気の向くままに junne

不本意な時代の流れに迎合せず、
都合に合わせて阿らない生き方を善しとし
その様な人生を追及しています

(‘77) 5月7日(土) Flight −251

2023年06月07日 | 日記・エッセイ・コラム
全日空.Flight−251〈トライスター〉。正午のFlight迄はまだまだかなりの時間が有った。例によってあの新潟以来のショルダーバッグをを肩に、そして愛読書『ビートルズ派手にやれ(アラン・ウイリアムス著)』を手にして空港に姿を見せたのは、午前十時を少し回った頃だった。朝寝坊をしてしまったのと空席が無かった為に、一度大阪に立ち寄り、久しく会わない友人の顔を拝もうという兼ねてからの計画を取り止め、今なら空席が有る…と盛んにアナウンスしていた目的地・福岡直行便に乗る事になった。手荷物を預け一冊の本を持っては結局、また当分会う事も無くなった其々の顔を思い浮かべては、時間が来るのを待っていた。
搭乗待ち合いロビーの中を恰もオリの中の熊の様に行ったり来たり、壁に持たれてみたり、また何人かの友人に電話を掛けてみた。凡そ旅慣れたとは言え待ち時間が長いという事は、ある種の不安と孤独感に見舞われ易いものだ。そして電話の声の主達は…というと、もう耳慣れた暇人からの通告を受け取るかの如く、何も新たな反応などは示さなかった。心に秘めた嘲笑や、もう聞き飽きたといった溜め息や、未だにそんな旅を続けていられる若さの様なものを羨ましがったり、その様なものを彼ら(彼女達)は言葉以外のところで伝えていた。別にそれが嫌で煩わしく思えるという事ではないけれど、これからはそんな連絡などなるべくしない様に…と思う。世の中には聴きたいと思う声でさえも、聴かずにいた方が良い時も有るのだから。

そして時は来た。Flight−251のトライスターは力強く天空を駆け昇って行った。雲間に何を探していたのか、この顔にはいつもになく心細さの翳りにも似たものが浮かんでいたのが良く判った。
とにかくそんなふうに何とか第一の目的地・福岡に着いた後、直ぐに宿をとる事にした。Y.H.も民宿も無いので、安いビジネス・ホテルを探した。ここではわけもなく見つける事が出来た。そこで一番最初に目に付いた「福岡ビジネス・ホテル」のベルを鳴らした。小休止の後、市内の探索に出掛けた。博多の駅前、そこには何とあの懐しき良き時代、子供の頃を共にした路面電車が、息も絶え絶えに走っていた。その意外さが何故かとても嬉しかった。天神・中洲…などを一通り見物してからホテルに戻って来た。
午後九時前に軽く食事をとった後、オニやん(鬼塚千鶴子…去年の泉屋仲間、田原美恵子との二人組み)から電話が掛かってきた。実はその少し前にこちらから掛けたのだけれど、あいにく留守中で受話器をとったお母さんに言付けを頼んでおいたのだった。話し相手が欲しい時に、まる一年振りの声を耳にするという事がどれ程嬉しいものであるか、本当に良く解った。今回どうして最初の地に博多を選んだのか、現地に来た今でも解らないままだけれど、それでも今夜は良く眠れそうだ。明日は日曜日。再び市内を彷徨き廻る予定。

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