法然と極楽浄土
2024年4月16日〜6月9日
東京国立博物館
前期を訪問する。
以下、特に見た作品4選。
国宝《綴織當麻曼陀羅》
中国・唐または奈良時代、8世紀
奈良・當麻寺
奈良・當麻寺の本尊。大きい。およそ4メートル四方だという、巨大な織物。
東京初公開とのこと。私的には一度、2018年の奈良国立博物館「糸のみほとけ」展で見ているが、そのときは2014〜17年度の修理後初の公開であったらしい。また、修理作業前の2013年の奈良国立博物館「當麻寺展」での公開が30年ぶりの公開であったらしい。
1677年の修理により、板貼から掛幅装となり、描画による補筆がなされたという。
さすがに損傷が激しく、何が表されているのかは判別しがたい。ただ、でかい。
国宝《阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)》
鎌倉時代、14世紀
京都・知恩院
本展のお目当て作品。前期限り。おそらく初見。
縦145×横155cmのほぼ正方形の画面。
「急角度の対角線構図で速度感を強調した表現から「早来迎」の名で知られる」との説明。
2019〜21年度実施の修理後初公開とのことで、画面が明るくなり、山肌や水の色がはっきり見えるようになったという。
阿弥陀如来が、スキー選手がジャンプ台を滑り降りてくるかのように、二十五菩薩を率いての団体で降りてくる。その角度とスピード感が、背景が見えるようになったが故に、一層の恐怖。
狩野一信筆《五百羅漢図》
江戸時代、19世紀
東京・増上寺
前期は以下の12幅が展示。
第11・12幅: 授戒
第23・24幅: 六道 地獄
第41・42幅: 十二頭陀 阿蘭若
第59・60幅: 神通
第63・64幅: 禽獣
第81・82幅: 七難 震
特に観たのは「六道 地獄」の2幅。
苦しむ人々を品をもって描写されているし、なにより羅漢たちが、羅漢ビームを発信したり、番人めがけて輪宝を投げつけたり、如意棒を伸ばしたり縄を垂らしたりして、人々を救済しようとしているのが良い。
所蔵者である増上寺宝物展示室の常設展では、10幅ずつを順次公開しており、現在は4巡目?に入って第1〜10幅を展示しているようだ。
《仏涅槃群像》82軀のうち26軀
江戸時代、17世紀
香川・法然寺
本展で唯一撮影可の作品。
立体群像で表される涅槃図の世界。不謹慎ながら、おもちゃの遊園地みたいで、おもしろく見る。
府中市美術館の2024年の春の江戸絵画まつり「ほとけの国の美術」展にて、敦賀市・西福寺所蔵の重文《観経変相曼荼羅図(当麻曼荼羅)》や、会津若松市・高厳寺に伝えられたという福島県立博物館所蔵の重文《阿弥陀二十五菩薩来迎図》、京都市・二尊院所蔵の土佐行広筆《二十五菩薩来迎図》、金沢市・照円寺所蔵の《地獄極楽図》、名古屋市・西来寺所蔵の《八相涅槃図》にいたく見入って、「当麻曼荼羅」や「来迎図」「地獄極楽図」「涅槃図」を欲していたところに、この東博の大規模展は、私的にたいへん良いタイミング。
後期出品の、福島県いわき市所蔵の重文《阿弥陀三尊来迎図》も見たく思う。
なお、本展は2024年秋に京都国立博物館、2025年秋に九州国立博物館に巡回する。
東博の総合文化展、本館2階3室でも、本展関連展示として、「阿弥陀如来像」や「当麻曼荼羅図」を展示中。
画像2点はいずれも、鎌倉時代14世紀の《当麻曼荼羅図》。