インド洋、円借款で港整備…海上交通の確保狙う
2018年5月25日11時19分 読売新聞
政府は、ミャンマーとスリランカ、バングラデシュのインド洋沿岸3か国で、円借款による港の整備に乗り出す。
安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」の一環で、アジアから中東、アフリカをつなぐシーレーン(海上交通路)を
確保する狙いがある。
港を整備する候補地は
▽ミャンマー南東部ダウェイ
▽スリランカ北部トリンコマリー
▽バングラデシュ南東部マタバリ――
の3か所。
ダウェイでは日本、ミャンマー、タイの3か国共同で新港を建設する。開発には数百億~2000億円程度かかるとみられる。
新港の隣に経済特区を作り、タイ・バンコクからダウェイまでの幹線道路も整備し、新しい経済圏を生み出す。
トリンコマリーでは、日本、スリランカ、インドで、現在の小規模港を大型船が寄港できる貿易港に広げる。
整備費は100億~130億円程度を見込む。
マタバリには数百億円規模の費用を投じ新港を建設。将来的にバングラデシュの貨物量の半分を荷揚げするハブ港として一帯の
開発につなげる構想を描く。
日本はいずれの計画についても、各国と政府間協議を水面下で始めており、国際協力機構も整備計画案づくりに取りかかっている。
来年にも政府間でそれぞれ正式合意したい考えだ。
日本が港の整備を進めるのは、インド洋沿岸国の港湾機能が充実すれば、海上保安能力も向上し、タンカーや商船の安全確保に
つながるためだ。中国が「真珠の首飾り」と呼ばれる海洋戦略に基づき、インド洋沿岸国に海外拠点を築いていることも
関係している。ダウェイやマタバリ周辺では、中国も新港建設を模索したが、日本の計画を受けて頓挫したとされる。
中国はスリランカ南部ハンバントタ港を99年使える権益を得たほか、パキスタンやバングラデシュ、ミャンマーの港湾整備を
支援する。インドなどの周辺諸国には「中国海軍が外洋展開へ布石を打つ戦略」との懸念が根強い。
対中関係改善を目指す日本は、習近平(シージンピン)国家主席が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」の関連事業に協力する
構えをみせている。ただ、中国の軍事拠点化につながる恐れがある港湾整備は対象から外す方針だ。