中国の外貨準備、節目割り込む目前の窮地
2016 年 12 月 8 日 14:50 JST THE WALL STREET JOURNAL
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」より
中国では11月に外貨準備高が5カ月連続で減少し、さらに減少幅が700億ドル近くに上ったことから、外為当局が再び窮地に立たされている。
中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した11月末の外貨準備高は前月末から690億6000万ドル減少し、3兆0520億ドル(約348兆7000億円)となった。減少幅は、人民元安が世界市場を震撼(しんかん)させた1月以来の大きさだ。外貨準備高は3兆ドル目前まで減り、2011年以来の低水準となった。
11月の落ち込みは、ドル高の影響でそれ以外の通貨建て資産のドル換算額が目減りしたという面もある。中国は外貨準備の構成を公表していないが、約6割はドル建てで残りはユーロや円などの主要通貨建て、というのがアナリストの見方だ。11月のようにドルが主要通貨に対して上昇すると、ドル建ての外貨準備高は目減りする。
もっとも、キャピタル・エコノミクスのジュリアン・エバンズプリチャード氏によると、11月はドル換算による減少分が200億ドル程度だったもようだ。つまり、外貨準備売却による正味の減少額は500億ドル程度と考えられる。11月は元がドルに対して1.6%安と、やや大幅な元安となったため、中国当局が元売り圧力の緩和に動いた。ただ人民銀はこの数週間、元安を抑えるために大規模な介入を行っている。中国は、ドナルド・トランプ次期米大統領の反感を買うような為替政策を実施する一方、元の一段安を防ぐことでトランプ氏や米経済に配慮していると言える。
中国が資本流出対策を強化していることを考えると、資本流出の勢いに歯止めが掛かっていないのは間違いない。中国の公式メディアに6日掲載された記事によると、当局は「根拠のない」海外投資について厳重な監視に当たっている。
外貨準備が3兆ドルを超えていること自体は何も重要ではないかもしれない。だが市場はこうした点を心配しがちだ。中国は外貨準備がさらに500億ドル減れば、外貨準備が2兆ドル台の国の日常とはどういうものかを再び味わうことになるだろう。