令和5年新指定 国宝・重要文化財
2023年1月31日〜2月19日
東京国立博物館 平成館1階企画展示室
重要文化財
《地獄草紙断簡(解身地獄)》
平安時代・12世紀、MIHO MUSEUM
「地獄草紙」は、奈良国立博物館本、東京国立博物館本、および旧益田家本甲巻と、3巻が現存するという。
本作は、旧益田家本甲巻の1絵。
もとは絵7段、詞7段からなる絵巻物であったが、戦後、各段ごとに分断され、掛幅装とされた。現在は各所に所蔵される。
戒律を守るべき沙門(僧)でありながら罪を犯した者が堕ちる沙門地獄。
本作「解身地獄」は、生き物を殺した僧が堕ちる地獄で、獄卒にまな板の上で身体を切り刻まれ、なますとされる様子が描かれている。
まな板の上の赤い血、まな板から垂れ落ちる赤い血、地面に広がる赤い血。まな板の上に、切り刻まれた身体の部分、生首も見える。鉢を摺る獄卒。怯える白い人々。
本展の展示では、絵までの距離があって、確認できたのはここまで。
旧益田家本甲巻の7絵は、次のとおり。
・《火象地獄》五島美術館、重文
・《咩声地獄》シアトル美術館
・《飛火地獄》個人蔵
・《剥肉地獄》個人蔵
・《沸屎地獄》奈良国立博物館、重文
・《解身地獄》MIHO MUSEUM、重文
・《鉄山地獄》所蔵先不明
私的には、奈良博の絵は昨年渋谷区立松濤美にて、五島美とMIHO美の絵は以前展覧会で見たことがあるが、未見の他の4絵は今後見る機会があるだろうか?
他の「地獄草紙」について。
奈良国立博物館本は、絵7段、詞6段からなる。
第一段「糞屎泥地獄」、第二段「凾量地獄」、第三段「鉄鎧地獄」、第四段「鶏地獄」、第五段「黒雲沙地獄」、第六段「膿血地獄」、第七段「孤狼地獄」の7つの地獄。
私的には、2014年の東博「日本国宝展」や2016年に奈良博の常設展示で見たことがある。
東京国立博物館本は、絵4段、詞4段からなる。
「髪火流(ほっかる)」「火末虫(かまつちゅう)」「火雲霧(かうんむ)」「雨炎火石(うえんかせき)」の4つの地獄。
私的には、昨秋の「国宝 東京国立博物館のすべて」展で見たばかりである。
あと、かつて「地獄草紙」と称されていた旧益田家本乙巻があるが、地獄に関するものではなく、悪鬼を退治する善神たちが描かれているため、現在では「辟邪絵」と呼ばれている。
絵5段、詞5段からなり、やはり戦後に分断され、掛幅装となる。5絵とも、奈良国立博物館が所蔵する。
本展では、同じくMIHO MUSEUMが所蔵し、同じく重要文化財に新指定された次の2点も並んで展示されている。
《鳥獣人物戯画甲巻断簡》平安時代・12世紀
《鳥獣人物戯画丁巻断簡》鎌倉時代・12世紀
これまで毎年GW期間に開催されていた本展。
コロナ禍により、令和2年は会場準備は進めていたようだが開催中止、令和3年・令和4年は開催されず。
4年ぶりの開催となるが、会期はGWではなく、冬の寒い時期に変更となった。
展示室も、本館から平成館となっているが、本館と比べると手狭感がある。
展示対象は、国宝4件、重要文化財47件(写真パネルのみの展示や一部展示も含む)。
宮内庁三の丸尚蔵館の新指定作品(次の6点)は、写真パネル展示のみ(実物展示なし)。
国宝《喪乱帖》原跡王羲之 中国・唐時代
国宝《更級日記》藤原定家筆、鎌倉時代
国宝《万葉集 第二、第四残巻(金沢本)》藤原定信筆、平安時代
重文《南蛮人渡来図屏風》桃山時代
重文《世界図屏風》桃山時代
重文《蘭陵王置物》海野勝珉作、明治時代
また、東京国立近代美術館所蔵の、鏑木清方筆の重文《築地明石町》《新富町》《浜町河岸》も写真パネル展示のみ(実物展示なし)。
それでも、上記MIHO MUSEUM所蔵3点のほかにも、彫刻(仏像、神像)ほか、興味深い作品が出品されている。
前期は1/31〜2/12の2週間、後期は2/14〜19の1週間と、期間が短いのは厳しい。
なお、上記MIHO MUSEUM所蔵3点は、前期限りの出品。
販売されている図録は、令和3〜5年新指定を対象としているようだ。