休暇 東周りのバスで白保へ行く
店の女の娘に言われる迄は知らなかった場所。別に何があると云うわけでもなく、ただ静けさが漂う誰も来ない様な砂浜。他にもまだまだこの様な所は在るだろう。何せ周りが海の小さな島。時間が経てば次から次へと判ってくるだろう。この白保という所、ただ砂浜が在るだけで、これといった人寄せの為の何かが有るというわけではない。やはり海水浴場と言うより漁村という色合いが濃い為なのであろう。
誰もいない砂浜で腰を下ろすべく適当な場所を探していると、丁度格好の大木を見つけた。直径80cm、長さ3〜4mぐらいのもので、両端には朽ち果てた跡がはっきりと見られた。
《うん、ここにしよう。どうせ誰も来そうもないし海にも近い》
という事で、小さな荷物を置いてバスタオルを広げ、服を脱いで水着になると、横になり日光浴をしたり海に入ったりを何度か繰り返し、横たわっていると、何処からともなく女の娘が一人現れた。誰も来ないと思っていたので、一瞬ドキ…!真っ白なTシャツにジーンズなミニ・スカートという出で立ちのその女の娘は私の近くに立ち止まると、
「ここ、いいですか?」
と、口を開いた。私はおもむろに身体を起こし、
「ええ、いいですよ。どうぞ」
と答えた。彼女は私の隣に腰を下ろすと、あれやこれやと話し掛けてきた。今回の旅で出逢った二人目の「女一人旅」。東京は池袋からやって来たという事と、以前に湯島で働いた事があるという事が、より親密度を増した。
「アナタはもう海に入ったの?」
「うん」
「よ〜し、私も入って来よう、せっかく独り占めの海が目の前にあるんだものネ」
と言って立ち上がると服の下に着ていた水着になると
「あなたも行こうヨ」
そう誘ってきた。海に入っては砂浜にを繰り返す。だから太陽がギンギラギンと照りつけているのに余り暑さを感じない。
「そろそろバスの時間かなぁ」「ターミナル方面ならね」
「水着も乾き始めている、良かった、濡れたままだったら恥ずかしいしね。」
バス停迄ゆっくりと戻るとまだ4〜5分の余裕があった。
「余裕だったね。ターミナルへ戻ってからは何処へ行くの」
「竹富島への最終便には間に合うから、予定通り竹富島ね」
「そうなの、竹富はいいとこだから、うんと楽しんでね」
敢えて民宿の話しはしなかった。バスはターミナルに着いた。彼女を波止場迄送り、
「じゃあね、行ってらっしゃい」
と言って別れを交した。
疲れ果てていてもいい様な一日だったのに、何故か身体に重さは感じない。まだまだ私の《今日》は終らない。ああ、お腹が空いた。
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