北朝鮮が核戦争を起こす日
The 2020 Commission Report on the North Korean Nuclear Attacks Against the United States: A Speculative Novel
北朝鮮のミサイル問題専門家だったフォーリンポリシーのコラムニスト、ジェフリールイスが 「2020委員会報告書」(未来から振り返った報告書という形)として出した仮想戦記『北朝鮮が核戦争を起こす日』 超リアルで激アツ!大興奮で解説します!(Dr. Masashi Okuyama)
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(続々)これスゴイ!『北朝鮮が核戦争を起こす日』という仮想戦記が超リアル!その③完結編!
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トランプは爆発を見て「なんて美しいんだ」と驚嘆していたという。これで第9章終わり。
トランプがパームビーチ国際空港の駐機場に着いたのは1228。エアフォースワンはすでに待機していて1237に離陸。急上昇したが乗客は核爆発の閃光を直視しないようにするために窓のブラインドを全て下ろすように指示される。1248にフロリダ州ジュピターの上空で200ktの水爆が爆発。
そこから話はアラスカにあるミサイル防衛システムであるGMDに移る。北朝鮮のミサイルから米本土を守ることにできる唯一のシステムだが実証テストの成功率は50%で、しかも一回のテストに3億ドルかかる。北の13発のICBMで米国に到達しなかったのは6発。GMDが役に立ったのかは専門家の間でも議論される。
マールアラーゴからパームビーチ国際空港までは車で約10分ほど。ところがテラスで昼食をとっていたトランプは別荘を離れるのを拒否。その理由は「北朝鮮のミサイルはどうせ全部届かずクラッシュする」というもの。首席補佐官と大声で議論したトランプはその場を離れるがすぐに決心して1225に空港へ。
北朝鮮からICBMが発射されたのが現地時間の0102だが、米国東部時間では1202。着弾まで45分なのでマールアラーゴには1247に到達。トランプのスタッフたちに発射の報告が届いたのが7分後の1209。大統領に報告されたのが1213。安全な場所に連れて行くまで30分ほどしかない状況になる。
ただし今回新たに追加されたのが、別荘があり、しかもまだ大統領が過ごしていたフロリダ州のマールアラーゴ。
バークスデイル空軍基地は当初は不可解だったが、のちにブッシュ大統領が911事件の際に大統領専用機を一時避難させた場所であったことが判明。しかし今回の攻撃では真珠湾、サンディエゴ、ホワイトハウス、そしてNYのトランプ・タワー上空にICBMが向かうことに。
北朝鮮がICBMで狙っていた米国内のターゲットが4箇所であったことは、すでに北が2013年に公開していた金正恩の指揮所での写真から米専門家筋は知っていた。それはハワイの真珠湾とカリフォルニア州のサンディエゴ、そしてワシントンD.C.とルイジアナ州のバークスデイル空軍基地。
第9章は北朝鮮のICBMの発射から着弾までのトランプ側の対応の話。発射されたのは合計13発で、現地時間の3月22日0102。米国では21日の昼間にあたる。およそ45分で目標に到達予定。
— Dr. Masashi Okuyama (@masatheman) 2018年8月19日
巨大な火星15を含む北朝鮮のICBMについての米国のインテリジェンスは不完全なもの。米空軍はミサイル発射を阻止しようと推定される地域の上空を8の字で飛行するも移動式ランチャーの場所の特定は難しく、何発かは想定外の地域から10数発の火星14と火星15が打ち上げられてアメリカに向かう。
伝え聞くところによれば、追い込まれた金正恩にとってアメリカの攻撃開始は「トランプとの個人的な決闘」という生きるか死ぬかの瀬戸際であり、ミサイル部隊に対してアメリカ本土の攻撃を命令。 pic.twitter.com/afLa42LccZ
— Dr. Masashi Okuyama (@masatheman) 2018年8月19日
交渉の窓口を失った北朝鮮だが、米軍はその夜の0648から巡航ミサイルによる攻撃を開始。主要ターゲットは歴史的にも重要な白頭山であり、金正恩が隠れていた妙香山は二次的なターゲットにしか過ぎなかった。10数発のミサイルが着弾したが金正恩は無事。ただしシェルターの電気系統はダウンした。
場面はニューヨークに変わり、北朝鮮の外交チームの動きを追う。秘密裏に米国政府と交渉していた北の担当者たち、危険を察知して市内を離れてニュージャージーのホリデーインで米側の担当者と交渉に入るのかと思いきや、全員が米国に集団政治亡命をその場で希望。
ディビッドソン提督の北朝鮮攻撃計画は2段階。まずは北の防空網を破壊し、次に高価値の目標となる通信施設や核関連のインフラ、そして弾道ミサイルの破壊、そしてできれば金正恩の殺害も空爆で達成すること。ただし彼は金正恩やミサイルの破壊に関してははじめから望み薄だと考えていた。
ハリスに代わって太平洋軍司令官になったフィリップ・ディビッドソンについて説明。前任者ほど目立つタイプではなく、太平洋近辺での勤務経験もないが、今回の件では演習のおかげですでに3個空母打撃群が半島周辺に展開して即応体制にあり、しかも沖縄とグアムの米軍基地は被害を受けなかったこと。
第8章は主にミサイルを発射した後の北朝鮮側の対応を概観。金正恩は新設していた妙香山の地下シェルターに家族とともに避難。アメリカがここまで侵攻してきたら中国が介入してくるはずという計算。飛行機好きなので重要施設のそばには必ず滑走路を作るという習性があると指摘。
— Dr. Masashi Okuyama (@masatheman) 2018年8月18日
その後シェルターから出たトランプはマールアラーゴの作戦司令室でペンタゴンにいたマティス長官とビデオ階段。普段は注意力が1分も続かないトランプもこの時はかなり真剣にブリーフィングを受ける。報復作戦でも核兵器の不使用を決心したマティスは空軍による北の防空網破壊を進言。これで第7章終了。
トランプはその後に「北朝鮮だけでなく中国も核攻撃せよ」と驚くことを言って首席補佐官と対立。そこで核ミサイルの発射ボタンの入ったいわゆる「核のフットボール」というカバンを持つ少佐を呼び出して「俺に渡せ」と引っ張る。違反なのだが少佐はこれを拒否して揉み合ってから逃げる。トランプ負傷。
今回の北の攻撃で発射されたミサイルは62発であるが、当然ながらワシントンの政治リーダーたちは北の能力を過小評価して準備を怠っていた実態が描かれる。マールアラーゴのシェルターに一時避難したトランプは次第に混乱。なぜマティスはすぐに核兵器を撃ち返さないのだとスタッフたちに詰め寄る。
第7章はマールアラーゴでの北の攻撃を知らされたトランプ大統領も対応について。補佐官たちにミサイル発射の動きの警告がもたらされたのは1316。ホワイトハウス関係者は例のごとく単なる実験であり第二次朝鮮戦争の幕開けだとは知る由もなかった。フランシス首席補佐官が本物だと気づいたのは1614。
— Dr. Masashi Okuyama (@masatheman) 2018年8月18日
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北朝鮮の最初の攻撃のターゲットを示した地図。 pic.twitter.com/uDdD1Tr3rJ
— Dr. Masashi Okuyama (@masatheman) 2018年8月16日
3人目は釜山国立大学の病院の救急に勤める女医のオー・ソヒョン氏。当直明けの0602に爆心地から1.6キロの地点で被曝。幸い負傷は軽かったが当然のように病院には患者が溢れ、彼女も17時間連続で措置にあたる。福島原発事故の時に医者や看護師が一度家に帰った後に病院に来なかった話などを紹介。
ちなみに2発目のミサイルは通常弾頭のもの。「ダブル・タップス」として知られる、最初の被害を食い止めようとする消防活動を破壊するための攻撃。最初の攻撃はターゲットを狙い、次の攻撃は最初の救助・復旧活動を狙う。
2人目は東京の消防庁長官(?)のムラカミ・ケンイチ氏の証言。江戸の火消しの伝統について説明した後に0602に携帯電話に警告が出る。その5分後の0607に市ヶ谷の防衛省上空で広島型の2倍の30ktが爆破。その数分後に2発目がさらに北側の上空で爆発。東京中で火事が発生するがムラカミは何もできず。
ソウルの様子 pic.twitter.com/Og9c8cxyTG
— Dr. Masashi Okuyama (@masatheman) 2018年8月14日
『北朝鮮が核戦争を起こす日』という仮想戦記が超リアル!その②|奥山真司の地政学「アメリカ通信」
第5章はトランプのスタッフたちの対応が中心。マティス国防長官の言うことだけは聞く大統領だが、あいにくペンタゴンにいて不在。スタッフたちは4時間半かかるゴルフのラウンドを中断しないように神経を使いながらトランプに北朝鮮がミサイル発射したらしいことを進言して第5章終了。
ミサイル部隊は1発発射するごとに15分以内に15キロ移動する、いわゆる「ダブル・フィフティーン」と呼ばれる手順をを実行して、次は通常弾頭を搭載したミサイルを「第2波」として発射したことを報告して第4章が終了。
北朝鮮はそれぞれ9箇所から合計54発の核弾道ミサイルを発射。ターゲットは韓国と日本。それ以外に8発を沖縄とグアムの米軍基地に向けて撃つ。一連のすべてのミサイルの発射にかかった時間はおよそ30分ほど。
ただし最初の動きは、大量のドローンを韓国や日本の韓国軍や米軍のレーダーサイトに向かわせることであった。ミサイル攻撃にはスカッドとノドンが使われることに。
トランプのツィートの内容は「リトル・ロケットマンはもうすぐ黙るはず」というもの。これを見た金正恩とその取り巻きたちは「こりゃアメリカが政権を潰しにくる」と勘違いして夜中の0200に攻撃命令を発令。まず北の部隊はミサイルに似せたデコイ(囮)いくつも膨らましつつ、本物のミサイルも準備。
次になぜ北朝鮮が核武装に執着していたのか、歴史を振り返った説明。金日成が1965年頃から大規模侵攻の抑止手段としての核武装を考えていたことが示される。ようやく復旧した回線から次々と被害報告が上がってきたが、金正恩に核攻撃を決心させたのはトランプのツィート。
平壌郊外に韓国のミサイルによる爆破音が響き渡ってから一般国民が携帯をかけまくったために、ネットワークがパンク状態に。自身の暗殺計画や、過去の米軍の作戦のやり方を見ていた金正恩は「米軍が侵攻する前のサイバー攻撃で回線がつながらない!」と勘違い。
ここで北朝鮮の携帯電話のネットワークについて解説。すでに300万の利用者がいるが、これはエジプト企業との合弁事業。回線は3つに分かれていて①一般国民用、②外国人用、③政府幹部用、となっていることが説明される。
『北朝鮮が核戦争を起こす日』という仮想戦記が超リアル!その①|奥山真司の地政学「アメリカ通信」
第4章は金正恩が核ミサイルを発射するまでの経緯を見ていく。現地時間の2015に韓国からの玄武2ミサイル6発が北朝鮮に着弾。金正恩はこの時ミサイル実験の立会いのために亀城(クソン)にいて、平壌郊外の邸宅にはいなかった。
ようやく起き出して0600のFox&Friends を見たトランプ大統領は事態を知ることになり、ゴルフを延期して緊急会合を開くことになったというところで第3章終わり。
トランプが北との外交失敗の後にツィートで金正恩を「ロケットマン」だけでなく「身長の低いデブ」などと散々煽っただけでなく、妹の金与正まで「イヴァンカと違って板みたいに薄い」と侮辱したことを紹介。これが金正恩側の感情を逆なでしていたと説明。
この小説の設定ではトランプと金正恩のシンガポール首脳会談は起こっておらず、米朝外交はすでに破綻している設定。
この2人の証言を通じてマールアラーゴの警備の難しさやスタッフの苦労、そしてトランプの生活スタイルが描かれる。早寝早起きのトランプは撃墜事件が起こった米国東部時間の午後11:28にはすでに就寝中。その合間に国務省や国連大使のニッキー・ヘイリーらが北とNYで非公式外交チャンネルを探る動き。
第3章は撃墜事件発生から韓国による報復攻撃開始までのトランプ政権の対応の流れを概説。事件当日、トランプ大統領は週末を過ごすためにフロリダ州の別荘マールアラーゴに滞在中。ツィートでクビになったケリーとボルトンの代わりにジャック・フランシスとキース・ケロッグという人物が安保チームに。
本来ならばこのような状況下では韓国はアメリカにまず相談すべきだが、文在寅大統領は2017年の板門店付近の脱北兵事案の時に韓国側がアメリカに制止されて撃ち返せなかったことを恨みに感じていて、今回の報復攻撃では何も伝えずに韓国独自の判断で実行。攻撃は同日2000に開始されて第2章終わり。
その際に大統領自身が要求したのは長距離ミサイルによる攻撃。ターゲットは平壌郊外の金一族の邸宅と思われる地域と、中和群にある北の空軍司令部。ここに韓国陸軍のミサイル部隊が3発ずつの計6発を撃ち込むことになったが、大統領はあくまで「限定的な報復」であり、戦争を起こすつもりはなかった。
第2章は韓国が北にミサイルで限定報復攻撃をするまでの話。まずは韓国大統領府の青瓦台の建物は互いに離れていて政府高官たちが集合するのに時間がかかるという説明。セウォル号事件の時の朴槿恵前大統領の「空白の7時間」の対応の遅れが念頭にあるため、文在寅大統領は職員に早く集合するように指示。
— Dr. Masashi Okuyama (@masatheman) 2018年8月7日
以上が第1章の要約
最後の3月6日に行われた作戦が最も大胆で、グアムから飛んできたB-1が非武装地帯沿いから西の黄海に抜けて引き返すルートをとり、これが偶然にも2週間後のBX411便のルートと同じようなものに。つまりBX411便は米爆撃機であると北朝鮮側に勘違いされて、12:28にKN-06地対空ミサイルに撃墜される。
さらに不運だったのが、トランプ政権が2019年の末から、グアムや嘉手納からB-1B、B-2、B-52という爆撃機を使った極秘の心理作戦として、北朝鮮の領空近くまで行って引き返すという行為を繰り返していたこと。作戦名は「害悪ジグソー」だが、目的は北防空網を刺激して作動させること。
ちなみにA-320は2005年にもコックピットの電源喪失していたとルイスは指摘。BAのA319便が10月22日にロンドンからブダペストに向かっている途中に6つのディスプレイのうち5つが消えてオートパイロットも不能になった事案などを紹介。
午前11:52、BX411便は高度約1万メートル上空に達したところで突然コックピットの電源が落ちる。なんとか電源を回復するのに6分ほどかかったがその間に北朝鮮の領空に近づいてしまう。この時期は毎年恒例のフォウルイーグル/キーリゾルブ演習が行われていたため、北朝鮮軍も警戒態勢だった。
ルイス本の内容をこれから簡単に紹介。悲劇は2020年3月21日に起こった。102人の生徒を含む228人の乗客を乗せたLCCのエアプサン411便が、釜山からモンゴルのウランバートルに向けて午前11:10に離陸。北上してから黄海を抜けるルートだったが北朝鮮の領空まで40キロほどの空域を通過予定。機材はA-320。
ジェフリー・ルイスの初の単著が届く。実際は小説なのだが、2020年に北朝鮮が核戦争を起こし、その結果を報告書の形で書くという斬新なもの。仮想戦記とも違う妙なリアルさ。日本の被爆者の体験記を相当参考にしていると明言。最後の締めがトランプ大統領の声明だが、言葉使いまで似せてて芸が細い。 pic.twitter.com/fxHnfWz0E5
— Dr. Masashi Okuyama (@masatheman) 2018年8月5日
https://twitter.com/masatheman/status/1027014625580052485