気の向くままに junne

不本意な時代の流れに迎合せず、
都合に合わせて阿らない生き方を善しとし
その様な人生を追及しています

(‘77) 5月20日 (金) #1 いよいよ舟浦へ

2023年06月30日 | 日記・エッセイ・コラム
未だ起きやらぬ思い瞼を擦りながら身体をもたげ、寝起きの一服をと煙草に手が無意識に伸びた時、私の頭の中には未だ耳にした事の無い様な爽やかなメロディーが流れていた。直感と云うのは一つの暗示であると思っている。暗示はやがて詞になり詞は旋律を求める。つまり或る直感は歌を作らせ、それが現実の中では歴史を物語る伝説となってゆくのだ。幾分なりとも空模様が気になる様な朝、今日は西表二日目。吊る時と同じで畳み方の判 . . . 本文を読む

(‘77) 5月19日 (木) #3 西表西部

2023年06月29日 | 日記・エッセイ・コラム
船乗りの一人が何やら話し掛けてくる。出身地・波照間の言葉を混じえて喋っているけれど、聞いている二人には別にこれと言って苦にもならず、色々な海に関した物珍しい話しに心を奪われていた。西表での民宿などについて良さそうな処はないかと尋いたところ、「さわ風」という彼の懇意にしている一軒の民宿を紹介してくれた。約二時間の航海の後、何か…が待ち受け、始まると予感して止まない西表は第一日目の大原に . . . 本文を読む

(‘77)5月19日 (木) #2 波止場の船は日向ぼっこ

2023年06月28日 | 日記・エッセイ・コラム
幸せそうな夢の世界からお伽噺しの様な現の世界に目覚めたばかりの明美の顔は、無邪気な幼子のそれに似てとても可愛らしい。「お早う。お目覚め?フフフ…気持ち良さそうに寝ていたね」「ウンン…今何時頃?」「三時ちょっと過ぎ。十五分頃になったら、そろそろでようか」「そうね。もうここにだいぶ居るしね」「見て見て。海の色がさっきと全然違っている」「わぁ…本当ネ、ステキ。ど . . . 本文を読む

(’77)5月19日(木) #1 フィービー・アルバトロス

2023年06月27日 | 日記・エッセイ・コラム
*フィービー・アルバトロスとは、アルバトロスと云う喫茶店で聴いたフィービー・スノウという歌手の名を勝手に組み合わせたもの。何かが待っている…こう思うのは、もはや予感と呼ぶには程遠いものにさえ感じられる。もしもそれ以上のものが在り得るのだとすれば、未だ見ぬ自然界に在っての、全く予期せぬ心的動向だろう…。昔々、高校一年も終ろうとする二月の初め、或る友達の家で書き上げた「メリ . . . 本文を読む

(‘77) 5月18日(水) #2 明日を待つ宴会

2023年06月26日 | 日記・エッセイ・コラム
午後二時二十分を少し回った頃、私達がその桟橋に着いた時には未だ竹富丸は付いていなかった。桟橋の裾に在る小さな小屋の中で一服しながら、僅か6〜7km向いの石垣島からやって来る船影を捜している光景は、それこそ潮風と南海の詩といったところだろう。グラスボートに誘った先生を恨めしく思ったりもした。それは、そこにはきっと明美の相棒(友達)の心の中のものと共通する『何か』が在り得たに違いない。青空を見上げては . . . 本文を読む

(‘77) 5月18日 (水 ) #1 花の館

2023年06月25日 | 日記・エッセイ・コラム
優しく暖かい朝陽に抱かれながら自然に、ごく自然に目が覚めた。それはまるで何百万年もの長い長い眠りから来たるべき時を待って目覚める、神話の中に登場する聖なる神の様に、ああ、何とも表現できない一日が今ここに始まろうとしている。おもむろに、横たえた身体から伸びる手は灰皿を近付け、煙草とマッチを掴んでいた。ゆっくりと立ち上がる煙りを眺める心の内には仄々としたものを感じていた。「お早う。よく眠れた?」既に明 . . . 本文を読む

(‘77) 5月17日 (火) #7 遊び疲れた日の夜

2023年06月24日 | 日記・エッセイ・コラム
六時三十分を少し回った頃だっただろうか、私達は外に出て夜の市内見物を洒落こもうと云う事で、外に出た。市場通りを抜けたり、そろそろ賑わい始めている美崎町を歩き、去年の暮れに初めて目にした、まだ新しいブルーシールの店に入りアイスクリームを食べた。これは明美からの提案でもあり要求でもあった。二人共バニラとチョコの二色のものを注文した。いや、三色だったかな?そんな事はともかくどうでもいい事だった。ここでの . . . 本文を読む

(’77) 5月17日 (火) #6 波止場では

2023年06月23日 | 日記・エッセイ・コラム
「大丈夫かしら?」「竹富丸がなくてもスクール船がある筈だげど」まだまだ陽は頭の上に輝いていた。八重山の時間差である。内地の人達の殆どが錯覚してしまう現象である。人気の無くなった波止場を歩いて、先ずは最初に竹富丸の出航時刻表を見た。思った通りに、もう最終便は無かった。次はスクール船だ。窓口には誰も居ないので問題のスクール船を探してみると、ホバークラフトの乗り場辺りで揺れているのを見つけた。「いた、行 . . . 本文を読む

(‘77)5月17日(火) #5 失敗した〜

2023年06月22日 | 日記・エッセイ・コラム
今度は砂浜から別のコースで、もとの林の横を抜けて戻ってみた。そして昨日に引き続き今日もお腹が減ったという事で、申し合わせた様に意見が一致。即、すぐ傍の食堂へ突入。何を食べたのだったのだろうか?ちょっと思い出せないけれど、この食事は有効な間合いであった。楽しくはしゃぎ回った一日の空腹を満たすべく安らぎの時。「サァ、そろそろ行きますか」「そうね、おばさん、ごちそうさま」「ごちそうさま」バス停に出てター . . . 本文を読む

(‘77) 5月17日 (火) #4 高峰荘のボート

2023年06月21日 | 日記・エッセイ・コラム
多分、この川平に関した私の想い出話しをしていた時だったと思う。少し前から二人の目の前に一艘のボートが見えていたのだけれど、そのボートが水辺に止まり一組のカップルが降りてきた。その男のほうが近寄り、黒々と日焼けした顔の中から白い歯をキラキラ光らせて言ってきた。「良かったらどうですか?」「エッ、何?」「乗ってみますか?」思わず明美と顔を見合わせた。「どうしよう、乗せてもらう?」明るい笑顔の中に明美は頷 . . . 本文を読む

(‘77) 5月17日( 火 ) #3 川平へ

2023年06月20日 | 日記・エッセイ・コラム
車が来た。午後一時十分、予定通りだ。ここに着いてからの四十分間が一日にも十日にも感じられた。おばさんに別れを告げて車に乗り込むと運転手に、急いでターミナルに行って欲しい…と頼んだ。予め調べておいた川平へ行く西廻りのバスが一時三十分に出るのである。勿論、普通に行っても間に合うのではあるけれど、心の中は早くも次の予定地、川平の事で一杯だった。高鳴る思いを抱いたままタクシーから降りてターミ . . . 本文を読む

(‘77)5月17日(火) #2 バラビドー

2023年06月19日 | 日記・エッセイ・コラム
想い出を再三現実の世界へ。タクシーからの窓から眺めやる光景は不思議な程多くの過去を忘れさせ、まるで恰も初めて見る様な気分に浸る事さえある。みるみるうちに外窓の世界が移り変って行く。僅かな時間、僅かな距離ではあるのに、膨大な時間を要して町から山間地へ向っている様に感じる程、心の中では楽しみの極地に立っていた。石垣に出る…と計画を立てた時に、川平とバラビドーには絶対に行こう&hellip . . . 本文を読む

(‘77) 5月17日 (火) #1 喫茶ザボン

2023年06月18日 | 日記・エッセイ・コラム
午前十時。一分たりともズレる事無く竹富丸は東桟橋を離れ眼の前の(八重山に於ける)都会、石垣島を目指した。船尾に立ちスクリューの跡の白波を、そして遠ざかる竹富を見詰めながら、今回の旅の第二部とも言える舞台の開幕を(その悦びを)噛み締めていた。約二十分後石垣の波止場に着くと、意外にもどうした事かオッチャンが待機していた。「あれ…オッチャン、どうしたの?」「なんや知らんが、ここに来れば二人 . . . 本文を読む

(‘77) 5月16日 (月) #2 竹富島散歩

2023年06月17日 | 日記・エッセイ・コラム
泉屋に着いてから一服した後、島の案内も兼ねてみんなで散歩に出掛けた。この散歩の間にお互いの素性等を話し合っていた。私と一緒に歩いていた娘は佐藤明美といった。大分県日田市から来ていると云う事だった。少し前を歩いていたのはテツペイさんと先生。ほぼ同じ位置に(下船後)桟橋から一緒だった女の娘二人。その様なメンバーで西桟橋からコンドイ(浜)へ向った。明美の友達は前日からの日射病の為一人で寝ていた。気が付く . . . 本文を読む

(‘77) 5月16日 (月) #1 石垣⇒竹富

2023年06月16日 | 日記・エッセイ・コラム
「八重山・石垣・美崎町、いい所サ。私は好きサ」と、かつてはWoman Pianast(山城キヨコ)が朝焼けの渚でフッと呟いた言葉が、一瞬脳裏を掠めていった。午前七時。その美崎町に、石垣港に船は着いた。朝早くの美崎町というのも、それはそれでまた良いものが有る。テツペイさんとミス先生嬢達との五人で、ブラリと近所の散歩に出掛けてみた。ラムール(各テーブルに一台づつ電話が置いてある喫茶店)の前を通り郵便局 . . . 本文を読む