東京でカラヴァッジョ 日記

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「性差(ジェンダー)の日本史」展(国立歴史民俗博物館)

2020年10月26日 | 展覧会(その他)
性差(ジェンダー)の日本史
2020年10月6日〜12月6日
国立歴史民俗博物館
 
   本企画展示は、話題になっているようだ。
   加えて、今年の「藝大コレクション展」への非出品を残念に思っていた高橋由一《美人(花魁)》が、実はこちらに出品されていることを知る。
   本博物館の企画展示は、基本的に歴史展であって、美術展ではない。美術展を好むが日本史に疎い私は、全く興味を持てない可能性があることを覚悟のうえ、千葉県佐倉市までの遠出を決める。
 
 
   本企画展示は、土・日・祝日および会期終了前1週間において、オンラインでの日時指定の事前予約を導入している。
   1時間単位。予約は前日の17時まで(当日の予約は不可)。
   支払いはオンライン上ではなく当日に現地で行う仕組み。
 
   希望日前日に予約を試みる。午前や午後前半の時間帯は既に「×」で、最も早いのが14:30〜15:30。閉館まで2時間滞在できるので、その枠を予約する。
   もし早く到着するようならば指定時間までの間、常設展示見学で時間調整すれば良い。
   
 
   当日は、まず専用窓口にて事前予約の確認を受ける。その際に時間帯ごとに色の異なるリストバンドが渡される。その隣の窓口にてチケットを購入する。
 
 
【構成】
プロローグ:歴史のなかのジェンダー
第1章:古代社会の男女
第2章:中世の政治と男女
第3章:中世の家と宗教
第4章:仕事とくらしのジェンダー  - 中世から近世へ -
第5章:分離から排除へ  - 近世・近代の政治空間とジェンダーの変容-
第6章:性の売買と社会
第7章:仕事とくらしのジェンダー  - 近代から現代へ -
エピローグ:ジェンダーを超えて
 
 
   第5章までが第一会場、第6章以降が第二会場。
   第一会場は、時間指定内でのみ入場可能で、再入場は不可(トイレを理由として会場入口の係員から「再入場券」を貰わない限りは再入場不可)。
   第二会場は、時間指定内およびそれ以前の時間指定であれば入場可能(よって再入場も可能だろう)。
 
 
   以下、展示物から3点。
 
 
1   重文《洛中洛外図屏風(歴博甲本)》
 
   この「洛中洛外図屏風」は、現存最古とされ、当博物館が所蔵する。
   本企画展示では、「第4章  1  中世の仕事とくらし」にその複製が展示され、女性などの拡大図版パネルが添えられる。1,426人の人物が描かれ、うち女性の割合は約2割とのこと。
   所蔵者が複製展示で、実物は東京国立博物館の「桃山」展の前期(〜11/1)に絶賛出品中、なのが面白い。
 
 
 
2   高橋由一《美人(花魁)》
 
   日本近代洋画の父・高橋由一(1826-94)が稲本屋の筆頭女郎4代目小梅をモデルにして描いた肖像画。1872年作。重要文化財。
 
   本作品については、これまで、由一の回顧展において他の由一作品とともに、あるいは、藝大コレクション展において重文《鮭》や原田直次郎、黒田清輝、山本芳翠など明治期の画家の作品とともに見ている。
   明治期の日本美術の文脈での鑑賞である。
 
  今回は、第6章「性の売買と社会」において、梅本屋抱え遊女放火事件とか、小稲をモデルとする浮世絵とか、その姉女郎3代目小梅の書状・関連史料とか、女郎の日記とか、1872年の芸娼妓解放令の発出とか、が取り囲んでいる。
   中世から江戸・明治そして昭和までの遊女・娼妓に関する歴史の文脈での鑑賞である。かつて滋賀県八日市にあった遊郭の一室を再現するきつい展示も控える。描かれる側からの本作品制作の背景・経緯を考えさせられる。
   
 
 
3  山本作兵衛の炭鉱記録画
 
   日本で初めてユネスコ記憶遺産「世界の記憶」の登録を受けた山本作兵衛(1892〜1984)画文の炭鉱記録画。
   田川市石炭・歴史博物館所蔵の実物2点・複製1点が、第7章の2「労働者としての女性」に展示される。
 
   2013年の展覧会にて作兵衛の炭鉱記録画をまとまった数観ている。その際は「炭鉱町」「炭鉱労働」の観点で鑑賞できるようになっていたが、今回は「炭鉱労働とジェンダー」。
   作兵衛のいた筑豊炭鉱では、先山後山(採掘役と搬出役の二人一組)による夫婦共稼ぎの坑内労働が一般的であったが、1928年の女性の坑内労働禁止により、女性は解雇され、会社が示した内職(採炭夫向けの作業用品を製作するミシン内職など)に従事するようになったという。
 
 
 
   以上、「インパクトが大きい」絵画史料のことばかり記載したが、卑弥呼から戦後まで、会場内の展示品・解説パネルはひととおり目を通した。初めて認識した点、興味深い点など多数。購入した図録も今後読むつもりでいる。


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