白根一男一座・来島
今の若者などその名を知る由もない大昔(?)の歌手、白根一男がこの石垣島にやって来た。たった一曲のヒット曲を引っさげて。16.17日の二日間、宮平観光ホテルで公演をする為に訪れたのだが、実はそこにはもう一つの理由が有る。それは私のいる店の、一周年記念の催しとしてのステージが加えられていたのである。そちらの方は明日15日(金)の一日のみ。時代の波に忘れられた筈の芸人が、とんでもない地方にヒョッコリと顔を出すドサ廻り。この世界では別に珍しい事ではない。よくある話だ。しかし、問題はこの時に起こったのだ。
ここで山城キヨコに付いて少々触れておく事にする。
首里出身で私より10歳年上の女性ピアニスト。家柄は(まあまあ)いい方で、元来クラシック・ピアニストであったのだが、或る時米軍キャンプ廻りのピアニストとして参加してからというもの、好みのジャズに転向。以来、その道のピアニストとして沖縄県内を転々とする。そして数年前にここ石垣島に渡り、今日迄落ち着いていた。元来気性は明るい方だが、アルコールを飲むとピアノに向かう時以外でも、即興的な発想をもとにした行動に出る事がしばしば見られる。これは米軍キャンプを廻っていた頃の名残りとしての『後天的性格』の様なものだと思う。
初めから私とキヨコは上手く打ち解け合う事が出来た。一番重要な点は共に音楽の世界にいた事だけど、また別に、不思議な絆の様なものを感じ合っていた。丁度十年という歳の違いもまるで無関係の様でさえあった。私はこの八重山に来て以来、本当の心の安らぎなるものに包まれたとさえ思っていた。
その平和な生活の中に理由の解らない波紋が投げ込まれたのが、今日の夕方であった。那覇時代のローカル・バンドの一時期に知っていた崎山という男とキヨコが顔を合わせてから、キヨコからいつもの笑顔と冷静さが消えてしまったのである。多分、昔何かのトラブルが有ったのだろう。忘れてしまっていた筈なのに思ってもみなかった再会。正直なところ私には為すべき術が無い。ただ傍らで見守っているだけである。私では役立たずなのかとさえも思うが、事情が判らない今はとにかく仕方が無い。
今夜のキヨコはかなりの深酒であった。周囲からはあまり良くは思われなかった様であるが、それでもちゃんとステージを努めた。しかし私の耳には、『これがキヨコのプレイ』かと思う程荒れて聴こえた。あと三日間、連中が去る迄何も起きなければいいが…と、私はただそれを思うばかりである。
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