私が仕事が嫌になった時、年に二回くらいだけど、仕事をさぼって向かうのは映画館。映画館は一人っきりになってリフレッシュするカプセル。一番観やすい中央の席を予約しコーヒーカップを一つ持って陣取る。真昼間の時間帯だったり夕方だったり。両脇は何故か知らないがカップルが多い。weekdayのこんな時間に映画を観ている私も私だが君らは何をやっているのかと頭の中で叱責する。大きなお世話だ。
映画を観始めたのは生まれも育ちも田舎だったもので映画館とはいかなかった。子供の頃、テレビで観る洋画が好きで眠い目をこすりながら父や母と観たのが始まりか。邦画も観た。怪獣映画は大好きだった。映画のストーリーより強く記憶に残る場面も多い。尽きない。そんな記憶に残る場面の中でここ数年、映画の中の食事の場面を書き出そうと思っていて、それを実行することにした。いくつ書き出せるか分からないが映画に出てくる食事の場面を書き出してみる。
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藤沢周平原作、山田洋次監督、2002年公開。
昭和30年代までかとは思うのだが、そしてたぶん記憶にある方もあるかと思うのだが、食事の際、家族それぞれの茶碗、箸を箱膳から取り出して使う作法があった。食事が終わったらどうするかというと、茶碗でお茶を飲んできれいにして箱膳に置き、その箱膳は大きな食器棚に仕舞われる。使った茶碗と箸を食卓の引き出しにしまうというのもあった。茶碗と箸を洗わない。
蛇口をひねれば水か出るという俗にいう水道(上水道ではない。それはもっと最近)が全国に行きわたったのはいつごろからか。宮崎駿の「トトロ」に出てくる台所には井戸から汲み上げるポンプがあった。これは上等の部類。外の井戸から水を汲み上げて台所の甕に溜めるというのが普通だった時代はそんなに昔ではない。その井戸も共同井戸があったし、よその家の井戸を使わせてもらうというのもあった。水は貴重だった。箱膳に仕舞われた食器はどこかのタイミングでは洗うのだとは思うのだが私の家はその作法がなかったので知らない。その食事の作法がこの映画に出てくる。
真田広之が家族とお粥を鍋から茶碗に注いで食べた後、箸で沢庵を使い茶碗を拭いきれいにする。そしてそのまま箱膳に仕舞う。山田洋次監督は徹底的に時代考証やリアリティーに拘ったそうだ。この食事の場面がこの映画で一番印象に残った場面といったら叱られるか。
真田広之と宮沢りえの元夫の大杉漣が城の石垣の下で決闘をする場面。画像処理で見えてはいけない個所を処理しているのだが、その処理がちょっと不十分で残念。
(2014年7月4日)