東京でカラヴァッジョ 日記

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トリオ5選 - 「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」(東京国立近代美術館)

2024年06月12日 | 展覧会(西洋美術)
TRIO パリ・東京・大阪
モダンアート・コレクション
2024年5月21日〜8月25日
東京国立近代美術館
 
 
パリ市立近代美術館
東京国立近代美術館
大阪中之島美術館
 
その3館が所蔵するコレクション(20世紀初頭から現代まで)から、共通点のある作品でトリオを組んで展示する展覧会。
 
パリ市立近代美術館からの作品もそうであるが、特に、これまでそれほど見たことのない大阪中之島美術館の作品に期待しての訪問。
 
トリオは、全34組。
割とゆるい共通点による組合せで、固いことを考えずに楽しめる感じ。
 
 
以下、マイ・フェイバリット・トリオ5選。
 
パリは西洋の作家、東京・大阪は日本の作家の作品で組まれたトリオから選出する。
 
 
1 コレクションのはじまり
佐伯祐三
《郵便配達夫》
1928年、大阪中之島美術館
 
ロベール・ドローネー
《鏡台の前の裸婦(読書する女性)》
1915年、パリ市立近代美術館
 
安井曽太郎
《金蓉》
1934年、東京国立近代美術館
 
 パリからは、1961年の開館の契機を作ったジラルダン博士の遺贈品。東京からは、最初の購入作品の一つ。大阪からは、美術館構想のきっかけとなった実業家、山本發次郎の旧蔵品。
 椅子に座る人物像という共通点も。
 
 ロベール・ドローネーの作品は、私的にパリからの本展出品作の中で最大の見どころ作品の一つ。
 
 佐伯の作品は、本作のほか、大阪中之島美術館の《レストラン(オテル・デュ・マルシェ)》1927年と、東京国立近代美術館の《ガス灯と広告》1927年の計3点が出品される。
 
 
 
8 近代都市のアレゴリー
古賀春江
《海》
1929年、東京国立近代美術館
 
池田遙邨
《戦後の大阪》
1951年、大阪中之島美術館
 
ラウル・デュフィ
《電気の精》
1953年、パリ市立近代美術館
 
 ここで登場するのか、古賀春江の代表作。さすがの貫禄。
 
 デュフィの作品は、1937年のパリ万博の「電気館」に掛けられた10×60メートル!の巨大曲面壁画(パリ市立近代美術館所蔵)の縮小版カラー・リトグラフ。電気にまつわる哲学者・科学者・技術者108名が登場する。
 
 池田遙邨の作品は、前期限り。抽象画風で、「戦争で失われた建築物と、焼失を逃れた大阪城天守閣などが混在して」いるという。混沌とした画面は、喪失感を表しているのであろうか。
 
 
 
12  戦争の影
ジャン・フォートリエ
《森》
1943年、パリ市立近代美術館
 
北脇昇
《空港》
1937年、東京国立近代美術館
 
吉原治良
《菊(口)》
1942年、大阪中之島美術館
 
 フォートリエは、この年の1月、ドイツ占領下のフランスでレジスタンス活動に関わっていたことにより、ゲシュタポに逮捕され、数日間拘束されている。釈放後はパリを逃れて制作を続け、1945年に代表作《人質》シリーズを発表することとなる。
 
 吉原の作品は、菊の花弁を抽象的な楕円形で描く。 1930年代にはシュルレアリスムの影響を受けた作品や幾何学的抽象画を制作していた吉原の、抽象が反体制的と見なされた戦時下の時代の作品。
 
 
 
17 こどもの肖像
藤田嗣治(レオナール・フジタ)
《少女》
1917年、パリ市立近代美術館
 
岸田劉生
《麗子肖像(麗子五歳之像)》
1918年、東京国立近代美術館
 
原勝四郎
《少女像》
1937年、大阪中之島美術館
 
 「麗子像」はさすがの貫禄。できれば、西洋ならアンリ・ルソーと組んで欲しかった(パリ市立近代美術館が所蔵しているかどうかは知らないけど)。
 
 
 
20 人物とコンポジション
岡本更園
《西鶴のお夏》
1916年、大阪中之島美術館
 
マリア・ブランシャール
《果物籠を持った女性》
1922年頃、パリ市立近代美術館
 
小倉遊亀
《浴女 その一》
1938年、東京国立近代美術館
 
 岡本の作品は、大正5年5月に三越呉服店大阪店で開催された、島成園、岡本更園、木谷千種、松本華羊の四人の女性日本画家による、井原西鶴の『好色五人女』をテーマとした展覧会「女四人の会」への出品作。
 
 ブランシャールは、2023-24年の国立西洋美術館「キュビスム展 美の革命」にて私的に初めて名を認識した女性画家。同展では、第一次世界大戦でフランス人芸術家の多くが前線に送られるなか、非交戦国スペイン出身のピカソやグリス、そしてブランシャールら女性画家は銃後にとどまり、大戦中のキュビスムを担った旨の説明があった。
 
 小倉の作品は、東京国立近代美術館の常設展示で何度か見ているが、本展では至近距離で鑑賞できるのが嬉しい。「その一」は前期限りの出品で、後期は「その二」が展示される。
 
 本展説明で女性画家によるトリオであることに特段その点に触れていないのを不思議に思ったが、岡本の作品が前期限りの出品で、後期は北野恒富の作品が展示されることを後で知る。
 
 
 
 5選からは外したトリオでは、「32 ポップとキッチュ」。
 まさか本展にアメリカのヘンリー・ダーガーの作品があるとは思わない。
 トリオを組むのは、奈良美知と森村泰昌。
 
ヘンリー・ダーガー
《a)
 1 グランデリニオンに捕えられる
 2 森林火災に追われるヴィヴィアン・ガールズ
 3 天国に感謝できる》
1940-50年、パリ市立近代美術館
 
 ダーガーは撮影不可のため画像無し。後期はおそらく裏面に展示替えされる。
 2012年に、ヘンリー・ダーガー・エステートから寄贈された45点のうちの1点。同年には、ニューヨーク近代美術館にも15点?(←HP掲載点数からの想像)が寄贈されている。
 
 
 
 34組のうち、パリは西洋の作家、東京・大阪は日本の作家のトリオは約半分の18組。残りは、パリともう1館が西洋の作家、もう1館が日本の作家のトリオ。3館とも西洋の作家というトリオはさすがにない。
 


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