中国がベネズエラの石油権益への関与を一層強めることなどを
盛り込んだ合意文書に署名した。経済危機が深まるベネズエラ側の要請に応じ、中国側が支援を約束したことへの
見返りとみられる。ただ中国は今後、ベネズエラへの巨額投資が不良債権化するリスクも抱えている。
習近平国家主席は14日、北京でマドゥロ氏と会談。中国外務省によると、習氏は「中国は一貫して戦略的
長期的観点から両国関係を発展させている」と言及。同日会談した李克強首相も、ベネズエラに最大限の支援を
行うと約束した。
さらに両国は中国の巨大経済圏構想「一帯一路」などの合意文書に署名。ベネズエラ側の発表によると、
双方の国有石油企業による同国での合弁事業について中国側の増資を盛り込むなど石油や安全保障、通信を含む
28分野に上った。
ベネズエラの閣僚はマドゥロ氏の訪中にあたり、中国側が50億ドルの新たな融資を認めたと一部の
米メディアに語ったが、中国側は具体的な内容は発表しなかった。「ばらまき外交」批判を警戒したとみられる。
原油の確認埋蔵量が世界一のベネズエラに対して中国は2007年以降、総額550億ドル(約6兆1千億円)を投資。
反米左翼のチャベス前大統領やマドゥロ氏に接近し、「米国の裏庭」とされる中南米で影響力を高める意図もあった。
だがベネズエラは14年以降の原油価格低迷で経済状況が急速に悪化し、中国企業が出資した鉄道や住宅建設など
大半のプロジェクトが中止に追い込まれた。中国への返済手段となっている石油も設備の老朽化などで生産が
落ち込んでいる。マドゥロ氏の独裁的政治手法に対するトランプ米政権の制裁も経済の混迷に追い打ちをかけ、
国際通貨基金(IMF)はベネズエラのインフレ率が年内に100万%に達すると予測する。
北京の研究者は「投資は慈善事業ではない。返済能力のある国家とプロジェクトに投じなければならない」と
中国メディアに語り、“国策投資”に警鐘を鳴らしている。